二つの人影

登山(フリー写真)

友人に山岳部のやつが居る。そいつが何処だか忘れたが、結構有名な日本の山に部員と登った時の話。

ちょうど山の中腹まで登った頃に濃霧が立ち込めて来て、他のメンバーとバラバラになってしまった。

取り敢えず目標の山小屋まで行こうと思い、登って行ったらしい。

しかし友人は何度もその山を登った事があるのに、完全に迷ってしまったとか。

そうこうしていると、濃霧の向こうから人影が二つ見えて来て、他の部員かと期待が高まった。

だが全然関係ない一般客(おばさん二人)で、どう見ても本格的な感じがしない。

そんなおばさん二人に尋ねるのも癪だと考えた友人は、そのおばさん二人の脇を素通りしようとしたらしい。

その時、おばさん二人が友人に

「この先は危ないから行っちゃダメだよ」

とだけ言って、また濃霧に消えて行ったそうです。

確かに濃霧で視界が悪いため、闇雲に移動するのはよそうと考えた友人は、そこで暫く岩に腰を掛けて休んでいました。

すると濃霧の向こうから友人を呼ぶ部員達の声がして、やっと一安心。

それから何とか山小屋に着くことが出来、疲労困憊の友人はぐっすり眠ったらしい。

だがその晩、酷い雷雨が訪れ、深夜に友人は目が覚めた。

もう一度眠りに就こうとした時、誰かが枕元に立っているような気がして、一度閉じかけた目をもう一度開いた。

そこには暗闇が広がっており、何も見えない。

すると雷が光り、暗闇から出て来たのは、今日友人に警告したあのおばさん二人。

一瞬だがはっきりと、友人にはおばさん二人の顔や身体がぼろぼろだということや、手が不自然な方向に曲がっているということが分かったという。

それを見てから、次の日の朝に他の部員に起こされるまで、友人は意識が飛んだ。

そして下山後、俺にこの話を打ち明けてくれた。

俺に話し終わり、友人が一言。

「よく考えれば『この先行っちゃダメだよ』と言われたけど、おばさん二人とも『この先』から来たし、警告してから消えて行った方向も同じだった」

関連記事

古いキーボード

あの世からの最後のメール

この話は7年前の出来事です。 当時、インターネットはまだ普及しておらず、私はパソコン通信を利用していました。 クローズドの掲示板のような場所で仲良くなった人たちと、オフラ…

田舎の風景(フリー素材)

おごめご様

おごめご様というのがいると、従妹から聞いた。何でも小学校に出るらしい。 その小学校には俺も通ったんだが、旧館と新館に分かれている。 その二つの棟を繋ぐ渡り廊下の側、植え込み…

峠(フリー写真)

夢の女と峠の女

俺は幽霊は見たことがないのだけど、夢とそれに関する不可思議な話。 中学3年生くらいの頃から、変な夢を見るようになった。 それは、ショートヘアで白いワンピースを着た二十代くら…

精神病棟では、病状の軽度により、週末など決まった期間自宅に帰るのを許される患者もいる。 毎週末に外泊を許されていたA氏(50代男性)。日々その時を待ち侘びていたそうだ。 週末、A氏は家…

踏み入るべきではない場所

私がまだ小学校低学年の幼い子供だった頃、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。 「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」と、きちんと前置きをしてからです。 特…

河原(フリー写真)

同じ夢

これは四つ下の弟の話。 当時弟は小学4年生、俺は中学2年生、兄貴は高校一年生だった。 兄貴は寮に入っていたから、家に帰って来ることは殆どなかった。 俺は陸上部に入っ…

綺麗に揃えられる靴

小学校の頃、近所にお化け屋敷と言われている家があった。 まあ、実際は屋敷という程でもない少し大きめな日本家屋なんだが、小学生の言うことだしな。 その日は両親共に帰宅が遅くな…

椅子(フリー写真)

おかんの夢

おかんが癌で亡くなって6年になる。 癌を見つけた時にはもう余命一年の宣告。 親父と相談の上、おかんには告知しなかった。一年間、騙し続けた。 私はその時、二番目の子供を…

住宅(フリー写真)

苦労かけるな

夜に2階の自室で、一人で本を読んでいた時のこと。 実家は建てた場所が悪かったのか、ラップ現象が絶えなかった。 自分は単に家鳴りだと思っていたのだが、その日はポスターから音が…

手を繋ぐ親子(フリー写真)

おとうさん、こっち!

お隣に、両者とも全盲のご夫婦が住んでいらっしゃいます。 この話は、ご主人から茶飲み話に伺ったものです。 ※ ご主人は16歳の時に、自転車事故で失明されたそうです。 当然…