赤いクレヨン

公開日: 心霊体験 | 怖い話

廊下(フリー背景素材)

とある夫婦が、非常に安い価格で一軒家を買った。

駅から近くに建っていてなかなか広いので、何一つ不満は無かった。

しかし一つだけ不思議な点があった。

それは、何故かいつも廊下に赤いクレヨンが転がっているのだ。妻が何度拾っても…。

最初はさほど変に思わず片付けていたのだが、次の日も、その次の日も転がっている。

しかも廊下の決まった場所に。

ちなみに、夫婦に子どもは居ない。

流石に気味が悪くなった夫婦は、この家を売った不動産屋に相談した。

すると不動産屋は重い表情で、家の間取り図を取り出して来た。

間取り図をよく見ると、明らかにおかしい点があった。

部屋が一つ多いのだ。しかもいつもクレヨンが転がっている廊下に。

夫婦はどういうことかと問い詰めた。

すると不動産屋は重い口を開いた。

不動産屋の話はこうだ。

あの家には以前、男の子と両親の三人家族が住んでいた。

男の子は両親に酷い虐待を受けていて、ろくに食事も与えられず、部屋に閉じ込められていた。

やがて男の子は餓死し、両親はすぐに引っ越して行った。

その後、家はきれいに片付けられ、新しい住人が引っ越して来たのだが

「あの部屋に入ると気分が悪くなる」

と言ってまたすぐに出て行ってしまった。

次にやって来た住人も同じようなことを言って出て行った。

不動産屋は仕方なく、その部屋を壁で塞ぐようにリフォームした。

そしてやって来た新しい住人があなたたちなのだ、と。

「じゃあ、クレヨンもその部屋が原因なのかも」

夫婦は不動産屋と共に真相を解明すべく、閉ざされた壁を壊すことにした。

壁を掘って行くと、確かに空間があった。

その部屋はまるで廃墟のような、異様な雰囲気が漂っている。

夫婦は中に入って周りを見渡した。

その瞬間、二人は言葉を失った。

壁一面に赤いクレヨンで悲痛な文字が書かれていたのだ。

関連記事

田舎の風景(フリー写真)

スルスル

土地の古老という言葉はすっかり死語ですが、まだ私の子供の頃にはいたんですよね。 土地の昔話や、若い皆さんは聞いたことも無いだろう『日露戦争従軍記』というものまで語ってもらったりも…

薄暗い校舎の廊下(フリー写真)

入れ替わった鬼

あまりにも不思議で、背筋が寒くなった話。 当時、中学3年生だった私。師匠というあだ名の女の子と仲が良くて、よく一緒に騒いでいた。 あれは確か冬の雨の日のことだった。 …

肝試し

高2の夏休み。霊の存在を否定していた友達が、出ると評判の廃屋に1晩1人で泊まることに。 昼間、下見をしてあまりにも汚いので寝袋を用意。晩飯の後、廃屋の前で別れたのがそいつを見た最…

犬の呪い

オチのない思い出話。 昭和45年、小学5年の頃、ある呪いの方法が少年誌に書いてあった。 犬を首輪で繋いで、その口が届かぬところに餌を置き、そのままにしておく。 犬は空…

酸素

悪行の報い

2年前、私が特別養護老人ホームで介護職員として働いていた時の話です。 この施設は非人道的な職場でした。老人たちを物のように扱う職員が多く、食事に薬を混ぜる、乱暴な入浴介助、抑制…

森

山の神さん

これは私が8歳の頃に経験した実話です。話の内容は直接見聞きしたことではなく、祖父から聞いた話や自分の記憶で補った部分もありますので、その点をご了承ください。 私の祖父は猟師で、…

峠

イキバタ

友人は「俺って社会不適合者だよね!」と笑いながらタバコを吸う。 現在高校生やり直し中の通称「イキバタ」さん。行き当たりばったりを略しての渾名らしい。 俺はもう卒業したのだが…

コンビニ

大晦日の白い影

1999年の大晦日、深夜の出来事です。 私は煙草を買うため、少し離れたコンビニへ出かけました。 住んでいる地域は田舎で、昔の街道筋を思わせるような古めかしい木造建築の家が…

炎(フリー写真)

呪い人形

呪いの藁人形をご存知ですか? それに関する話です。 私は仕事柄転勤が多く、各地を転々としていました。 時にはアパート、時には貸家。 私が山口の萩という所に転勤に…

峠(フリー写真)

峠の廃村

俺はオフロードバイクでソロツーリングするのが趣味だ。連休にはよく一人で遠出する。 今年のお盆休みに、九州の南端を目指して三泊四日の予定でツーリングに出発した。 もちろん、…