クシャタ様

5452002677_94a7740d2c_o

4月の中旬頃、高校の時の男友達から電話があり、二人で飲むことになったんです。

高校の時はそれなりに仲が良かったのですが、大学に進学してからは会うこともなくなり、話すのは2年ぶりでした。

彼はとても興奮していて、近況報告もそこそこに「すごいものを見つけた」と言って一枚の写真を見せてきました。

その写真は、傾斜の急な竹藪の中で撮ったもので、右上に小さく石の鳥居が写っており、写真下の中央から右上の鳥居へ向かって枯れ沢が繋がっています。その沢を登っている途中に撮った写真のようでした。

彼によると、鳥居の横の竹藪にクシャタガーブという神様が写っているそうです。

いわゆる心霊写真のような、オーブや影みたいなものは全く写っていませんでした。

私は、変な宗教か何かの勧誘だろうと思い、そういう話には興味がないと言って帰ってしまいました。

その一ヶ月後、彼がその竹藪で死体になって見つかりました。

彼は死ぬ前に「クシャタ様が見えるやつはいないのか」と知り合いに聞き回っていたそうです。

クシャタ様というのは、その土地の守護神のようなものらしく、怒りを買うと地震を起こすのだそうです。

そして、彼は遺書のようなものは残していませんでしたが、怒りを鎮めるために生贄が必要だということを家族に話していたそうです。

彼の部屋は綺麗に掃除されていました。

私は幽霊や神様というものが居るかどうかなんて分かりませんし、彼が神様に取り憑かれたなどという噂は勿論信じていません。

しかし、私が彼の話を聞かなかったあの日から一ヶ月経っても、彼が何を思いどうして自死を選んだのか、とても理解できそうにありません。

あの時、彼の話をよく聞かなかったことをとても後悔しています。

関連記事

古いアパート

天井裏の秘密

昔、私の住んでいたアパートでの話。 ある夜、酔っ払って家に帰ると、狭い玄関に女性のサンダルが置かれていた。 なぜここに?私には思い出せない。 サンダルを手にとってよ…

廃村(長編)

俺が小学5年の頃の話だ。 東京で生まれ育った一人っ子の俺は、ほぼ毎年夏休みを利用して1ヶ月程母方の祖父母家へ行っていた。 両親共働きの鍵っ子だったので、祖父母家に行くのはた…

介護の闇

家には痴呆になった祖母がいる。 父方の祖母だが、痴呆になる前も後も母とは仲が良く、まめに面倒を見ている。 これは年末の深夜の話。 祖母の部屋から、何やらぼそぼそと呟く…

肋骨を掴む手

最寄の駅からおいらの会社まで自転車で通っていたことがある。 その日は仕事が結構早めに終わり、少しずつ暗くなる路地裏を自転車で家路を急いでいた。 蒼い宵闇が降りてくる。境界線…

祖母のしたこと

私の一番古い記憶は3歳。木枯らしの吹く夕方、一人でブランコを漕いでいるところ。 手も足もかじかんで、とても冷たい。でも今帰れば母に叱られる。祖母に迎えに来て欲しい、ここはいつも来…

死刑執行

A受刑者は、大量殺人を犯し、死刑が確定していた。 それから数年。 今日は、A受刑者の死刑執行日である。 目隠しをしたA受刑者は、絞殺台に立たされる。 「ガゴン!…

かごめかごめ

この話は、実際に友人が遭遇した話で、彼もその場所はついに教えてくれませんでした。 実際に人が2人死に、彼も警察にしつこく尋問されたそうです。 これは私が大学時代にその友人か…

アパートのドアノブ(フリー写真)

開けて

大学進学のために上京した時の話です。 私は志望した大学に無事受かり、4月から新しい学校生活を送るため、田舎から上京して一人暮らしをする事になりました。 学校まで電車で20…

死に際に現れる黒い人

最近ネットで読んだのですが、人間が死にそうになっている時、それを助けたりする謎の人物が現れるそうです。 それは死んだ兄弟や親類であったり、声だけであったりするそうですが、正しい逃…

田舎のフリーイラスト素材

ほっとけさん

これは私が小さい頃、実際に起こった出来事です。 私の親は私が物心がつく前に離別し、私は母方に引き取られました。 しかし私の母の実家は結構な田舎で、女性が仕事を探すのは困難で…