白い女の話

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

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自分は小中高と、全寮制の学校に通っていた。

凄いど田舎で、そこそこ古い学校。文字通り山の中にある。

狸もよく見かけたし、雉もいた。

裏庭に生徒が何人か集まり、許可を取って畑作ったり。

そういう場所だから怪談話にも事欠かない。

というか、教師からして結構警戒している節があった。

何せこの学校では、大分昔とは言え死者が出ていたから。

事件性も何もない、ただの発作らしいけどね。

自分自身も結構色々な体験をしたけど、今回は学校でも有名だった白い女の話。

全寮制だから先輩達との距離もかなり近いし、夜中に集まって怪談話をよくしていた。

小学生の時に編入したんだが、入ったばかりの時にいた高3の先輩2人(以下A先輩・B先輩)の語り口が凄く上手いんだ。

ベッドで寝ていたら金縛りに遭って、目を開けたらおっさんの顔が覗き込んでいたとか、そんな割とありふれた話でも、その2人の先輩が話すと怖く聞こえた。

我が寮は5階建てで、自分達が使っていたのは4階だった。

5階は掃除もされていないし、自分達が使うまでは放置されていた建物らしく雰囲気も不気味。

下らない落書きなんかもそこかしこにあって、階段の踊り場まで行き覗き込むことはあっても、実際に立ち入る程勇気のある奴は居なかった。

ただ文化祭などで、終わったらもう二度と使わないけど捨てるのも忍びないガラクタみたいな荷物がよく出る。

あれを仕舞うスペースが無くなったと言うので、5階に運び込むことになった。

それをやることになったのは、A先輩達だった。

2人は仲が良かったし真面目だったから、いつも通りてきぱき頼まれた仕事をこなしていたらしい。

運び込むのは5階に入って直ぐの部屋だった。

ただ、埃が物凄いからと言うので、一旦中断して掃除をすることになった。

部屋だけでなく、この際だから徹底的に5階全体を。

学校が終わった後の作業だから、夜19時くらいは回っていたんじゃないだろうか。

異変が起きた――というか、異変に出会ったのは、階段から見て一番奥にある部屋だったそうだ。

寮の部屋はどこも同じ作りで、例えるなら長方形の両端4分の1がベッドスペースとして区切られ、真ん中の部分には勉強机が並んでいて、ドアの真向かいに窓がある。

つまり、扉を開ければ直ぐ窓が見える構造。

当然、5階は使われていなかったからカーテンは閉まっている。

まず、A先輩の方がその部屋に掃除の為に箒とちりとりを持って入った。

夜中だから、暗い。

すぐ下の4階の部屋は自分達が使ってるから灯りが漏れていて、それだけがカーテンを通して暗い部屋をぼんやりと照らしていた。

入ってすぐに気付いたと、先輩は言った。

閉じられたカーテン、当然床との間には隙間がある。

その隙間に、白い女の両足が見えた。

膝上の、白いワンピースの様な服を着ていたと言う。

上半身は分からない。カーテンに隠れている。

だけど、足が見えただけなら不審人物が侵入していたというオチもあるかもしれない。

そうじゃない、そこにいたのが人間じゃないという証拠は、すぐ目の前にあった。

下から漏れた灯りがカーテンを透かして部屋を照らす。

だが、そこにカーテンの後ろに隠れていると思われる女の影は映らない。

ああ、人間じゃないなと気付いてすぐに、先輩は扉を閉じた。

B先輩が、様子がおかしいことに気付いてどうしたと声を掛けてきたので、A先輩は自分が見た物をそのまま伝えた。

2人で話し合った結果、「夜は入らない方がいい」という結論に達して、5階大清掃計画は半ばまで進んだところでおじゃんになった。

先輩達がそんな思い出話をしてくれて、自分達は顔を見合わせた。

その体験談は話してくれた時の大体2年前くらいのことだったんだが、それから色々な生徒が結構な頻度で白いワンピースの女を見ているのだ。

自分も見た……というか、20人くらいは目撃していた。

共通点は、白い肌、白いワンピース、女、黒髪ロングのストレート。日本の幽霊像のテンプレみたいな感じだ。

ただし、殆どの場合は余り危険を感じないというのも共通している。

いわゆる浮遊霊みたいなものだと皆が納得していた。

でも、事件は起きた。

学校の裏門を出てすぐの道の向かい側に、山の中に埋もれた小さな神社がある。

寂れていて、氏子なんて絶対いないような、神社と言うより祠と言った方が正しい感じ。

長くて狭くて小さな石段を越えると粗末な鳥居の先にある。

寮生の間ではちょっとした逢い引きスポットと化していたんだ。

ある日、何の気なしに後輩(以下C)がそこに向かった。

ただの暇つぶしのつもりだったんだろう。

その石段の前に白いワンピースの女がいた。

すぐに噂の奴だと気付いて、Cは目を合わせないように俯いたそうだ。

俯いたら当然相手の足しか見えない。

なのに、何故か女の視線がこちらに向いたと分かった。

Cは急いで裏門に戻って振り返らずに学校へ戻った。

学校の玄関口に入るまで、背中をずっと視線が追って来たと言う。

その話を聞いて自分も含めて殆どが、

「あの女なら大丈夫だろ」

とCを宥めていた。

今思うと無責任なことを言ったと思う。

Cは確かに、「やばい」と感じていたのだから。

次の日、Cは4階から飛び降りた。

死にはしなかった。偶然にも、渡り廊下の屋根の上に落ちたのでクッションが効いたのだと教師は説明していた。

だけど、Cの右腕は肩から切り落とされた。

後日Cから話を聞いたところによると、窓から外を眺めていた時に、背中から突然、女の視線を感じることに気付いたそうだ。

咄嗟に逃げようとしたが、振り向くことも出来ず、結果的に視線に押される様に窓から身を投げたのだと。

その女は今も寮に、特に自分が住んでいた寮の5階に居ると聞いている。

困ったことに、自分の在学中に5階は大幅なリフォームがされ、明るい部屋の並んだ階となって、寮生達も部屋として使うようになった。

ふと目を覚ますと、窓際に見えると言う。

女の足が。

Cの事件以来、後輩には「女を一瞬でも見たら絶対に近づくな、目も合わせるな、自分が居ることを気付かれないようにしろ」と伝えるのが、一種の伝統になった。

Facebookなどで後輩の話を聞くに、あれ以降被害は出ていないらしいが。

それでも、女を見る生徒の数は増えるばかりだ。

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