霊に勝った男

公開日: 心霊体験 | 笑える怪談

アパート

大阪市西区、駅から徒歩五分という好立地にあるマンションに引っ越したのは、今から三年前のことです。

コンビニまでわずか一分という便利な場所にありながら、家賃はなんと三万円。あまりにも安すぎる。

「何かあるのかもしれない」と疑いつつも、利便性には勝てず、結局その部屋に住むことにしました。

引っ越して間もなく、最初の異変が起きました。

風呂場の電球が、突然パッと切れたのです。

取り替えたばかりだったのに、です。

不思議に思いながらも新しい電球に交換したところ、またすぐに切れてしまいました。

光が弾け飛ぶような、そんな壊れ方でした。

仕方なくその夜は、暗いままの風呂場で湯に浸かることにしました。

二日後、今度は家全体の電気が突然消えました。

ブレーカーが落ちたわけでもなく、部屋のスイッチを押すとすぐに点いたのですが、またすぐに消えます。

「……もしかして霊的な何かだろうか」

とは思いましたが、どこかで「これでも霊なりに気を遣ってくれているのかもしれない」と、妙に前向きな気持ちで受け止めていました。

その後も奇妙な現象は続きました。

ある日は、いきなり本棚から本が落ちてきたのです。

私は反射的にその落ちた場所に向かって何かを投げつけ、「今のは俺がやったからな」と、ひとりでドヤ顔。

他にも、夜寝ている時にふと天井を見上げると、女の人が張り付いていることもありました。

思わずトレーディングカードを天井に向かって投げ、「そこかっ!」と叫んでしまったこともあります。

ラップ音もよく鳴りました。

あまりにしつこいので、寝不足気味になり、つい舌打ちをしたのですが、ふと気づくとその舌打ちがリズムに変わり始め、ラップ音と合わせて即席のボイスパーカッションを始めていました。

結果、妙にテンションが上がってしまい、そのまま楽しくなって寝落ち。

翌朝には何も起こっておらず、霊たちもおそらく呆れていたことでしょう。

ある日、キッチンからフライパンが「ガシャーン」と落ちる音が響きました。

もちろん、誰もキッチンにはいません。

私はフライパンを拾い上げ、「三秒ルールだ!」と言い放つと、そのまま玄関のドアを開けてフライパンごと外に放り投げました。

「霊も一緒に外に出ていけ」と思いながら。

それから数日は、静かになりました。

そしてある晩、悪夢を見ました。

夢の中で、誰かに髪の毛で首を絞められるのです。

息ができず、もがきながらも私は夢の中でキレて叫びました。

「ふざけんな!やめろ!」

その瞬間、目が覚め、部屋の空気が静まり返っていました。

それ以降、不思議な現象は一切起こらなくなったのです。

あれから三年、霊的な気配を感じたことは一度もありません。

そんなある日、霊感のある友人が遊びに来ました。

部屋に入ってすぐ、彼はふとカーテンの方を見て固まりました。

「……お前、なんかした?」

と問いかけてきたのです。

私は首を傾げて、「何が?」と尋ねました。

すると彼はこう答えました。

「いや…お前の部屋のカーテンの脇あたりに、何人か霊がいるんだけど……。お前のこと、めちゃくちゃ怖がってるんだよ」

どうやら私は、霊たちに「ヤバいやつ」認定されていたようです。

結果的に、霊現象はすべて収まりました。

駅近で家賃三万円のマンションには、きっと理由があったのでしょう。

でも、いまのところ――その部屋には、平和が訪れています。

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