不可解な風景画
公開日: 死ぬ程洒落にならない怖い話
私の友人にM君という結構霊感のある者がいるのですが、そいつから聞いたとても不思議な話です。
僕たちの住んでいる駅前には大きな団地が並んでおり、M君は駅を利用する行き帰りは、いつもその団地内を突っ切っていました。
ある日、家に帰ろうと、いつも通り団地を突っ切って歩いていました。
その日は仕事も残っており、普段より足早に家路に向かったそうです。
いつもは子供が遊んでいたり、買い物帰りの主婦で賑わっている場所ですが、夜も大分更けていたということもあり、辺りはあまり人影は見られなかったそうです。
1号棟、2号棟を過ぎた後、砂場とベンチとブランコしかない小さな公園に差し掛かると、チラッと人影が見えました。
こんな夜遅くに何しているのだろうと、遠目から目を凝らして見ると、それは女性の首吊り死体だったそうです。
こんな時に何故こんなものが…。
普通だったら逃げ出すほどびっくりし、パニックに陥るところでしょうが…。
M君は肝が座っているというか、何と言うか、半ば面倒なものを見つけちゃったという気持ちで警察に通報しました。
※
警察が到着し、野次馬も大分増え、M君に待っていたのは長い取り調べでした。
首を吊った砂場の横の木を正面に見据えられるベンチに座らせられ、隣に一人警察官が座り、同じことを何度も質問されたそうです。
結局、家に帰っても仕事どころではなく、その日はすぐに眠りに就いたそうです。
※
次の日、M君が目を覚まし会社へ行く準備をしていると、警察から電話があり、すぐに署に来て欲しいと言われました。
会社に行かなくちゃいけないし、発見当時の状況は昨日何度も説明したでしょと答えると、
「そうじゃない。君に見てもらいたいものがある」
と、何だか変な様子だったため、しぶしぶ警察に向かったそうです。
※
署に着くと昨日の警官が迎えてくれて、部屋に通されたそうです。
着いた早々にM君が、何故呼んだのか問い詰めると、その警官は何かを言いづらそうな感じでモゴモゴしていたそうです。
M君が怪訝な顔をしていると、
「確かに、あの女性とは面識がないんだよね。
いや、女性のお母さんに遺書を探してもらってたんだけど、変なものが出てきちゃって」
と一言口を開いた途端、堰を切ったように話し出し、茶封筒から一冊のスケッチブックを取り出しました。
「これを見て欲しいんだ…」
M君はスケッチブックを手渡され、一枚一枚ページを捲っていました。
何やら絵の学校に通っていたのか、そこには果物や家具などのデッサンが描かれていました。
そして、その中に一枚だけ風景画が混ざっていました。
どこかで見たことのある風景…。
それにはブランコがあり、砂場があり、その横の木にロープを括って首を吊っている女…。
そしてベンチには、一人の青年と、警察官らしき人が座っている画でした。
そのスケッチブックは、鍵の掛かった机の引き出しから出てきたものでした。
女性以外の指紋も見つかっていないらしく、とにかくその後もM君は、女性との関係を問い詰められたそうです。
M君も「だったら、何でおまわりさんも描かれてるんだ」と、半ば二人パニックになりながら言い争ったそうです。
結局埒が明かず、M君は帰してもらい、その事件も遺書なしの自殺ということで片付いたそうです。
M君は霊感も多少あり、今まで霊現象を体験したこともあるのですが、これほど不可解で恐ろしいことはなかったそうです。