マイナスドライバー

p1

そんなに怖くないのですが聞いてください。

私がまだ4~6歳の頃の話です。

当時、私の家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。

まだ小さかったので、母と女湯に入っていました。

或る日のこと、身体を洗った後、湯船の中でプールよろしく遊んでいました。

今まで気付かなかったのですが、湯船の横が階段状になっていてドアが付いているんですね。

私はふとそのドアが気になって、段々を昇りドアの前まで行きました。

よく見るとドアノブの直下に大きな鍵穴があるのです。

ワクワクして覗きました。でも、向こう側は何かに覆われて見えません。

『なんだ、つまらない』と思い、いったん顔を上げました。

何を思ったかもう一度鍵穴を覗き込んだのです。

ぼんやりとした明かりの中、ボイラーとおぼしき機械が見えました。

『おわー!スゴい』と思いながら、夢中になって覗いていました。

ドアの向こうの気配、それとも何かが知らせてくれたのか、突然、私は目を離し身を引いたのです。

そして次の瞬間、鍵穴からはマイナスドライバーの先端が狂ったように乱舞していました。

私は息を呑みそこを離れ、怖くて母親にさえ話すことが出来ませんでした。

関連記事

山道(フリー素材)

上位の存在

厳密に言うと、この話は俺が「洒落にならない程怖い」と思った体験ではない。 俺の嫁が「洒落にならない程怖い」と思ったであろう話である。 俺の嫁は俗に言う視える人で、俺は全くの…

アケミちゃん(長編)

大学に入学し友達も何人かできたある日の事、仲良くなった友人Aから、同じく仲良くなったBとCも遊びにきているので、今からうちに来ないかと電話があった。 時間はもう夜の9時過ぎくらい…

夜の山道

ヤマメ

あれは母の実家から帰る途中での出来事。 母の実家はG県の田舎で、夏はキャンプ、冬はスキーをする人が来るような山の中。 お盆の時期になり、母が祖父の家に帰るらしいので、3人で…

娘が連れて行かれそうになった話

俺の田舎には土地神様が居るらしい。 その土地神様が俺の娘を連れて行くかもしれないとの事。 正直、今もどうして良いのか分からない。 聞いた時は吹き出した。でも、親父の反…

縁の下

あるタクシー運転手の奥さんが、まだ5才になったばかりの子を残して亡くなってしまった。 父親は仕事柄出掛けている時間が長く、そのあいだは隣の家に子どもを預けていた。 しかし、…

ヒッチハイク(長編)

今から7年ほど前の話になる。 俺は大学を卒業したものの、就職も決まっていない有様だった。昔から追い詰められないと動かないタイプで、「まぁ何とかなるだろう」とお気楽に自分に言い聞か…

民家

呪われた家系

私の店には、しばしばクレーマーとして知られるお客様が来店します。彼の家族にまつわる話は非常に不気味でした。 彼の家族の歴史を聞いて驚愕しました。学生時代に父親が突然発狂し、母親…

くる!

ウチの叔母さんはちょっと頭おかしい人でね。 まあ、一言で言うと「時々昔死んだ彼氏が私を呼ぶのよ」って台詞を親族で飯食ってる時とかに平気で言う人でね。 2年くらい前から「離婚…

警察官(フリー写真)

首が無い警官

私はある離島の駐在所に勤務しております。 この駐在所に来る前は、派出所に勤務しておりました。 田舎に住む事になりましたが、私は不運だったと思っていません。 職住接近…

呪いの連鎖(長編)

呪いって本当にあると思うだろうか。 俺は心霊現象とかの類は、まったく気に留める人間じゃない。だから、呪いなんか端から信じていない。呪いが存在するなら、俺自身この世にはもう居ないは…