後悔の念

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

tumblr_static_9jiz7wltizggcw408sg8844ww

俺は過去に二度、女の子を中絶させたことがある。一度目は完全に避妊ミス。17歳の若かりしころ。

二度目は、23歳の時。

2年程付き合った彼女なんだけど、俺は結婚を意識してた。子供できてもいいやとか思って、結婚の約束をした訳でもないのに、思い切り中に出してた。

拒否しないから、彼女もオッケーなんだと思ってた。

案の定、彼女は妊娠し、俺はそれをキッカケに結婚してくれと言った。もちろんオッケー…だと思っていたら、なんと、親からもちかけられた縁談が断れないからと、逆に別れ話をされてしまった。

なぜ縁談が断れないかというのは、話すと長くなるので割愛する。要は家の事情。政略結婚という訳ではないが、そんな感じ。

じゃあ、赤ん坊はどうすんの?って話だ。俺は子供が本当に楽しみだった。俺1人で育てるから産んでくれと説得したが、最後には向こうの両親まで出て来て、

「今から結婚するのに、他の男の子供がいてどうする」

と言われ、さんざんの抵抗もむなしく、赤ん坊はおろされてしまった。

17歳の時には、ぶっちゃけ「あー、めんどくせ」とか思っていた俺だが、その時は涙をこらえられなかった。その時のことを6年もしてから、本当の意味で後悔した。

それから、俺は妙な体調不良に悩まされ始めた。肩が重く、食欲もない。寝ても、思い出せない怖い夢を見て飛び起きる。

病院に行っても原因不明。俺はあんなことの後だから、ストレスなんだろうと思っていた。

じきに忘れ、体調も直ると。しかし、体調は日に日に悪くなり、メンタルクリニック等にも通ったが、とうとう仕事を休職するはめになってしまった。

それからは実家に戻り、家の手伝いをして、しばらく親に食わせてもらっていたが、体調は相変わらずだった。

68kgあった体重が、2ヶ月で52kgまで落ちた。病院にいっても、やっぱり原因不明。メンタルクリニックも、もう行っても無駄だと思った。

それからしばらくして、俺は法事に顔を出した。親戚は俺の変わり様に驚き、心配の声をかけてくれた。

法事も終わり、帰りがけにオフクロの姉の旦那の妹(叔母)の人が、俺に声をかけて来た。

「○○ちゃん(オフクロ)から話聞いたよ。おばちゃんね、霊媒師の人知ってるから、紹介してあげようか?」

何言ってんだこの人、と思ったが、治る可能性があるならと思い直し、後日、連絡を取り、紹介してもらうこととなった。

その霊媒師曰く、

「水子の霊が憑いてます」

ショックだった。確かに2人もおろしてる。俺は子供をおろした話を、この人にはしていない。

俺はすがるような思いで、その人に除霊をお願いした。

すると、

「除霊はしますが、それは水子の霊を供養することに他ならない。あなたの今の体調不良は、いうなれば生霊の影響なのです」

詳しく聞くと、水子の霊は憑いているが、その霊は俺にとって害になる霊ではないという。

その霊に影響する、俺の後悔の念と、別の人の後悔の念が重なり合い、今の状態になっているとのことだった。

そして、俺以外で後悔している人間も、同じように憑かれているはずだと。

水子の供養はそこでやってもらった。結構あっけなかったが、本当に心の底から手を合わせた。ちょっと涙が出た。

半泣きの俺をみて霊媒師が、

「その涙があなたを苦しめる原因なのです」

と言った。

俺以外に後悔している人間、それは17歳の頃か23歳の頃の彼女、どちらかしかいない。でもやっぱり、結婚を断られた彼女の方な気がした。

俺は数ヶ月ぶりに彼女に連絡し、会う約束をとりつけた。

数ヶ月ぶりに彼女と会った。彼女は俺を見て驚いていた。俺は彼女に霊媒師の話をし、心当たりはないかと訪ねた。

ところが彼女は分からないと言う。俺は「後悔の念」について問いただした。子供のことを後悔しているんならやめろと(それも変な話だが)。

しかし、彼女は新しい結婚生活も順風満帆で、幸せな毎日を送っているそうだ。子供のことはかわいそうに思っているが、特に強烈に後悔している訳でも無い。

なんだかみじめになり、その日は話を終えるとすぐに別れた。

残るもう1人の彼女かもしれないと思った俺は、早速連絡をしようと思った。だが、なにせ6年も前に別れたっきりで、連絡先を覚えていない。

俺は特に仲が良い訳でもない昔の知り合いに片っ端から電話して、彼女の連絡先を調べた。するとある女の子が、

「あー、○○ちゃんの友達の子でしょ。○○ちゃん聞けばわかるよ」

と言う。やった!見つかった!

