開かない踏切

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

踏切(フリー写真)

取引先の人から聞いた話。

それは最終電車も通り過ぎた踏切での事。

彼はお得意先のお偉いさんを接待した帰りだった。

付き合いでさほど強くない酒を飲んだ彼は、タクシーに乗り込んで自宅へ向かった。

彼の家のすぐ近くには、小さな踏切がある。東京の私鉄が住宅街を通る、よくある踏切の一つだ。

そこに差し掛かった時、踏切が閉まり警告灯が点った。

そして点検用の車両が通り過ぎ、暫くして警告灯が消えた。

でも、棒が上がらない。

時間にしたら1、2分だったと彼は言う。街灯に照らされた踏切は開かなかった。

酔いと睡眠不足から来る苛立ちで、彼は

「ちょっと、俺が上げちゃうから、車通しちゃってよ」

と運ちゃんに声を掛け、踏切に向かった。

そして棒に手を掛け、上に上げようとした。しかしビクともしない。

いや、少しは持ち上がるのだが、ある程度の高さまで上がると、バネ仕掛けのように急に下への力が増す。

悪戦苦闘していたら、タクシーのクラクションが聞こえた。

『運ちゃん、苛ついて怒ってるんだ…』

彼はタクシーに向かって振り向いた。

すると、運ちゃんがタクシーから身を乗り出し、凄い勢いで手招きをしている。

彼は『こりゃ、ここで帰るって言いたいんだな…』と解釈し、踏切の棒の下に肩を差し入れて何とか上げようとした。

すると、

「お客さん!」

と運ちゃんの上ずった声。

そっちを見ると、もうタクシーから降りて凄い勢いで手招きをしている。

彼は、

「何? 警察でも来た?」

と言いながら、タクシーの方へ歩いて行った。

運ちゃんは、

「とにかく、乗って、乗って!」

と急かすように言いながら、自分も席に乗り込んだ。

「何? マジでお巡りさん? 見られた?」

彼は愛想笑いしながら聞いたそうな。

で、運ちゃんが答えたのが、

「お客さん、見えてなかったんだ…。

いやね、お客さんが踏切に行ったから、てっきり棒にぶら下がってる男の子を注意しに行くんだと思ってたんですよ。

でもね、何も言わないで棒を上げようとしてるでしょ。おかしいなあと…。

そしたらね、その男の子、お客さんの方に近付いて行ったんですよ。

そしたら、影、無いんですよ、その子。

もうね、私ヤバいと思って…。

だってね、お客さんの足を掴もうとしてたんですよ…」

今も偶に、夜中にそこを通る事があるそうだ。

でも閉まりっ放しの踏切を見た時は遠回りをして帰る事にしていると、彼は苦笑しながら言った。

関連記事

少年と祖母

今年33歳になるが、もう30年近く前の俺が幼稚園に通っていた頃の話です。 昔はお寺さんが幼稚園を経営しているケースが多くて、俺が通ってた所もそうだった。今にして思うと園の横は納骨…

イタコ

以前、北東北の寒村に行った際にお寺のご住職夫人から聞いた話。 恐山のような知名度はないんだけど、彼の地にも古くから土着のイタコがいたの。 今も出稼ぎがある地だから推して知る…

煙草を持つ手(フリー素材)

マイルドセブン

先月、仕事で千葉のホテルに一週間ほど滞在した。そこは普通のビジネスホテルで、滞在2日目の夜の事。 タバコが切れたので階に設置されてる自販機で買おうと部屋を出て、自販機の所まで来た…

ヨット(フリー写真)

赤い目

親父が酒の席で怖い話となると毎回話す体験談を一つ。 今から25年程前、親父が30代前半の頃の話。 ※ 親父はヨットが趣味なのだが、当時はまだ自分のヨットを持っておら…

山(フリー写真)

炭鉱跡の亡霊

小学5年生の時に体験した話。 当時は学校が終わってから友達4人で、よく近所の炭鉱跡の山で遊んでいた。 山の中腹の側面に大きな穴が開いていて、覗くと深さは5メートル位だった。…

落ちるおじさん

先日、大学の同期の友人と久々に食事した時の話。 友人は大阪に出て技術職、私は地元で病院に就職しましたが勤めている病院は古く、度重なる増改築で構造はぐちゃぐちゃ。 たまに立ち…

古い一軒家(フリー写真)

黒く塗り潰された家

昔、今とは別の仕事をしていた時の事。 その日はいつも居る支店とは違う支店エリアでの営業で、渡された地図を片手に歩きながら、飛び込み営業の仕事だった。 目的のエリアに着いて『…

廃墟(フリー写真)

廃病院での肝試し

会社の先輩のIさんに聞いた話。 先輩が大学一年の時に、仲の良いサークル仲間四人で肝試しに行くことになった。 市街地から少し離れた所にある廃病院。お化けが出ると結構有名な所だ…

古民家

不吉な予兆

熊本県に根を持つ我が母の実家について語ります。この家は、長年母の姉が住む家でしたが、彼女が先日訪れた際の出来事があります。 我々が家族で集まり、映画『ターミネーター2』の壮絶な…

宿直の夜

俺は東北の港近くで工場勤めをしていた。 県名は書けないけど、被災地で津波が来たとだけ書いとく。 でも工場は、奇跡的に10〜15センチほど水没しただけだったんだよね。だから1…