小さな手

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

a0011382_10224151

学校に付き物の怪談ですが、表に出ない怪談もあるのです。

わたしが転勤した学校での話です。

美術を教えているわたしは、作家活動として自ら油絵も描いていました。

住まいは1LDKの借家のため、家で大きな作品を描くことができず、放課後、いつも学校の美術室に残って作品を描いていました。

今度の転勤先でも同じように、美術室の一角で制作を続けていました。

ところが、妙なことに気づきました。

作品の表面に小さい子供の手の跡が付いているのです。

油絵というのは乾きが非常に遅く、完全に乾くのに1週間かかることもあります。

わたしが知らないうちに誰かが触ったのかと、あまり気にもせず制作を続けました。

手の跡も絵の具で上から塗り重ね、消してしまいました。しかし次の日も、子供の手が跡が付いていました。

1個どころではなく、作品の表面全体にびっしり付いていたのです。

100号という大きさの油絵ですので、単なるいたずらではないなと感じました。

その日は作品全体の手の跡を消しながら描いているうちに、作品の山場にさしかかり、いつしか夜中になってしまっていました。

わたしの筆の音しか聞こえないはずの美術室に、いつごろからか、猫の鳴き声とも赤ん坊の声とも言えない泣き声が聞こえるようになりました。

窓を開けても猫の姿はなく、赤ん坊も当然いるわけもありません。気にせず制作を続けていると、どうやら美術室の中から聞こえるようなのです。

泣き声のする方向を絞っていくと、美術室の後ろにある工芸用の電気釜の中のようです。

電気釜は焼き物を作るときに使う、大きめのゴミ箱ぐらいの大きさのものでしたが、故障なのか長い間使った形跡はありません。

フタを開けると、本当に生徒がゴミ箱がわりに使っているらしく、丸めた紙くずなどで内部が一杯です。

転勤してきたわたしも片づける暇もなく、放置したままだったのです。

わたしが恐る恐る電気釜に近づいていくと、泣き声がふと止みました。

ひょっとして生徒が子猫を閉じこめたのかもしれない。そんないたずらをする生徒がいるなら作品についた手の跡も納得できる。

わたしはいたずらの正体を見破るべく、電気釜のフタを開け、紙くずを拾い出しました。

美術室に響く紙の音は気持ちの良いものではありませんでした。

手に取れるゴミは拾い出しましたが、猫など見あたりません。電気釜の底の方には乾いた砂が溜まっていました。

わたしは砂に手を突っ込み、中を探りました。指先に手応えがあるので取り出してみると、それは骨でした。

動物のもののような骨、わたしは恐くなり、それ以上手を突っ込むことはできず、美術室を飛び出しました。

翌日校長にこの出来事を話したところ、「すべてこちらで対応するから他言しないように」と強く言われました。

その後聞くところによると、わたしが転勤する前、不倫の末妊娠し退職した美術の女教師がいたということでした。

その人は、現在消息不明だということです。

あの小さな手の跡と赤ん坊の泣き声は、一体何だったのでしょうか?

関連記事

戦時中の軍隊(フリー写真)

川岸の戦友

怖いというか、怖い思いをして来た爺ちゃんの、あまり怖くない話。 俺の死んだ爺ちゃんが、戦争中に体験した話だ。 爺ちゃんは南の方で米英軍と戦っていたそうだが、運悪く敵さんが多…

白い女の話

自分は小中高と、全寮制の学校に通っていた。 凄いど田舎で、そこそこ古い学校。文字通り山の中にある。 狸もよく見かけたし、雉もいた。 裏庭に生徒が何人か集まり、許可を取…

ここにいたあ

13日に田舎の墓参りに行ってきた。 毎年恒例で、俺は東京で一人暮らしして初めての里帰りだった寺には一族郎党が集まり、仲の良い従兄弟のDも来ていた。 お経も終わり墓参りも終わ…

ビジネスホテルの窓(フリー写真)

ビジネスホテルでの心霊体験

学生の頃、都内の某ビジネスホテルで警備のアルバイトをしていた。 従業員が仮眠を取る深夜0時から朝の5時まで、簡単なフロント業務と見回り。 あと門限過ぎに戻って来る泊り客に、…

い゛れでぇぇ…

友人は最近仕事が忙しく、自宅に帰るのは午前2時~3時になっていたそうです。 この自宅というのは、8階建てのマンションで7階にある部屋です。 いつものように、帰りが2時を過ぎ…

優しい抽象的模様(フリー素材)

兵隊さんとの思い出

子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。 その人はヘルメットを被っていて、襟足には布がひらひらしており、緑色の作業服のような格好。足には包帯が巻かれていた。 小学生にな…

夜の住宅街(フリー素材)

屋根の上の女

今年の夏の体験。 私の家は山の上の方にある。 夜、喉が渇いたので飲み物を買おうと、500メートルほど坂を下った所にあるコンビニへ行くため自転車に乗った。 私の家からコ…

窓(フリー写真)

死んだ街

映像製作の専門学校がありまして、私はそこで講師助手のような仕事をしています。 1年生の授業で、 『カメラを渡され、講師が決めたテーマに沿った映像を、次の授業の日までに撮って…

黒ピグモン

深夜にひとりで残業をしていた時の話。 数年前の12月の週末、翌週までに納品しなければいけない仕事をこなす為に、ひとり事務所に残って残業していた。 気付けば深夜0時近く。連日…

山遊び

子供の頃の話。 大して遊べる施設がない田舎町だったので、遊ぶと言えば誰かの家でゲームをするか、山や集落を歩いて探検するかの2択くらいしかする事がなかった。 小学校が休みの日…