不可解な手の出現

公開日: ほんのり怖い話 | 心霊体験

バス

都市部の朝のバスはいつも通り混雑していました。

毎日の通勤ルーチンの一部となっていたこの時間、私は特定の席を選ぶ習慣がありました。

なぜなら、運転手のすぐ後ろの席からの視界が好きだったからです。

その日も、運転手の背後にある席に座りました。

私の左前方には、明るい色のスカートをはいたお姉さんが立っており、彼女は前方を見つめていました。

彼女の後姿、そして周りの乗客たちの様子が一望できる位置でした。

しばらくは何も異変はなく、ただの通勤の一コマとして過ぎていく時間でしたが、次の停留所に近づいた時、不可解な出来事が起こりました。

私は、お姉さんの腰の辺りを触る『手』を目撃しました。

その手は、お姉さんのスカートをさわさわと動かしていました。

私は瞬時に考えました。「あれは痴漢の手だ!」

しかしその次に感じた驚きは、その『手』の主が見当たらないことでした。

周囲を見渡すと、お姉さんの近くに立っているような人は誰もおらず、しかも停留所に到着したため、多くの人がバスから降り始めていました。

そして、一番気になったのは、その『手』が私に気づいたのか、私の視線を感じ取ると急に引っ込められたことでした。

それはまるで、何者かが私にその行動を見られたくなかったかのように感じられました。

その後、私はその事を運転手に伝えましたが、彼も驚きの表情を浮かべ、特に異変はなかったと語りました。

この出来事は、その日の私の中で大きな謎として残りました。

何日か後、同じバスに乗ったとき、同じお姉さんに再び出会いました。

彼女にその日の出来事を尋ねると、彼女もまた同じ『手』を感じていたことを明かしました。

しかし、彼女もまたその『手』の主を確認することができませんでした。

話を聞いている間、私たちはお互いに恐怖を感じながらも、その不可解な出来事に対する興味を共有しました。

その後、私たちはそのバスの過去について調査することにしました。

調査の結果、そのバスのルートには昔、ある事件が起きていたことを知ることになりました。

それは、数年前にそのバスで痴漢事件が起こり、加害者がその後行方不明になったというものでした。

私とお姉さんは、その『手』がその事件に関連しているのではないかと考えました。

しかし、確固たる証拠は見当たらず、結局真相は不明のままでした。

今でも、そのバスに乗るたびに、私はその不可解な『手』の出現を思い出します。

そして、その事件の真相や、その『手』の主の正体について、私はいつか解明したいと思っています。

関連記事

枝に積もる雪(フリー写真)

おじいさんの足音

母から聞いた話です。 結婚前に勤めていた会計事務所で、母は窓に面した机で仕事をしていました。 目の前を毎朝、ご近所のおじいさんが通り、お互い挨拶を交わしていました。 …

神秘的な山(フリー素材)

山の少年

中学時代、夏休みを利用して友達と川釣りに行こうという話になりました。 夜中の午前3時頃に集合し、市街地から自転車をひたすら漕いで約3時間、目的の川に到着しました。 ※ 早速、…

山(フリー写真)

一つ目のおじちゃん

子供の頃、家族で山に行ったことがある。 山に着いたのはまだ朝方で、霧が辺りを覆っていた。 僕は親の言い付けを守らず、一人で山中に歩き入り、当然のように迷子になってしまった。…

おかあさんといっしょの都市伝説 – 2 –

『おかあさんといっしょ』は50年以上続く子ども向けの教育番組だ。 歴史が長いだけに、都市伝説も数多く存在する。今回はその一つをご紹介しよう。 1993年より体操のお兄さんと…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。 田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

肝試し

高2の夏休み。霊の存在を否定していた友達が、出ると評判の廃屋に1晩1人で泊まることに。 昼間、下見をしてあまりにも汚いので寝袋を用意。晩飯の後、廃屋の前で別れたのがそいつを見た最…

郵便受け

『Y』

ある日、私の一人暮らしのアパートの郵便受けに『Y』という名前が汚く鉛筆で書かれていた。 私の苗字のイニシャルは『Y』ではない。 不思議に思ったが、いちいち私の部屋の3階か…

犬(フリー写真)

愛犬の不思議な話

小学生の頃、ムギという名前の茶色い雑種犬を飼っていた。 家の前をウロウロしていたのを父が拾ったのだ。その時は既に成犬だった。 鼻の周りが薄っすらと白い毛に覆われていたので、…

和室(フリー写真)

白い顔

俺は4歳になるまで、夜はばあちゃんの家に預けられていた。 夜はばあちゃんと並んで寝るんだけど、その部屋に亡くなったじいちゃんの仏壇があったんだ。 夜中に目が覚めたりすると、…

民家

さしあげますから

もう10年以上前の大学時代の事。 当時、実家の近所にある小さな運送会社で、荷分けやトラック助手のバイトをしていた。 現場を仕切っていたのは、社長の息子で2つ年上の若旦那。 …