触れてはいけないもの

公開日: ほんのり怖い話

襖(フリー写真)

田舎に泊まった時の話。

私の田舎は米農家で、まあ、田舎独特のと言えば宜しいでしょうか。

とても大きな家で、従兄弟が集まる時は一家族に一部屋割り当てていました。

私がいつも使う部屋は、仏壇のある部屋の隣。

襖で仕切らているだけです。特に怖いということは無かったのですが。

ある夜のことでした。

部屋の時計は止まっていたので時刻は覚えておりませんが、午前0時は回っていたと思います。

ふと目が覚めてしまったのです。

何も変わったことは無かったのですが、暫く目を開けて天井を眺めていました。

そしてふと横に目をやると、仏間を仕切る襖に何かのシルエットが見えました。

不思議と怖くはありませんでした。好奇心が勝っていたのでしょうか。

私はそのシルエットが大変気になり、正体を確かめようと思い襖に手をかけました。

すると、私の姿が見えるはずのない祖父が突然「だめだーっ!」と叫びました(祖父は別の部屋に居ます)。

あまりの大声に驚いたのですが、同じ部屋で寝ている両親は起きる気配がありません。

寝言だろうと思い、また襖に手をかけました。

すると再び「だめだと言ってるだろう!」と、物凄く激しい口調で叫びました。

流石に私も怖くなり、急いで布団を被りました。

祖父の声はそれ以降聞こえませんでしたが、シルエットは寝るまで消えませんでした。

赤く発光したり、姿を様々に変えたりしながら。

翌日、祖父にそのことを聞いてみると、祖父は変な夢を見た事を話してくれました。

「何を見たかは覚えとらんよ。ただ、お前が何かに手をかけていたから」

「何か、って?」

「分からん。とにかく、触っちゃならんものだ」

本当にそれが何か分からなかったそうです。

もし私がそれを覗いていたら、どうなっていたのでしょうか…。

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