
日本には、世界に誇るスーパーコンピューターが存在する。
その名は『スーパーコンピューター京(けい)』。
名前の由来は、毎秒1京回という驚異的な計算速度にある。
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スーパーコンピューターは今や、世界各国がしのぎを削って開発を進めている分野である。
その用途は多岐にわたり、中でも代表的なものの一つが「地球規模の気候変動シミュレーション」だ。
スーパーコンピューターは、莫大な量のデータを高速で処理できるため、過去の気温や湿度、海流、風速といったあらゆる要素を取り込み、未来の地球環境を予測するために活用されている。
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ところが、その気候変動シミュレーションの過程で、どうにも説明のつかない“奇妙な現象”が発生することがある。
それは、日本に限ったことではない。
アメリカ、ドイツ、中国といった他国のスーパーコンピューターを用いた場合でも、同様の現象が起きているという。
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過去50年分の気象データを入力し、今後数十年間の地球の平均気温を予測させる。
すると、必ず“ある特定の年”を境に、地球の平均気温が異常なまでに跳ね上がるのだ。
その上昇幅は、なんと摂氏100度近く。
前年と比較しても、プラス75度以上という、信じがたい急上昇が記録される。
当然ながら、そのような気温上昇は物理的に起こり得ない。
最初は多くの研究者が、「マシンの誤作動だろう」と結論づけた。
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しかし、不可解なのはその後だった。
別の研究所で、別のアルゴリズムを使って同様のシミュレーションを行っても──
同じ現象が、まったく同じ“年”に、何度やっても繰り返される。
しかもそれは、世界中のスーパーコンピューターで共通して発生しているという。
入力データを変えても、処理方法を工夫しても、結果は変わらなかった。
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やがて、一部の学者たちの間で、こうした声が上がるようになった。
「これは、スーパーコンピューターが何かを“告げよう”としているのではないか」
「もしかすると、神がコンピューターを通じて未来の警告を与えているのではないか」
非科学的とも思えるこの仮説が、意外なことに学術界でも一部の真剣な議論を呼ぶようになった。
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もちろん、この情報が一般に公表されることはない。
もし事実として報じられれば、世界中でパニックが起こるおそれがあるためだ。
ただし、内部関係者の話によれば、その“ある年”とは、決して遠い未来ではないという。
私たちが生きているうちに、その年が訪れる可能性もある。
果たしてこの現象は、ただのエラーなのか。
それとも──
人類がまだ知らぬ“未来の兆し”なのだろうか。