もっさん

公開日: ほんのり怖い話

1a6ede67f98cbbab9d481885652a5874

うちの病院のカテーテル室(重症の心臓病患者の処置をする場所)には、もっさんと呼ばれるものが出る。

もっさんは青い水玉模様のパジャマを着ており、姿はぼさぼさ頭の中年だったり、若い好青年だったり、痩せた女だったりと様々。

共通点は、

・部屋の隅でうつむいて立っていること
・同じパジャマを着ていること
・なにも喋らないし動かないこと
・気が付くと現れ、気が付くと居なくなっている
・その場にいる全員に見える
・もっさんが出たとき、処置中の患者は後日必ず亡くなる

亡くなった患者の処置の全例に現れているわけではなく、もっさんの現れた処置の患者は必ず亡くなるってことね。

処置が成功してもなぜか予後が悪い方へと向かってしまう。

もう随分前から、もっさんは目撃されているらしい。

お祓いの類は何度か試みたらしいがまるで効果がないらしい。

年に3、4回しか現れないが、うちの科の先生やスタッフはみんな知っている。

処置中、もっさんが出てもみな反応せずに黙っている。

ビビるのは新人ナースくらい。

若い先生なんかはもっさんを見るとひどく落ち込んでしまうらしいが、部長先生だけはもっさんが出ても諦めない。

誰よりももっさんの姿を見ているはずなのに、このジンクスを信じていない。

もっさんに魅入られた患者をなんとか救えないかと、部長先生は闘い続けている。

関連記事

京都のお寺(フリー写真)

ミルクキャラメル

小学1年生の頃、よく自分の家のお墓があるお寺で一人遊んでいた。 池の鯉を見たり、お寺に飼われていた猫のミケと遊ぶのが楽しかった。 じいちゃんのお墓参りをして、周りに生えて…

柿の木(フリー写真)

招かれざる客

いきなりだが、俺には全く霊感が無い。 その俺が先日仕事で、地元では結構有名らしい幽霊屋敷へ行くことになった。 俺はその地域には疎いので全く知らなかったのだが、 『以前…

長袖の下に

小学校の時に転校してきた奴で、少し変わった奴がいた。 家はやや貧乏そうで、親父さんがいないみたいだった。 お袋さんは2、3回見たことがあるけど優しそうで普通に明るい人だった…

年賀状をくれる人

高校生の時から今に至るまで、十年以上年賀状をくれる人がいる。 ありきたりな感じの干支の印刷に、差出人の名前(住所は書いてない)と、手書きで一言「彼氏と仲良くね!」とか「合格おめで…

アンティークショップ(フリー写真)

手裏剣と怪異

今から11年前の話です。 当時勤務していた会社の先輩で、何となく『そりが合わないな…』と感じる女性がいました。 新人だった私には親切にして下さるのですが、どこか裏があるよ…

郵便受け

『Y』

ある日、私の一人暮らしのアパートの郵便受けに『Y』という名前が汚く鉛筆で書かれていた。 私の苗字のイニシャルは『Y』ではない。 不思議に思ったが、いちいち私の部屋の3階か…

見えない壁

数年前の話。 当時中学生だった俺は雑誌の懸賞ハガキを出すために駅近くの郵便局に行く最中だった。 俺の住んでる地域は神奈川のほぼ辺境。最寄り駅からまっすぐ出ているような大通り…

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…

コンビニ

消えたフリーター

学生時代、特に夏の間は時間がたっぷりあることから、色々なアルバイトに挑戦していました。 夏休みのある日、友人から「内装の軽作業」のバイトを勧められました。新しいスーパーが田舎町…

星を見る少女

夜、アパートに住んでいる青年がふと外を見ると、向かいのアパートのベランダに人がいる。 背格好からすると少女だろうか。少女はどうやら、空を見上げているらしかった。 なんとなく…