玩具のフィギュア

公開日: 不思議な体験

オフィス風景(フリー写真)

1年程前にコンビニで玩具菓子を買った。

ある人気アニメのロボットの組み立て式のフィギュアが付いたものだ。

敵役のロボットなので髑髏のような頭を持ち、両手でマシンガンを構えていた。

玩具菓子のフィギュアにしてはなかなかの出来だったので、箪笥の上に飾っておいた。

この玩具菓子のシリーズは好評だったようで、第2弾、第3弾が発売された。

同じアニメに登場する別のロボットのフィギュアが付いていた。

それにつられるように玩具菓子を買い、箪笥の上には4種類、4体のロボットが飾られるようになった。

アニメに登場する敵役のロボットが全て揃ったのだ。

4体のロボットは一つの戦闘チームを作っているようだった。

フィギュアは全て出来が良かったので、よく4対並んでいるのを眺めて時間を過ごした。

そしてつい先日のことだ。

この玩具菓子のシリーズの第4弾が発売された。

それは一番初めに買ったロボットのリメイク版だった。

早速それを買って来た。

モデリングの技術が進歩していたのだろう。

新しいフィギュアは明らかに初めのフィギュアより出来が良かった。

新しいフィギュアを箪笥に飾ろうとしたが、5体を並べる場所はなかった。

少し悩んだが、初めのフィギュアは職場に持って行くことにした。

職場の机の上の奥の方に持って来た最初のフィギュアを飾った。

1対しかないので少し淋しい感じがしたが、仕事中の気分転換には十分だった。

次の日、出勤してみると、ロボットのフィギュアが何故か机の手前の方に飾られていた。

その時は誰か職場の人が手に取って眺めたのだろうと思い、気にも留めなかった。

仕事に邪魔になるので、フィギュアは机の上の奥の方に戻した。

次の日、出勤してみると、フィギュアはまた机の手前の方に飾られていた。

勤務時間が始まると机の奥に戻すのだが、次の日も、その次の日もフィギュアは机の手前の方にあった。

かなり人気のあったアニメの登場ロボットなので、職場にもファンの人がいるのだなと思った。

職場にロボットのフィギュアを持ち込んで、一週間ほど経った。

その日は業務が忙しくなり、徹夜することになった。

朝、いつものようにフィギュアを机の奥に戻し、日付が変わっても仕事を続けた。

職場の人は次々と帰宅し、一人になった。

次の日の午前3時頃、やっと仕事が終わったので仮眠することにした。

机の前に椅子を並べてその上に横になった時、ふとロボットのフィギュアの方を見た。

ロボットが机の奥の方からこちらにマシンガンを向けているのが見えた。

そのまま眠った。

何かの物音で目が覚めたようだ。

時計を見ると午前4時過ぎだった。

外は既に明るくなっていた。

物音の原因を探すために辺りを見回した。

ロボットがばらばらになっていた。

机の上から下まで、ロボットのフィギュアのパーツが散らばっていた。

ばらばらになったパーツを探し集めた。

だが頭のパーツはついに見つからなかった。

机の上には首なしのロボットがあった。

流石に気持ち悪くなったので、そのフィギュアはゴミ箱に捨ててしまった。

職場の人が出勤して来る時間になった。

不快な気持ちは治まらなかったので、早退した。

家に帰ると腹の調子まで悪くなってきた。

何度もトイレに行った。

下痢だった。

トイレ何度目か行った時、お尻に何か引っかかる感じがした。

便器の中を確認してみると、便器の中に何かがあった。

それはあのロボットの頭だった。

髑髏のようなロボットの頭は、便器の中からこちらを見上げていた。

その時、何が起こっていたのかが解った気がした。

ロボットの頭を割り箸で拾い上げ、石鹸でよく洗った。

箪笥の上には4体のロボットのフィギュアが飾られている。

その真ん中に、あのロボットの頭を飾った。

あれだけ酷かった下痢は、嘘のように治まっていた。

ロボットの頭に言うべき言葉を言った。

「おかえり」

関連記事

田舎の風景

白ん坊

このお話の舞台は詳しく言えないけれど、私の父の実家がある場所にまつわるお話。 父の実家はとにかくドが付く程の田舎。集落には両手で数えきれる程しか家がない。 山奥なので土地だ…

未来から来た男

俺が小学校低学年の時、25年くらい前かな。 当時住んでたとこの近くに公園があった。 ある日、友達と遊んでて帰りが遅くなったとき、公園のところを通ったとき、20歳くらいの人に…

爺ちゃんとの秘密

俺は物心ついた時から霊感が強かったらしく、話せるようになってからは、いつも他の人には見えない者と遊んだりしていた。 正直生きている者とこの世の者ではないものとの区別が全くつかなか…

異世界から元に戻れなくなった

この話は2013年の8月頭くらいの話。 爺ちゃんの49日のために行った先での出来事だから、恐らくその辺りだ。 その日はクソ暑かった。休日だったその日は、朝から爺ちゃんの法要…

線路(フリー素材)

北陸の無人駅

昔、北陸の某所に出張に行った時の事。 ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にお得意様を回る事にした。 最後の所で少し飲んで、その後ホテルに戻る事にした。 ※ ホテ…

死後の世界への扉

これは母から聞いた話です。 私の曽祖父、つまり母の祖父が亡くなった時のことです。 曽祖父は九十八歳という当時ではかなりの高齢でした。 普段から背筋をぴんと伸ばし、威厳…

妖狐哀歌(宮大工10)

オオカミ様が代わられてから数年が経った。 俺も仕事を覚え数多くの現場をこなし、自分でも辛うじて一人前の仲間入りを果たす事が出来たと実感するようになった。 また、兄弟子たちも…

不思議な森

昔住んでた家の近くの河川敷に広い公園があり、そこに小さな森があった。その森の中には、異常に暗い空間が何カ所かあって、よくそこで遊んでた。 もう少し説明すると、その空間だけ切り取っ…

渓流(フリー写真)

殺生

秋田・岩手の県境の山里に住む元マタギの老人の話が、怖くはないが印象的だったので投稿します。 その老人は昔イワナ釣りの名人で、猟に出ない日は毎日釣りをするほど釣りが好きだったそう…

異なった世界のスイッチ

アサガオが咲いていたから、夏の事だったと思う。 私は5歳で、庭の砂場で一人で遊んでいた。 ふと顔を上げると、生け垣の向こうに着物姿の見知らぬお婆さんがニコニコして立っている…