マイナスドライバー

公開日: 洒落にならない怖い話

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そんなに怖くないのですが聞いてください。

私がまだ4~6歳の頃の話です。

当時、私の家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。

まだ小さかったので、母と女湯に入っていました。

或る日のこと、身体を洗った後、湯船の中でプールよろしく遊んでいました。

今まで気付かなかったのですが、湯船の横が階段状になっていてドアが付いているんですね。

私はふとそのドアが気になって、段々を昇りドアの前まで行きました。

よく見るとドアノブの直下に大きな鍵穴があるのです。

ワクワクして覗きました。でも、向こう側は何かに覆われて見えません。

『なんだ、つまらない』と思い、いったん顔を上げました。

何を思ったかもう一度鍵穴を覗き込んだのです。

ぼんやりとした明かりの中、ボイラーとおぼしき機械が見えました。

『おわー!スゴい』と思いながら、夢中になって覗いていました。

ドアの向こうの気配、それとも何かが知らせてくれたのか、突然、私は目を離し身を引いたのです。

そして次の瞬間、鍵穴からはマイナスドライバーの先端が狂ったように乱舞していました。

私は息を呑みそこを離れ、怖くて母親にさえ話すことが出来ませんでした。

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