そこを右

Victoria-Stoyanova-1968---Bulgarian-Abstract-painter---Tutt'Art@

あるカップルが車で夜の山道を走っていた。

しかし、しばらく走っていると道に迷ってしまった。

カーナビもない車なので運転席の男は慌てたが、そのとき助手席で寝ていたと思った助手席の彼女が、

「そこを右」

などと道を案内し始めたのだ。

「なんだ、道知ってるのかよ」

と思った彼だが、助手席から聞こえてくる彼女の案内に従って山道を走り始めた。

「そこを左」

「その道入って」

など彼女の案内は続いた。彼は安心して運転をすることができた。

そして、

「そこを左に曲がって」

彼はハンドルを切って左に曲がった。

「!!!」

彼は急ブレーキを踏んだ。

左に曲がったすぐ先は崖となっていた。落ちたら命はなかったろう。

「なんでこんな道を教えたんだ!」

彼は助手席の彼女に怒鳴った。

「死ねばよかったのに……」

寝ている彼女の口から低い男の声が聞こえた。

関連記事

ここにいたあ

13日に田舎の墓参りに行ってきた。 毎年恒例で、俺は東京で一人暮らしして初めての里帰りだった寺には一族郎党が集まり、仲の良い従兄弟のDも来ていた。 お経も終わり墓参りも終わ…

リアル(長編)

俺の経験から言わせてもらう。何かに取り憑かれたりしたら、マジで洒落にならないことになると最初に言っておく。 もう一つ。一度や二度、お祓いをすれば何とかなるってことはまずない。長い…

押し入れ(フリー写真)

白く小さな手

中学校の時、先生に聞いた話です。 幼い二人の姉妹が家で留守番をしていました。両親は夜にならないと帰って来ません。 暇を持て余していた姉は、家でかくれんぼをする事を思い付きま…

抽象画

娘と狛犬

5歳になる娘と散歩で立ち寄った神社でおみくじを引いた時、3回連続で凶が出た。 こんな事もあるのかと驚きながら家に帰ると、嫁が訝しげな顔で言った。 「それ、どうしたの?」 …

三つの墓標

俺の高3の時の生物の担当の話。 自分が実際に体験した訳じゃないけど、ある程度現場視点で話します。 先生は某国立大学の出で、その大学は山にあって、昔は基地として使われていたら…

だるま

女の子2人が韓国へ旅行に行った。 ブティックに入り、一人の女の子が試着室に入った。だけど待てども待てども一向に試着室から出てくる気配がない。 カーテンを開けるとそこには誰も…

林(フリー写真)

お姉ちゃんと鬼ごっこ

神隠しみたいなものに遭ったことがある。小学一年生の夏休みのことだ。 実家はいわゆる過疎地にあり、地域には同い年の子が数人しか居なかった。 その日は遊べる友達が居なかったので…

旅館での一夜

甲府方面にある旅館に泊まった時の話。 俺と彼女が付き合い始めて1年ちょっと経った時に、記念にと思い電車で旅行をした時の事。 特に目的地も決めておらず、ぶらり旅気分で泊まる所…

山の小道

廃道の先に

20年程前に俺が体験した、今だに信じられない話を書こうと思います。 と言うのも、俺の周りには超常現象的なものに詳しい人物が全くいないので、今から書く実際に体験した出来事を一体どう…

校庭(フリー写真)

あやこさんの木

私が通っていた小学校に、あやこさんの木というのがあった。 何という種類かは分からないが、幹が太く立派な木だ。 何故、あやこさんの木と言うのかは判らない。 みんなそう呼…