出ると噂されているホテル

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

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仕事で地方へ行く用事が出来て、時間の関係で前の晩に新幹線に乗り一泊することになった。

それで、同僚と話している時に予約したホテルの名前を言ったら、

「お前知ってる? そのホテルってさあ…」

とか話し出した。そいつはその手の話が大好きで、俺すっげえ臆病だから絶対聞きたくなくて、

「バカやめろよ、言うなよ!」

と慌てて遮り、その時は聞かずに済んだんだけど、そいつのせいでホテルに着いた後も妙に気味が悪かった。

どうせ一泊しかしないんだから、さっさと寝ちまおうと思い布団に入ったんだけど、そういう時って一回でも怖いと思ったら終わりなんだよね。

寝るのも起きるのも身動きするのも嫌で、もう朝になるのを待つしかない。

そして布団の中で色々考えた。何故かその時は死ぬのが異様に恐かった。

ずっと死ぬことばかりを考えていて、『いやだ、怖い、死にたくねえ、でもいつか死ぬ。誰か助けて』と頭の中で繰り返していた。

もう本気で寝るのを諦め、どこかの飲み屋にでも行って時間を潰そうかと思い始めた時、

「ドンドンドンドン!!」

と部屋のドアが叩かれているんだよ。心臓停まんなかったのが不思議なくらいビビった。

「ドンドンドンドン!!」

幽霊? 火事? 知り合い? 何か事故でもあったのか。とりあえず電気を点けたが、ドアを開けるのは恐く、

「なんですかー?」

と答えてみたら、叩く音はピタッと止んだ。そのまましばらく身構えていたけど何も言ってこない。もう寝ていられる状態じゃない。

しばらくしたら、また

「ドンドンドンドン!!」

とドアを叩く音がした。

「なんかあったんですかー!?」

でも返事は無い。本当に緊急ならホテルの人間が何か言ってくる筈だ。鍵も開けられるだろうし、部屋の電話も携帯電話もある。

それなら大した用事じゃないのか? でもさっきからの妙な気分は引きずっていて、とにかく怖い。

「ドンドンドンドン!!」

フロントに電話をしようと思ったが、そういう他人とのコンタクトが凄く不安な状態だった。

言っても通じなかったらどうしよう。というより、何か変なのが電話に出たらどうしよう。

そんな事を考えていると、

「ガチャガチャガチャ!!」

ノブ回してるよ。入って来る気だよ。どうしよう。どうしよう。ビビりまくっていたがベッドの上から動けず、とにかく早く朝になれと思った。

「ドンドンドンドン!!」

「ガチャガチャガチャ!!」

イタズラか? 近くの部屋に頭のおかしいやつが泊まってんのか?

早くこの時間が終わることだけを祈っていると、段々空が白くなり、ドアを叩く音の間隔が長くなってとうとう止んだ。

仕事で朝が早いのが救いだった。フロントに電話をしてチェックアウトしたいと言い、後は普通。仕事して家に帰った。

それで、前にホテルの話をしかけた同僚を掴まえて、

「あそこ何かあったの?」

と聞いてみたら、数年前に火事があって、大した火ではなかったんだけど一人亡くなって、それから出るとか出ないとか。まあ、そういう話だった。

「ドア叩くんだろ?」

「何で知ってんの? もしかしてお前、何かあった?」

「うん」

「へー。何号室?」

同僚の話を聞くと、俺が泊まっていた部屋に居た人が火事で亡くなったらしい。

その人はどうやら逃げ遅れたらしく、パニックになっていたのかドアが壊れていたのかは分からないけど、部屋の鍵が開けられなくなったそうだ。

「やっぱ幽霊だったんだな。開けなくて良かった」

と言った俺に同僚は、

「なんで? そいつ部屋の中から外に出たくてドア叩いてたんだろ?」


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