変わった妹

公開日: ほんのり怖い話

wallpaper244_640_1136

高校生の頃、いつも喧嘩してた妹がいた。喧嘩といって他愛もない口喧嘩で、ある程度言い合ったらどちらかが自然と引く。

ニュースであるような殺傷事件には到底至らないような、軽い喧嘩だった。

高校3年の春だった。成績が凄く落ちてて、志望校に合格するのが危うかった。

そのせいで親の風当たりがきつく、テストが悪い時なんか、1人だけご飯のおかずがニボシだけなんてこともあった。

追い込まれていたからか、妹のいつもの態度がやけにイライラしてくる。

何を言われたかは覚えてないが、カッとなって妹にテレビのリモコンを投げた。リモコンは丁度妹の後頭部に直撃。妹は頭を抑えて倒れた。俺は焦った。

死んだのか? とりあえず近づいて確認。脈をはかると死んではいないよう。でも気絶してるから病院にいったほうがいい。

そう思ったのだが、俺に辛くあたる母にこの事がバレたらどうなるかわからない。

俺は気絶したままの妹をそのままソファーに寝かせ、2階に上がった。

次の日、妹に何て謝ろうかと思って2階から降りていくと、妹は普段どおり朝飯を食べていた。どうやら怒ってはいないようだ。

昨日の事を申し訳なく思っていたのか、久しぶりにこちらから声をかけた。すると全く反応しない。

やはり怒ってるのだろうか? そう思ったんだが、今考えると、怒っていただけの方がよかったんだ。

妹は、その日から性格が変わってしまった。学校から帰ってくると、いつも友達と遊びに行ってたのに、学校にいく以外部屋から全く出なくなった。

そして、家族内で会話をしないようになった。親父が「わざと無視でもしてるのか」と問い詰めた時があった。それでも妹は、全く無表情で通した。

妹が喋らなくなって1ヶ月。親父とお袋が俺を呼んだ。

「お前何かしたのか?」
そう聞かれた。

「何を?」
と聞き返すと、なにかいいにくそうなのだ。親父はこう考えた。

妹は何か凄く落ち込む事があった。でもそれは人に話せるような事じゃない。だから喋らないと。つまり、俺が性的虐待をしたと思ったのだ。

なんとか疑いを晴らすことはできた。だけど、妹をああいう状態にしたのは俺なのだ。

やり方は違えど原因は俺なのだ。なんとか妹に、元に戻ってもらおうと思った。

次の日、学校から帰ってきた俺は、妹の部屋にいった。妹はまだ家に帰ってきてない。

帰ってきた後だと部屋に鍵をかけて出てこないので、今しか部屋に入る機会がないのだ。

妹の部屋は、喋らなくなる前と代わりがなかった。もし壁中黒塗りなんて事になってたら、俺は泣こうと思っていた。

本当に最悪なんだが、俺は妹の胸中を知るため、妹の日記帳を探した。妹が幼い頃から日記をつけていたのを俺は知っていた。

机の上にある簡易本棚の中から日記帳を取り出し、中身を見た。

日記帳をパラパラめくると、とくに異常はない。だが、ページ数が半分くらいになった時、妙なページが見えた。

俺はそこをよく見た。そのページから先のページは、妹の字ではない、とても大きくて、歪んだ字の羅列だった。

よく見ると、その字はちゃんとしたひらがなだったが、文章が意味不明だった。

例えば、“だいこんはかえるにくつしたさえしいたけ” こんな感じの文が数十ページ続いていた。俺は妹の脳を損傷させたんだと思った。凄く後悔した。

妹に悪いことをしたという気持ちも大きかったが、俺は刑務所に入れられるんだなと思ったからだ。

半泣きで頭をかきむしっていると、後ろに誰かいる事に気づく。振り返ると、そこには妹が立っていた。

妹は、全くの無表情だった。夕方で電気をつけてなかったから、無表情の妹の顔が真っ黒だった。

妹は何もいわずに、ゆっくり部屋に入ってきた。俺は後ろにさがった。

妹はカバンを机の横にかけると、俺が部屋に入っていることが不快なのか、俺の方向を見たまま静止した。

あせりつつもなんとか頭を整理した俺は、妹に土下座で謝ろうと思った。なにも返事はしてくれないだろう。でも、土下座をしなければ俺の罪悪感が納まらなかった。

土下座をしようと、中腰になろうとした。その時、妹が物凄い速さで俺の腕にしがみついた。一瞬何をしたのかわからなかった。

その勢いで妹は、そのまま部屋から出て行った。俺は唖然としつつ、右手に持っていた妹の日記が奪われた事に気づいた。

妹はその日の夜、姿をくらました。現在も妹は家に戻らない。

関連記事

シロ

じいちゃんが亡くなって、じいちゃんの唯一の財産とも言える3つの山を5人の子供で分配するという話になった時のこと。 兄弟のうち4人は「山の一つには昔飼っていたシロという犬のお墓があ…

いつもの男性

オカルトではないかもしれませんが実体験話を一つ。 数年前に大学を卒業して某証券会社に就職しまして、福岡に赴任していた時の話です。 会社の借り上げのマンションが市の中心部にあ…

女性のシルエット(フリー素材)

赤の他人

俺は物心付いた時から片親で、父親の詳細は判らないままだった。 俺は幼少期に母親から虐待を受けていて、いつも夕方の17時から夜の21時まで家の前でしゃがみ込み、母親が風呂に入って寝…

夕日(フリー写真)

歳を取らない巫女様

昔住んでいた村に、十代の巫女さんが居た。 若者の何人かはその人のお世話をしなければならず、俺もその一人だった。 その巫女さんは死者の魂が見えたり、来世が見えたりするらしかっ…

抽象模様(フリー素材)

魑魅魍魎

今から2年くらい前の夏。 会社が夏休みで、連日ベッドの上でマンガを読みながらゴロゴロ昼寝をする毎日でした。 その日もいつものようにマンガを読んでいる内に眠ってしまった。 …

目(フリー素材)

犯罪者識別能力

高校の時の友達に柔道部の奴がいて、よく繁華街で喧嘩して警察のお世話になっていた。 そいつは身長185センチで体重が100キロという典型的な大男。名前はA。 性格は温厚で意外…

満タンのお菓子

私の家は親がギャンブル好きのため、根っからの貧乏でした。 学校の給食費なども毎回遅れてしまい、恥ずかしい思いをしていました。 そんな家庭だったので、親がギャンブルに打ち込ん…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

幽霊と…

5年ぐらい前、地方都市でホステスをしていた時の話。 一緒に働いている女の子で、自称霊感の強いMちゃんという子がいた。 最初は信じていなかったのだが、Mちゃんが「明日は外出し…

狐(フリー画像)

狐の加護を受ける家系

自分の家には、呪いと言うよりは加護みたいなものがあるらしい。 その内容は、何故か取引相手や仕事仲間が事故に遭わなくなったり、病気が治ったり出世したり、良縁に恵まれたりするというも…