ワープする部長

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

エレベーター

会社でのぬるい話をひとつ。

コンサル部の部長は時々ワープするらしい。

打ち合わせ中に他の場所で目撃されたり、出張中なのにかかってきた電話に出ていたりと、「瞬間移動できる」または「分裂して増えてる」などの噂があった。

別の課で経理の部署にいる私とはさほど接点がなかったため、自分でワープを目撃したことはなく残念に思っていた。

それでも社内で部長を見かける度に、気になって観察したりしていた。

その努力が実ったのか、唯一自分で見た時の話。

経理用の伝票束を倉庫から3階の経理まで運ぼうとした。

倉庫は1階のため本来なら階段推奨なのだけど、ダンボールが結構重かったのと、台車を使う事になったので、普段は使用しないエレベーターに乗ることにした。

ビルは2箇所にエレベーターがあり、正面にある来客用と、奥で主に社員が使う古い物。

使ったのは古い方でとても狭く、大人3人が乗ると息苦しくなるような広さしかない。

ビルは6階建て、経理は4階、コンサルは6階にある。

古い方のエレベーターは3階までしか動かない(理由は不明。昔からそうだったらしい。ボタンも3階までしかない)。

エレベーターに乗ってボタンを押そうとした時、例の部長が一緒に乗ってきた。

台車と一緒に乗ると狭過ぎるので一度譲ろうとしたのだけど、部長はにっこり笑ってそのまま「閉」ボタンを押してしまった。

おかげで部長は片足を台車の上に乗せるしかなく、非常に申し訳なかった。

エレベーターは古く、停まる時にガタンと衝撃がある。

3階に到着して、部長を乗せたまま台車をガタンと揺らしてしまった。

バランスを崩し、扉が開くと同時に積んだダンボール箱が床に転がった。

慌てて先に出て、散らばった伝票束を掻き集めている内に、部長はそのままエレベーターを閉めてしまった。

これ以上エレベーターは上に行けないのに…。なぜ降りなかったのか不思議だった。

もう一つ不思議なのは、台車の上にダンボールが3箱積んであり、その前に部長の足があってダンボールを支えていたはず。

部長が足をどけないとダンボールは崩れないはずだった。

私が降りようと「すみません」と声を掛けた時にすっとどけたのを見たのだけど…。

戻ると経理の課長は会議に出ていて居なかった。

その会議は3ヶ月毎に行われる、全部署課長以上+営業+重役で行われるもので、もちろんコンサルの部長も出席しているはず。

昼休みに営業の同期に聞くと、やはり部長は出席していた。

一度休憩を挟んだらしいけど、私が倉庫に行っていた時間とは違う。

それに重役クラスは来客用のエレベーターを使うのが常(部長だけど外部からの引き抜きで来てもらったため、扱いは重役レベル)。

その話を同僚にして、部長増殖説の方が有力になった。

会社は古くて本社のため、人数はかなり居ます。人が多いとそれなりに変な話も多いのです。

使っているビルがかなり古いせいか、結構色々な話があります。

私の話が怖くないのは、そんな目に遭ったら既に辞めているからです。

在籍6年目、もう少し頑張る予定。

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