障子の穴

公開日: 不思議な体験 | 心霊体験 | 怖い話

H260213syoujidoDSCF0002

自分がまだ小学校高学年の頃の話。

当時の自分の部屋は畳と障子の和室で、布団を敷いて寝る生活だった。

ある晩、高熱を出して寝込んでいた自分は、真夜中にふと目が覚めた。寝込んでる時って日中もずっと寝てるから変な時間に目が覚めるんだよな。

当然、電気も消えてるし障子も閉め切ってるから、部屋の中は真っ暗。でも真っ暗な中でも、目が慣れてくるとある程度部屋の様子が見えてくる。

そんな状態で、ぼーっと寝たまま障子の方を見ていた。

なんだか部屋の様子が変な気がした。いつも見慣れてる自分の部屋なのに、どこか違和感がある。なんとも言えない違和感があった。

それで気付いたんだ。自分の部屋の障子は、自分で開けてしまった穴が何箇所かあったんだが、心なしかその数が多いような気がした。

『おかしいな、こんなに穴って多かったっけ』

そう思って穴の数を数え出したんだよ。高熱で、寝起きのぼーっとした頭で。

明らかに、普段知ってる穴の数より多かった。普段3だとしたら7ぐらいまで増えてた。さすがにおかしいだろってことでもう一回数えようとしてたら

「ぶすっ」

と穴が開く瞬間を見た。

一瞬凍りついた。障子の外側は窓ガラスになってて、当然ガラスも閉め切ってる。外から誰かが穴を開けるなんて有り得ない。混乱しながらどうすることもできずに障子を見ていると、また

「ぶすっ」

と別のところに穴が開いた。怖くて飛び起きようとしても、高熱のダルさなのか何なのか、起き上がることができない。もう障子の方を見たくない、でも背中を向けるのも怖い、どうしよう、と思ってたら

「ずぼっ」

と一気に五箇所、穴が開いた。まるで五本指をそのまま突っ込んだみたいに。そして、五箇所の穴がそれぞれ下方にどんどん広がった。突っ込んだ五本指を使って、障子を裂いていくみたいに。

実際に障子に五本指突っ込んで下方向に裂くと、きれいに五本筋はできずに、途中からまとまって破けてしまうのはイメージできると思うけど、その時もまさにそうなった。まとめて結構な面積が破れた。

もう半泣きで、でも障子から目を背けられずにいると、破れてできた大きな穴から、真っ黒い長い髪の毛が垂れてきた。

もう外の窓ガラスが閉まってるとか閉まってないとか、そんなことは関係なく、幽霊がすり抜けて入ってこようとしてるんだと思った。

髪の毛はどんどん垂れてきて、もう頭が全部部屋の中に入ったぐらいになっていた。そこで意識が途絶えた。

次に気が付くと、もう朝になっていた。無事に朝が来たことにまずほっとして、次に夜のことを思い出しゾッとして障子を見た。障子の穴は無くなっていた。そこでまたほっとしたが、また違和感を感じた。

障子の穴が、一つ残らずなくなっていた。自分で開けた、普段からあった穴も全部無くなって、張り替えた直後のようになっていた。

不思議に思って障子をまじまじと見てみたが、張ってしばらく経った、若干色が黄ばんだ感じのまま、ただ穴だけが消えていた。

障子を開けてまたぞっとした。窓ガラスには手形が二つと、長い髪の毛が10本程べったりと張り付いていた。

親に言っても信じてもらえず、障子の穴も「最初からなかった」と言われた。だけど、絶対自分で開けた穴はあったはずだった。

以来、家を建て替えるまで、寝るときは絶対に障子に背を向けて寝るようになった。

幸いその夜以外には異変とか怪異はなかったが、今でもどんどん障子の穴が増えていくあの光景を思い出すとぞっとする。

関連記事

縁側

猫が伝えようとした事

俺が人生で一度だけ体験した不思議な話です。 俺の住んでいる所は凄い田舎。数年前にローソンが出来たけど、周りは山に囲まれているし、季節になると山葡萄が採れ、秋には庭で柿が採れるよう…

幽霊と…

5年ぐらい前、地方都市でホステスをしていた時の話。 一緒に働いている女の子で、自称霊感の強いMちゃんという子がいた。 最初は信じていなかったのだが、Mちゃんが「明日は外出し…

砂場(フリー写真)

サヨちゃん

俺は小学校に入るまで広島の田舎の方に住んでいた。 その時に知り合った『サヨちゃん』の話をしよう。 ※ 俺の母方の実家は見渡す限り畑ばかりのド田舎で、幼稚園も保育園も無い。 …

無人駅

消えた駅『すたか』

この話は、京都駅からJR線に乗って長岡京に向かっていた主人公が、うっかり寝過ごし、見知らぬ無人駅「すたか」で降りることになった出来事です。 主人公は、薄暗く寂れた無人駅で待って…

電車の車内

時空を超えたゲーム機

誰に話しても信じてもらえない体験がある。それは、初代ゲームボーイが市場に登場したばかりの頃のことだ。 当時、私は親に新しいゲームボーイを買ってもらい、大いに興奮していた。習い事…

満月

ファンの悲哀

昔、私はある役者の熱狂的なファンでした。彼が出演するすべての作品を見るのはもちろん、関連する雑誌も買い集めていました。しかし、彼はある日、病気のために休養を余儀なくされ、そのまま亡く…

サイパン(フリー画像)

サイパンに残された日本兵

十数年前の「人事院月報」という、国のお堅い雑誌の読者欄に何故かあった話。 少し怖かったので今でも覚えています。大体下記のような内容でした。 ※ 夏休み、一家でサイパンを訪れた…

叩いている

高校の時、仲の良い友人が「週末、家に泊まらない?」って誘ってきた。 「親もいなしさ、酒でも飲もーぜ」って。 特に用事もなかったけど、俺は断った。 でも、しつこく誘って…

癒しの手

不思議なおっさん

自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。 いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。 両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていた…

人身事故

6月の中旬頃の話。 当時俺はバイクを買ったばかりで、大学が終わるとしょっちゅう一人でバイクに乗ってあちこちを走り回っていた。 その日も特にする事がなかったので、次の日が休み…