部屋の灯り
北海道の知床の近くにある○○という町に友人と行った時のこと。
知床半島の岬を観光するにはその町からバスに乗る必要があったんだけど、田舎なだけにバスが3時間に一本で、面倒臭くなって歩いたんだよね。
そしたら数時間かけて行った先で、今日はフェリーの時間帯が変更されたからもう乗れないと言われてがっくり。
今度はバスに乗って町に戻ったんだけど、疲れて気力もなく、その町の旅館に泊まることにした。
その旅館は作りこそ昔風だが、結構綺麗に掃除もしてあったし、どことなく温かみの感じられる良さそうなところだった。
ただ一つ気になったのは、いくらシーズンオフとは言え、客が自分達以外いないことだけ。
案内された和室で寛いで、これから風呂にでも入ろうかと話していたその時、唐突に部屋の電気が消えた。「あれ?」と言ってパチパチ紐を引いても点かない。
受け付けのお爺さんを呼んで電球を取り替えても灯りが点かない。
仕方なく部屋を変える事にして、隣の部屋に荷物を移して電気を点けた……が、明りが点かない。
面倒くさいと思いながら、またその隣りの部屋に行って灯りを点けようとしたら、そこも。
結局原因が判らないまま、7部屋程あったその並びは全滅。
向かいの並びの部屋に行ったら電球が点いてほっとした。
変だなとは感じたが、きっとあまり電球の手入れをしてなかったのだろうと思って、あまり気にしてなかった。
風呂はいかにもな旅館の風呂だったけど結構広くて、夕飯は確か値段の割に内容が良かった気がする。
夜の8時頃からテレビでやってたオーソンウェルズのマクベスをジュースを飲みながらぼーっと見て、22時頃に寝た。
夜中の3時頃だったか、ふと尿意で目が覚めてトイレで用を足し戻ってくる時に、向かいの並びの部屋一列全てのドアの隙間から灯りが漏れてることに気づいた。
寝ぼけた頭で「ああ、これでさびしくないなあ」と思いつつ、部屋に戻ってそのまま寝た。
オチもなにもないですが、翌日受け付けのおっさんに金を払ったときの様子でも、客が自分達以外に来た様子はなかったです。
今書いてて気づいたけど、そういやお盆でした。