見えない恋人

公開日: ほんのり怖い話 | 笑える怪談

13222284384_e5987886b0_b

大学生時代、同じゼミにAと言う男がいました。

Aはあまり口数の多い方ではなく、ゼミに出席しても周りとは必要なこと以外はあまり話さず、学内にも特に親しい友人はいない様子でした。

ある日、そのAが話しかけてきました。

Aが話した内容は、「好きな人が出来たのだが、どうすればいいのか?」ということでした。

そんなことを、あまり親しくない上にどう見ても女性経験が少なそうな僕に話してくるのも不自然な気がして、からかっているのかと少し疑いましたが、彼の話ぶりは真剣で、とてもそのようには見えませんでした。

話を聞いてみると、彼が好きな人と言っていた女性とは話したこともなく、道ですれ違うだけの仲なのだそうです。

女性経験の少ない僕でも、とりあえず話し掛けてみないことには進展しない事は分かりますので、「話しかけてみたらどうか」と言うことを伝えました。

するとAは「何を話せばいいか?」「話すタイミングがつかめない」等のことを質問し、それに対する僕の答えを全てメモしていました。

次の週のゼミの時間に、Aは再び僕のところへ来て、「今日、話し掛けてみる」と言いました。

僕は、Aが好きになった女性がどんな人なのか見てみたいと思いました。

そこでAに「話が途切れたら、僕が場を持たす」と言うと、喜んで一緒に行くことに同意してくれました。

その女性は、いつも夕方17時くらいに決まった道を通るということでしたので、Aとその道で待つことにしました。

その道は住宅地を通っている一本道で、入って待つことが出来るような店もなく、僕とAは路上でぼーっとその女性が来るのを待っていました。

17時を少し回った頃でした。Aは「来た」と呟くと少し歩き、僕の話をメモした内容通りのことを話し始めました。

話は何とか繋がっているらしく、僕が場を持たす必要もなさそうでしたので、その場を離れることにしました。

正確に言うと、早くその場を立ち去りたかったのです。

僕には、Aが話している相手が見えませんでした。

Aは、何もない空間に向かって話し掛けているようにしか見えなかったのです。

その後もAは普通にゼミに出席してきました。

ただ、少し口数が多くなり明るくなった感じがしました。

他のゼミ生が彼に「彼女でもできたのか?」と聞くと、嬉しそうに「一緒に暮らしている」と答えていました。

「どんな娘?」と言う質問には、照れくさそうに「S(僕のこと)が見たことある」と答えていました。

未だに僕は、Aにからかわれていたのか分からないでいます。

関連記事

キャンプ場

少女のお礼

この話は僕がまだ中学生だった頃、友人の家に泊まりに行った時に聞いた話。友人と僕が怪談をしていると、友人の親父さんが入って来て、「お前たち幽霊の存在を信じてるのかい? 俺…

睡魔

手術を受ける事になり入院。その手術の前日、深夜。私は病室の一番端のベットで寝ていたが、何か異様な気配を感じて目を開けた。ベッドと壁の間からわらわらと何本もの手がのびてき…

雑炊

妻の愛

ようやく笑い飛ばせるようになったんで、俺の死んだ嫁さんの話でも書こうか。嫁は交通事故で死んだ。ドラマみたいな話なんだが、風邪で寝込んでいた俺が夜になって「みかんの缶詰食…

抽象模様(フリー素材)

魑魅魍魎

今から2年くらい前の夏。会社が夏休みで、連日ベッドの上でマンガを読みながらゴロゴロ昼寝をする毎日でした。その日もいつものようにマンガを読んでいる内に眠ってしまった。 …

良い心霊写真

写真店のご主人から聞いた話ですが、現像した写真におかしなものが写り込む事は珍しくなく、そういったものは職人技で修正してお客さんへ渡すそうです。このご主人ですが、一度だけ修正せず…

アイヤー!ホイヤー!

中学生の頃、良く家に遊びに来てた友達の口癖が「アイヤー!ホイヤー!」だったんだけど。ある日、いつものようにそいつが家に遊びに来てたわけ。アイヤーホイヤー言いながら(笑)…

オオカミ様の涙(宮大工6)

ある年の秋。季節外れの台風により大きな被害が出た。古くなった寺社は損害も多く、俺たちはてんてこ舞いで仕事に追われた。その日も、疲れ果てた俺は家に入ると風呂にも入…

山道(フリー写真)

やまけらし様

俺の家は物凄い田舎で、学校へ行くにも往復12キロの道程を自転車で通わなければならない。バスも出ているけど、そんなに裕福な家でもないので、定期を買うお金が勿体無かった。学…

祖母のしたこと

私の一番古い記憶は3歳。木枯らしの吹く夕方、一人でブランコを漕いでいるところ。手も足もかじかんで、とても冷たい。でも今帰れば母に叱られる。祖母に迎えに来て欲しい、ここはいつも来…

先輩、お願いしますよ

何年も前の話だけど。ある会社の社員寮に入っていたんだが、夏の終わり、その年の新規採用者のうち4人が海水浴に行き、2人が波に飲まれて死んでしまった。正確に言うと、波に飲ま…