アシュラさん
公開日: ○○様・○○さん | リョウメンスクナ | 死ぬ程洒落にならない怖い話
今年の3月の終わり頃だったかな。
俺はいつものように更新を楽しみにしている洒落怖まとめサイトを見ていた。
その時、オカルト好きな俺の叔父さんが家に遊びに来ていて、一緒になって「へぇ~、こんな面白い話が沢山あるんだ」と楽しく見ていた。
※
ちょうど投票ランキングを見ていた時の事。
「ちょっと、止めて」
画面を下にスクロールさせる俺に叔父さんが言った。
「この、リョウメンスクナっての開いてくれる?」
俺は言われるがままカーソルを持って行きクリックした。
「あぁ、これね。去年ちょっとは話題に上った話で、最後何かちょっとスレがパロディ化して…」
「ちょっと黙ってて」
いつもは優しい叔父さんが、珍しく険しい表情で言った。
そのまま真剣な表情で黙々とリョウメンスクナの話を読んでいる。
10~15分は経っただろうか。叔父さんがようやく口を開いた。
「似てる…」
「えっ、何と?」
「今日は孝明(俺の親父で叔父さんの弟)と良子さん(母)は旅行で帰って来ないんだろ?」
「うん、まぁ」
「じゃあ、酒でも飲んで何かつまみながら話すか。あの2人が居たら『また変な話ばっかりして』ってうるさいからな」
そう言うと叔父さんは、冷蔵庫から勝手に瓶ビールとチーズを持って来て話し始めた。
※
「俺の実家が神社なのは知ってるだろう?(西日本の出雲大社系)
それでな、地鎮祭とか時々頼まれる訳じゃない?
その時の俺ん家(神社)の決まり事としてな、その土地に骨や死体があった場合の地鎮祭のやり方がある訳ね。
他の神社もやってるかどうかは知らないよ? まあ詳細は省くけど、とにかく慎重に対処せにゃいかんわけよ。
割と近代の骨や死体ならまだ良いんだよ。いや、良くはないんだが(笑)。
問題なのは古過ぎる骨とか、即身仏の類ね。
遺跡などの多い地域は古代の骨は結構出るし、即身仏も極稀に出たりする。完全な保存状態のはまず無いけどね」
※
「そこで俺の親父の話なんだけど、終戦からちょっと経ったくらいの頃ね。
とある豪商から、「土地を整地してたら変なもんが出てきて、気持ち悪いから来てくれ」と言われたのね。
それで行ってみると、その豪商の家の大きな蔵に通された。
ちょうど棺桶サイズの木箱が置いてあり、蓋が開いてたんだって。
『こんなもんが出てきてなぁ。気色悪いったらありゃせん』
豪商の言葉を耳にしながら、親父は木箱の中を覗いたんだ。
『アシュラさんやないか!!』
親父は叫んだらしい。
中に横たわっていたものは、まさしく阿修羅像のような干乾びたミイラだったらしい。
まず、通常の人間のミイラを思い浮かべて欲しい。
その顔の左右両脇に、別の人間の切断した首2つを縫い付ける。
そして左右の脇腹に、これまた切断された別の人間の右腕2本、左腕2本を縫い付けてある。
そんなおぞましい(人造の)ミイラだったらしいんだ。
『まだあったんか…こんな腐れ外法が…』
親父は真っ青になりながらも、急いで木箱の蓋を閉めたんだ。そして『見世物にしたらどうか?』と言う豪商の提案を激怒しながら一喝した。
それでも強欲な豪商がどうしても譲らないと言い張るので、『俺が金払ってでも引き取る』と言い、結局大枚叩いて買い上げたんだ。
その時、『あの腐れ朝鮮人がっ!!』と叫んだらしい」
※
「…どう言う事?」
あまりに恐ろしく現実離れした話に聞き入っていた俺は、ようやく質問する事ができた。
もう瓶のビールはあと4分の1程しか残っておらず、俺は代わりを冷蔵庫から持って来た。
※
「ん、ありがとう…そうそう、それでな、さっきのリョウメンスクナって話に物部天獄って出てきたろ?
