桂の木

公開日: ほんのり怖い話

切り株(フリー写真)

亡き母は勘が良い人だったたけに、色々と不思議で恐い話があります。

母方の祖母が大事にしていた桂の大木が庭にあったのですが、増築する為にその木を切る事になってしまいました。

最後まで祖母は桂の木を切る事に反対していました。あの木は家の守り神だから切ってはいけないと。

しかし祖父の独断により、根元から切り倒されてしまったそうです。

それから一ヶ月も経たない間に突然、祖母が狭心症の発作で病院に運ぶ暇なく死亡。

その葬式の夜、母が周り廊下の桂の木あった場所が見える所に、死んだはずの祖母が佇んでいるのを目撃。

祖母は切られた桂の木があった場所をずっと指差し、

「桂…植えろ」

と、母が肯くまで繰り返し呟いていたとか。

早速祖母の制止を押し切り、母が桂の苗木を植えました。

それから数年後。

第二次大戦の本土攻撃により、軍需工場の近くだったせいか数多くの焼夷弾が落とされ、焼け野原となってしまったのですが…。

桂の木の根元に埋めておいた非常食の生米だけは、何故か炭にもならず残っていたとか。

そのお陰で終戦前後、家族が食い繋ぐことができたのだと聞かされました。

桂の大木を切った事が祖母の急死を招いたのか。桂の大木に精霊(家の守り神)が宿っていたのか。

誰にも分かりませんが、まだ生存している叔父などは、今は大きく成長した桂の木に畏敬の念を持って大切にしているようです。

そして不思議なことに、最初に切られた桂の切り株と後から植えた桂の木は今、根元で一つに溶け合って成長を続けているようです。

関連記事

地獄のバス

小学校の修学旅行でのことだった。 我々は一路目的地を目指してバスに乗り込んだ。 席も隣同士だった。少しテンションの高すぎる彼に閉口しながらも、バスの旅は快調に進んで行った……

少女

喋れない幼馴染

少し長くなりますが、実体験を書き込みます。 俺がまだ小学生の頃、家の隣に幼馴染A子がいた。A子は喋ることができなかった。 生まれつき声帯が悪かったらしい……。更に、ここでは…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。 住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。 子供が遊んでいることは滅多にない。と…

渓流(フリー写真)

一人で泳ぐ男の子

去年の梅雨の終わり頃、白石川に渓流釣りに行った時の事。 午前4時くらいに現地に到着し準備を終え、さあ川に入ろうとした時に、川の方から子供の声が聞こえるんです。 薄明るくなり…

おかめの面

出張で東北の方へ行った。 仕事の作業が完了した時には、帰りの新幹線に間に合わない時間になっていた。 宿泊費は自腹になるので、安いビジネスホテルを探してチェックイン。 …

寝室(フリー背景素材)

ムシリ

私の家系の男は全員『ムシリ』という妖怪が見える。 正確には、思春期頃に一度だけ会うものらしい。 おじいさんの話だと、夜寝ていると枕元に現れ、家系の男の髪の毛を毟り、食べるの…

お酒(フリー写真)

悪夢を見せる子守唄

もう時効だと思うから投稿します。 うちには代々伝わる『相手に悪夢を見せる子守唄』というものがある。 何語か判らないけど、詩吟などに近い感じで、ラジオ体操の歌ぐらいの長さの…

金色の金魚(フリー写真)

浮遊する金魚

小学2年生くらいまで、空中を漂う金色の金魚みたいなものが見えていた。 基本的には姉ちゃんの周りをふわふわしているのだけど、飼っていた犬の頭でくつろいだり、俺のお菓子を横取りしたり…

少年のシルエット(フリー素材)

かっこいい除霊

高校の時、クラスに虐められている訳じゃないけどいじられ系のAという奴が居た。 何と言うか、よく問題を当てられても答えられず、笑われるような感じ。 でも本人はへらへら笑ってい…

デジタル(フリー素材)

Aの理論

何年か前、友人二人と夜中にドライブをした時の話。 友人Aはガチガチの理系で、 「物を見ると言うことは、つまりそこに光を反射する何らかの物体が存在する訳で、人の目の構造上、特…