きさらぎ駅の立て札

田舎の駅(フリー素材)

皆さんは「きさらぎ駅」という名称を聞いたことがありますか?

これは数年前、インターネット上の2chで話題になった都市伝説で、ある方が実在しないとされるこの駅に迷い込み、その後行方不明になったという話です。

この話はインターネット上で簡単に見つけることができます。

そして今、私が皆さんにお話しすることは、私自身の体験についてです。

それは年末の頃、私が福岡から久留米へ電車で移動していた時のことです。

旅行中は主に本を読んで過ごしていました。ペーパーバックの本でした。

そんな時、周囲の乗客全員が眠っていることに気付きました。

それは不自然なほど静かで、皮膚でその奇妙さを感じ取ることができました。

それから窓の外を見ると、電車が古い鉄橋を渡っているところでした。

その後、陸橋が見え、その下を潜った後、駅に到着しました。

私が普段使っている路線ではなかったので、その風景は見慣れないものでした。

駅に到着すると、ホームが二つあり、その奥に古い日本建築の駅舎が見えました。

また、ホームの柱にはひらがなで『きさらぎ』と書かれたプレートが取り付けられていました。

雨が降っていたため、ホームの一部にしか屋根がなく、傘を持った人々が何人か見られました。

しかし、不思議なことに、新たに乗車する人は誰もいませんでした。

少し離れた場所には大きな立て札があり、そこにはひらがなで『きさらぎ』と書かれていました。

また、一つ前の駅『やみ』と、一つ後の駅『かたす』という駅名も記されていました。

普通なら電車を間違えたかなどとパニックになるかもしれませんが、私はその場所に何となく引き寄せられるような感覚を覚えました。

しかし、私は久留米で誰かに迎えに来てもらう約束をしていたため、降りる時間はありませんでした。

そして、ぼんやりと窓の外を見ていると、電車が発車しました。

最終的に、次の『かたす』という駅には到着せず、長い時間を経て電車は久留米に到着しました。

その頃には周囲の人々も既に起きていました。

途中で停まるはずの駅をいくつか飛ばしたような感覚があったのですが、詳細については記憶があいまいです。

後日、私はその体験が夢だったのではないかと考え、

『久留米の前くらいまで浅い眠りに入っていたなかで見た夢だろう』

と結論付けました。

しかし、最近インターネットできさらぎ駅の話を見つけ、驚いています。

私の体験とはすみさんの話は異なります。

私の場合はトンネルを抜けることもなく、ホームや駅舎には人々がいて、住宅も見えました。

それに、私が体験したのは九州であり、東海地方からは遠い場所です。

しかし駅の名前が『きさらぎ』だったことは確かです。

もしかすると、この名前は何かオカルト的な意味を持つのでしょうか。この世とあの世の接点のような。

もし私がその駅で降りていたらどうなっていたのか、考えるととても恐ろしい気持ちになります。

関連記事

地下鉄(フリー写真)

目に見えない存在の加護

その日はいつも通りに電車に乗って会社へ向かった。 そしていつものようにドアに寄り掛かりながら外の景色を眺めていた。 地下鉄に乗り換える駅(日比谷線の八丁堀駅)が近付いて来て…

砂時計(フリー写真)

巻き戻る時間

10年程前、まだ小学生だった私は、家で一人留守番をしていました。 母親に注意もされず、のびのびとゲームを遊ぶことが出来てご満悦でした。 暫く楽しく遊んでいると、電話が掛かっ…

木造校舎

青い手首

ネタではありません。実際の体験談です。 世田谷区立某小学校での出来事。 ※ 入学して1年間は、戦前からある古い木造校舎で過ごしました。 2年生になった頃に木造校舎の建て…

夜のオフィス(フリー素材)

中小ソフトウェアハウス

中小ソフトウェアハウスに勤めていた友人Kの話です。 あるプロジェクトの納期がきつくデスマーチとなり、Kとその先輩は連日徹夜で作業していたそうです。 ところが、以前のプロジ…

抽象画

娘と狛犬

5歳になる娘と散歩で立ち寄った神社でおみくじを引いた時、3回連続で凶が出た。 こんな事もあるのかと驚きながら家に帰ると、嫁が訝しげな顔で言った。 「それ、どうしたの?」 …

キャンプ(フリー写真)

もし、旅かな?

学生だった頃、週末に一人キャンプに興じていた時期があった。 金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、というだけの面白味も何もないキャンプ。 友達のいない俺は、寂…

ゴムまり持った女の子

私がまだ花の女子大生だった頃のお話です。 私の学科用の校舎は新設されたばかりでまだぴかぴか。最上階には視聴覚設備用の特別教室があり、その上にパイプスペース用の小部屋だけがある階が…

庭の地面

記憶に刻まれた「一度目の死」

物心がついた頃から、私はこう語っていた。 「僕は一回、死んだんだ」 幼い子どもの妄言と思われるかもしれないが、私は本気だった。というより、その“死んだ記憶”は今でも鮮明に…

医師(フリー写真)

夢の中の治療

俺の従兄弟の話を一つ。 非常に仲の良い従兄弟が、25歳の時に末期がんになった。 人間として凄く見応えのある人物だっただけに、身内一同とても落胆した。 従兄弟には当時付…

山神様

これは、俺の曽祖父が体験した話です。大正時代の話ですので大分昔ですね。 曾じいちゃんを、仮に『正夫』としておきますね。 正夫は狩りが趣味だったそうで、暇さえあれば良く山狩り…