「じゃあ、ちょっと聞いてもらいたいんだけど」と言うと、

「え、でもその子って…」と口籠る。

「どうしたの」と聞くと、

「亡くなったんじゃなかったっけ?」

「はぁ!?」

「え…?だって○○くん(俺)が…」

「ちょっと待って!どゆこと!?」

さんざん言い渋った挙句、聞き出したのは信じられない話だった。俺は彼女(17歳の頃)が子供をおろしてから、彼女が退院しない内に別れた。

元々大して好きではなかったのと、やはり妊娠騒動でうんざりしたことがあり、さらにその頃俺と付き合いたいという可愛い女がいたためだ(こうやって改めて言うと本当に自分が嫌になるが)。

その後、共通の友達もいなかった彼女の噂を聞くことはなかったのだが、なんと彼女はその堕胎が原因で1ヶ月後くらいに亡くなってしまっていたと言うのだ。

にわかには信じがたかったが、やはり連絡しないといけないと思い、連絡先を聞く事にした。

俺は昔の知り合いに聞いた連絡先に電話を入れ、彼女の両親と会うことになった。両親から聞いた話は、電話で知り合いに聞いた話そのままだった。

俺はなんてことを…。俺は両親の前で土下座して謝った。父親は何も言わなかったが、母親が口を開き、こう言った。

「謝ってもらっても、娘は帰ってこないのよ。法律的には、あなたには罪はないしね」

「でも…そういう問題じゃありません」と俺が言うと、

「そうよ。娘を殺したのはあなただと、私は思ってます。一生後悔して生きてね」

俺は血の気が引いた。きっと生霊というのは、この人なのだろう。

俺は呪われているんだ。罵倒され、殴られる方がずっとよかった。

体調不良は今でも続いている。霊媒師の所には今でも行っており、色々相談に乗ってもらっている。

俺の後悔の念が消えれば、向こうの両親の生霊(後悔の念)に干渉されることもない、早く忘れ、前を向くことだ、と言われている。

その為、禅寺にも通って禅を組んだりしている。でも、忘れるってどういうことなんだろうか。

子供おろしたってどうってことないぜ、と思っていた頃に戻ればいいんだろうか。最近俺の本棚には、仏教関連の本がいっぱい並んでいる。

最後に、彼女の両親に会った後、霊媒師に相談した時の会話。

「お母さんに許してもらえればいいんじゃないでしょうか…俺、毎日でも謝りに行こうと思ってるんですが」

「ダメです。もうお母さんには会ってはダメ。あなたにまとわりついていた後悔の念は、ハッキリとあなたへの憎悪となっています。ある種の呪いになろうとしている。もう、夢も思い出せるはず」

そう、俺は毎晩のように見る、おぼろげだが強烈な悪夢を思い出せそうになっていた。血みどろの部屋で泣きわめく中年女性。多分あの女性の顔は、お母さんなんだろう。

関連記事

大事な妹

小4の時の話。 Tちゃんのお姉さんは中学生で、首に腫瘍ができるよく解らない難しい病気で、入退院を繰り返していた。 家に遊びに行くとたまにお姉さんもいて、挨拶くらいはしたこと…

風呂の蓋

これはある女性がOLとして働きながら、一人暮らしをしていた数年前の夏の夜の話である。 彼女が当時住んでいた1DKは、トイレと浴槽が一緒になったユニットバス。 ある夜、沸いた…

花(フリー写真)

連れて帰って来た子

小学3年生の時、友達の妹が亡くなった。 医療事故とのことですが、詳細は不明。 私もよく一緒に遊んでいたので、お葬式に行った。 ※ 家に帰ると、当時3才の弟が普段とは違う…

高田馬場のアパート

7年前の話。 大学入学で上京し、高田馬場近辺にアパートを借りて住んでいた。 アパートは築20年くらいで古かったけど、6畳の和室と、襖を挟んで4.5畳くらいのキッチンがあると…

赤い服の女の子

以前に書き込みした者ですが、もう一つ、二十年程前の話をします。 私はオカルト掲示板でもお馴染みの、例の生き人形の生放送を見ました。 スタジオがパニックになったなど詳細は覚…

俺の曾爺ちゃんの話を書いてみようと思う。 と言っても、曾爺ちゃんは俺が物心付く前に死んでしまったので、爺ちゃんに聞いた話なのだけれど…。 更にそれを思い出しながら書くので、…

呪われた土地

俺の親友の話をしたいと思う。 小4の頃にそいつ(以下H)の親が二階建ての大きな家を建てた。 建設業を営むHの父親が建てた立派な外観のその家は、当時団地住まいだった俺にとって…

学校の校門(フリーイラスト)

校門を閉じる習慣

私の通っていた高校には、17時のサイレンが鳴ると共に、用務員の人が急いで校門を閉める習慣がありました。 まだ下校のチャイムすら鳴っていないのに正門を閉めるのです。 生徒はい…

トンネル(フリー写真)

車の手形

ある日、大学生のカップルが山へドライブに行きました。 夕方になり、辺りが薄暗くなった頃に帰ろうとしたのですが、道を間違えたのか、行きでは通らなかった古びたトンネルに行き着いてしま…

古いタンス(フリー素材)

入ってはいけない部屋

俺の家は田舎で、子供の頃から「絶対に入るな」と言われていた部屋があった。 入るなと言われれば入りたくなるのが人の性というもので、俺は中学生の頃にこっそり入ってみた。 何とい…