インコのムウちゃん
公開日: 怖い話 | 死ぬ程洒落にならない怖い話
2年程前から飼っているオカメインコのムウちゃんについてのブログを始めた。
始めた当初は誰も記事を見に来てくれないし、コメントも残してくれないので結構寂しかった。
でも他の人のブログにコメントを残したりしている内に段々仲間ができ、自分が書いた記事にも結構コメントが付くようになった。
その中の一人にAさんという結構人気のブロガーがいて、その人のブログも楽しかったし、残してくれるコメントも毎回適当なお世辞とかじゃなく、興味のある記事にだけ的確なコメントをくれて嬉しかった。
ただ少し気になったのは、Aさんは少し鬱気味の事が多く、沈んでいる時は『死に関する記事』が多かった。
Aさんの記事にはいつも沢山のコメントが書かれていたが、死に関する自虐的な記事には他のブログ仲間も困っているようで、コメントはあまり付いていなかった。
私は暗い記事を書くのは嫌だったので、常に前向きなキャラを演じて明るい記事しか書かず、Aさんの暗い記事にも前向きでマイペースな明るいコメントを残した。
※
Aさんとのブログでの交流は1年程続き、ある日インコブログのオフ会があるので参加しないかと誘われた。
他にも知っているブロガーさんも参加するみたいだし、顔を見てみたいという気持ちがあって参加することにした。
オフ会は楽しく時間が過ぎた。Aさんも思っていたより爽やかな好青年で話も弾んだ。
しかしAさんは酔ってくると「僕が生きているのは君が励ましてくれたからだ」と何度も言い出した。
最初の内は自分も「え~? それが殺し文句ですか?」とか「モテる男の人は言う事が違うね!」と笑っていたんだけど、あまりにも真剣にしつこく言ってくるので、周りの空気もおかしくなってきた。
私は何となく話を濁してさっさと席を移動し、別の人と話してその日のオフ会は終わった。
※
次の日、自分のブログを見てみると
「昨日は酔っ払っちゃってごめんね。軽蔑されちゃったかな?」
とAさんからコメントが付いていた。私は取り敢えず、
「全然ですよ!私の酔っ払った姿なんてもっとドン引きものです」
と返信した。
それからAさんからのコメントは記事を投稿しなくても毎日来るようになった。
コメントは他愛のない内容なんだけど、他の人からも丸見えで、周りの人にどう思われるかも気になる。
最初は毎回返していた返事も段々面倒になり、何より薄気味悪くなって、
「最近忙しくて更新とコメントができません。本当にすみません。ムウちゃんは元気ですよ」
という内容の記事を投稿し、コメント欄を全部凍結設定にして自分以外は書き込めないようにし、更新も停止した。
そうすると今までの『またAさんからコメント来ているのかな?』ともやもやしていた気持ちが無くなり、凄くスッキリした。
※
その後、一ヶ月程ブログから離れていた。
でも『今まで親しくしてもらっていたのに、よく考えると自分のやっていることは失礼だったのでは?』と思い始め、せめて仲間のブログの記事を見に行こうと、久しぶりに仲間のブログを巡回した。
Aさんのブログは正直迷ったんだけど『嫌がらせをされた訳じゃないので無視をするのもなあ』と思い、距離を取りつつ付き合って行くという事で、彼のブログも訪問することにした。
トップページには『悩みの相談』と題付けされた記事があり、私の事が書かれていた。
あるブログ仲間にいきなり無視し続けられて、もう眠ることもできないと…。
冗談じゃない!
でも今なら知らばっくれて「忙しくてごめんね」とコメントを書けばフォローになるかと思いコメント欄を開いてみると、彼の仲間たちによって既に沢山のコメントが書かれていた。
「Aさん優しいから勘違いしちゃったんじゃない? 放っといた方がいいよ」
「きもいな。その勘違い女」
「その女のブログ見てきたけど、サムイな。自己満足?」
「飼っているインコも、なんか目が変じゃない? ってか、ウンコ顔」
「他人ごとながらムカつくわぁ~」
「本人の写真あれば 2chに晒そうか?」
と、Aさんが結構人気ブロガーのためか私の悪口のオンパレード。
しかも下に行くに従ってどんどん笑えないものに変わって行った。
「女のブログの写真見ると、住んでいるのは○○町だな」
「○○町だとうちの近所だぞ。解析する?」
そこまで読んで慌てて自分のブログに戻り、全ての記事を削除した。
もう二度とブログなんかやらないと思った。
※
その後どうなったのかは分からない。私の家は割り出されたのだろうか?
でも仕事で留守が多いし、家にいても居留守魔なので玄関の呼び鈴が鳴っても出ないし、もうこんな嫌な事忘れちゃえばいいか。
珍しくムウちゃんが何か長文を喋っている。
何を言ってるのかなと鳥籠を見ると、ムウちゃんの片足が変な方向に曲がっていた。
そしてムウちゃんはこう叫んだ。
「ムウチャン、シンジャウヨ。ツギ、ムシシタラシンジャウヨ」