逃げられると思ったのか

公開日: ほんのり怖い話

SamsaraNew3

勉強もできず、人とのコミュニケーションも下手。

こんな僕は、誰にも必要とされていないんだろう。

家では父のサンドバッグ。暴力はエスカレートして行く。

とても悲しかった。

「逃げられると思ったのか」

家出をしても、すぐに見つかった。いつもの倍殴られた。

とろい僕が悪いんだ。

妊娠している母は、姉と楽しそうに話しながら夕食を作っていた。

こんな辛い生活も、今日で最後だ。

意識が徐々に薄くなっていく。

こうすることを、望んでいたんだろう。みんなが、僕が…。

ああ、死んでやるさ。お望みどおりな!

数ヵ月後―

「元気な男の子です!」

おじさんっぽい声がそう言った。

僕は悲しくもないのに、大声で泣いている。

ゆっくり目を開けると、男と女が僕を見つめていた。

どこか懐かしい人達。

男は優しい声で言った。

「逃げられると思ったのか」

関連記事

竹藪(フリー写真)

佐々間のおばちゃん

子供の頃は両親が共働きだったので、うちには幼い俺の世話をする『佐々間のおばちゃん』という人が居た。おばちゃんはちょっと頭が良くなかったせいか仕事は持たず、自分ちの畑とうちのお手…

百物語の終わりに

昨日、あるお寺で怪談好きの友人や同僚と、お坊さんを囲んで百物語をやってきました。百物語というと蝋燭が思いつきますが、少し変わった手法のものもあるようで、その日行ったのは肝試しの…

枝に積もる雪(フリー写真)

おじいさんの足音

母から聞いた話です。結婚前に勤めていた会計事務所で、母は窓に面した机で仕事をしていました。目の前を毎朝、ご近所のおじいさんが通り、お互い挨拶を交わしていました。…

星を見る少女

夜、アパートに住んでいる青年がふと外を見ると、向かいのアパートのベランダに人がいる。背格好からすると少女だろうか。少女はどうやら、空を見上げているらしかった。なんとなく…

雨(フリー素材)

天候を操る力

小学生の頃だったか。梅雨の時期のある日、親友の友人という微妙な関係の子の家に遊びに行った。その親友と一緒に。そこで三人でゲームなどをして遊んでいたら、あっという間に帰る…

ある蕎麦屋の話

JRがまだ国鉄と呼ばれていた頃の話。地元の駅に蕎麦屋が一軒あった。いわゆる駅そば。チェーン店ではなく、駅の外のあるお蕎麦屋さんが契約していた店舗で、『旨い、安い、でも種…

隣の女子大生

貧相なアパートに暮らす彼の唯一の楽しみは、隣に住む美女と語らうひとときだった。ただ、一つだけ腑に落ちない点が…。当時、彼の住むアパートは、築30年の6畳一間で、おんぼろ…

女性のシルエット(フリー素材)

赤の他人

俺は物心付いた時から片親で、父親の詳細は判らないままだった。俺は幼少期に母親から虐待を受けていて、いつも夕方の17時から夜の21時まで家の前でしゃがみ込み、母親が風呂に入って寝…

妖怪カラコロ

専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時の話。ある日の午前1時頃に駐車場の掃除をしていると、道路を挟んだ向こう側の方から何か乾いた物を引き摺るような、「…

蛇神様の奥宮(宮大工3)

お稲荷さま騒動から3年ほど経った晩秋の話。宮大工の修行は厳しく、なかなか一人前まで続く者は居ない。また、最近は元より、今から十年以上前の当時でも志願してくる若者は少なか…