戦時中に子供が描いた絵

公開日: 怖い話

平和祈念像(フリー写真)

幼い頃、親の都合でドイツに移住した経験があります。

自然な流れで特別支援学級に入り、徐々にドイツ語を身に付けていきました。

同じクラスには、同様の環境にいたアラブ系の子がいました。

クラスメイトたちは粗野な子ばかりだったため、自然と私はそのアラブの子と仲良くなり、放課後に一緒に遊ぶことが多くなりました。

彼の家に遊びに行くと、彼の母親は白人に見えたため、彼の父親がアラブ系なのだろうかと思っていました。

ある日、美術の授業で『思い出に残っている絵を描きましょう!』という課題がありました。

私はドラえもんとアラレちゃんと一緒に遊んでいる自分を描きました。

それで隣のアラブの子に、

「日本のロボットだ。日本は優秀だから高性能ロボットが作れるのだ」と見せびらかしました。

アラブの子は、

「私の絵も見てくれる?」と尋ねてきました。

その絵には、建物の中で笑っている兵士に殺された女性が描かれ、内臓や目が飛び出していました。

足元には赤ちゃんの死体が転がっていました。

外では戦車が走り、子供たちや大人たちが踏み潰されていました。

あのとき私は、その残酷な光景に凍りついてしまいました。

それから20年以上が経ちましたが、その光景は今だに私の網膜に焼き付いています。

何が怖かったかと言うと、殺戮行為を働く兵士たちは皆、ニコニコ笑っていたことです。

しかしその絵は教師に検閲され、教室には飾られることはありませんでした。

当然ながら、アラブの子は厳しく叱責されました。

「どうしてあのような絵を描いたの?」と尋ねると、

「あれは私の国で家族が殺された絵なんだよ」と彼は語りました。

関連記事

マリエ

うちの近所にまことしやかに囁かれている「マリエ」というお話です。 オッチャンは焦っていた。今日も仕事の接待で深夜になってしまった。いつものT字路を曲がるとそこには古びた神社があっ…

気持ちの悪いスナック

7年くらい前にタクシーの運転手さんに聞いた話です。 当時、六本木にある会社に勤めていましたが、結構夜遅くなることが多かったんですね。 当然終電はなく、タクシーで帰ることにな…

思い出

小学生になったばかりの頃の話。 学校の近くに沼を埋め立てて造った更地があって、放課後になると鉄条網の隙間から友達と潜り込んで遊んでた。 あの日。埋められた地面の一部が、底が…

手(フリー写真)

死者の夢

俺の友人Aは、小さい頃から長い休みになると毎回父方の田舎に一人で帰省していた。 Aが中学2年生の時、数日前から体調を崩して寝込んでいた爺ちゃんが、Aと叔母さん(A父の姉)にこん…

ピチガイオカン

自分の記憶と兄から聞いた話、それに友達からの情報、それらを元にした話なので、完全に真実の話とも言えないかもしれませんが、結構怖いと思った話なので書き込ませていただきます。 始まり…

会いに来た子供

彼は大学生時代にバンドを組んでいた。 担当がボーカルだったということもあり、女の子からも相当モテていた。 放って置いてもモテるものだから、かなり奔放に遊んでいたのだという。…

釘

恨みクギ

俺が若かった頃、当時の彼女と同棲していた時の話。 同棲に至った成り行きは、彼女が父親と大喧嘩して家出。彼女の父親は大工の親方をしている昔気質。あまり面識は無かったが、俺も内心びび…

火柱

人型焼き

ある夏の日の話をしようと思う。 その日は、前々から行くつもりだった近場の神社を訪ねた。 俺には少々オカルト趣味があり、変な話や不思議な物等が大好物だった。 この日も、…

インコ

インコのムウちゃん

2年程前から飼っているオカメインコのムウちゃんについてのブログを始めた。 始めた当初は誰も記事を見に来てくれないし、コメントも残してくれないので結構寂しかった。 でも他の人…

疫病神

20年くらい前、高校生の時一人で留守番をしていたら、インターホンが鳴った。 出てみると、乞食みたいなのが立っていて「この家には死神がついている」と言い残して立ち去っていった。 それから…