時代的にも違う人物だとは思うが、親父の生きていた時代に金成羅という在日朝鮮人がいたらしいんだ。
天魁教というカルト教団を作って、細々と活動してたらしい。
こいつがとんでもないヤツで、『教団の教え』と偽り信者たちと乱交したり、大金を巻き上げたりするわで、まあ小物っちゃ小物だったらしけどね。
それでも、こいつの先代か先々代の教祖が本物だったらしく、色んな呪法の掛け方などを書き残していた経典があったらしい。
その中に『人工的に即身仏を作り出し、呪いの道具とする』方法みたいなものがあって、それがさっきのアシュラさんという訳なんだ。
親父が何でそんなに詳しいかと言うと、親父の妹がこのカルト教に感化されてしまって、連れ戻すのに苦労した時期があったらしいんだ。それで金成羅ともゴタゴタがあった訳ね」
※
「う~ん、でもそんな教団も教祖も聞いた事ないよなぁ」
「そうだろう。でも本当に小さなチンケな教団だったらしいよ。信者も殆どが在日朝鮮人とか中国人だったらしい。
そのくせ、やっている呪法などが危険なものばかりだったそうだ。
大体ね、どの宗教や邪教の秘術、呪いを見てもね、リョウメンスクナやアシュラさんみたいな(生命を冒涜するような呪法・呪物)というのは無いんだよね。
悪魔教でさ、赤子を捧げるのはあるらしいけど、それは一応太古や中世からの伝統であって、このリョウメンスクナやアシュラの類は完全に『個人で勝手に考えた思いつき』のような気がするんだよね。狂っていると言うか。
逆にそういう素人考えが、凄まじい怨念を発する、危険なものを造り上げたんだろうね」
「うーん…それで、そのアシュラさんはどうなったの?」
「親父も本当に頑固で昔気質な所があってさ、アシュラさんを引き取った後、『朝鮮近海の海に捨ててやる!!』などと言い出したらしくてさ。
その頃はもう金成羅は消息不明だったらしく、殆ど腹いせだよね。朝鮮半島に持ち込むにしても検問や入管でそんなミイラ通る訳ないし、それで少しでも近くの海に…と。
今思えば親父もちょっと狂ってたのかもなぁ。それで知り合いの漁師に頼んで船を出してもらったらしいんだけど、そのアシュラさんを積んだ船が今のK州の西方沖で沈んだらしいんだ。
ああ、もちろん親父は船には乗っていなかったよ。
それが今から約50年程前かなぁ」
※
「で、どうなったのかは判らず終いと…。他にもどこかにそんなミイラがある可能性ってあるの?」
「分からんねぇ…。親父もアシュラさんの件以来、そういう情報には神経を尖らせていたらしかったけど、そういう造られたミイラの情報は新たに入って来なかったらしいよ」
「で、これは完全に俺の推測と言うか妄想に近いかもしれないけど、去年の春頃にK州の西方沖で大地震があって、F県を始めK州各地にも被害が出ただろう?」
「ああ、あれは怖かったなぁ…。CDラックとか滅茶苦茶になって」
「あと最近、K州発の韓国行きの高速船や、K州の西方沖を走る高速船にクジラのような生物がぶつかるというニュースが多いだろう? 怪我人も多数出て」
「あったねぇ。あまりにもぶつかる数が多過ぎるよね」
「アシュラさんが沈んでる、K州西方沖と何か関係があるのかな…なんてな」
「まさか。ハハハ」
「まさか、ね。あと日本神話にもさ、天津神、国津神ってのが出てきてさ。天津神が朝鮮半島か中国大陸からやって来た騎馬民族で、国津神が日本列島の先住民。
戦に天津神が勝利して、朝廷が出来た…(あくまでも一説)と言う神話もあるし、7世紀に起きた白村江の戦いや、秀吉の朝鮮出兵…。
更に近年に起きた戦争と、日本と朝鮮の怨恨みたいなものは、深くて根強くあるのかもしれないね」