友達だよな
ある日、数人の大学生が飲み会をしていた。
彼らは全員高校の時からの友達同士で、話題には事欠かなかった。
そして段々と盛り上がって来て、ちょっと肝試しに行こうという話になった。
男の一人が車を運転し、幽霊が出るというトンネルへ向かった。
※
トンネルの周りには、その歴史を感じさせるように、ツタが無数に生えていた。
一同は車を降り、写真などを撮ってトンネル内を散策した後、再び車に戻った。
しかし全員が乗り込んでいるにも関わらず、何故か車が発進しない。
運転席以外の男以外は、
「どうして出さないんだよ~」「早くしろよ~」
など文句の言い放題。
普段は反撃して来る運転席の彼も、何故か黙ったままで微かに震えている。
そして口を開いた。
「俺たちさ……友達だよな……」
急に変なことを言い出すものだと思ったが、
「当たり前でしょ?」「そうだよ、友達じゃん」
と答えた。
「じゃあさ、俺の足元、見てくれないか…?」
他の者たちが彼の足元を覗き込むと……。
車の底から生えた二本の白い手が、彼の足をがっしりと掴んでいた。
三人は悲鳴を上げながら車を飛び出して逃げた。友達を見捨てて。
※
それから落ち着きを取り戻した三人が車に戻ってみると、彼の姿は無かった。
どこへ行ったのかと思い、車の周りを探していると、一人が悲鳴を上げた。
震えながら指差すその先には、ツタに絡まった彼の姿があった。