老人の孤独
公開日: 東京伝説
俺は土木屋なんだけど、ある道路の工事中に近所から煙が上がってたんだよ。
最初は何かを燃やしているだけかと思ったが、どんどん煙の勢いが増して行ったので、見に行ってみると民家が燃えていた。
火事なんて初めて見たので圧倒されたが、急いで110番と119番に電話。
救援が駆け付けるのを待っている間、どんどん火の勢いが増して行くのをただ呆然と見守るしかなかった。
それで家の裏に回ってみると、家主らしいおじいさんがぼーっと立っていたんだ。
かなり危ないので「早くこっちに!」と叫んだが動かない。
仕方ないので強引に連れて行こうとしたが、それでも動かない。
その時点でおかしいと思うよねえ。
「逃げないと死ぬよ!」
と言うと、そのじいさんは
「良いんだよ。自分で火をつけたんだから!俺も中に入って死ぬ!」
だって…。
愕然としたよ。覚悟の放火だったらしい。
目の前で自殺をしようとしている人間は無性に怖い。圧倒される。
ちょうどその時に消防隊員が来たので強引に救出したが、その後も爺さんは警察と揉めていた。
どうもその爺さんは一人暮らしだったらしい。寂しかったんだろうか?