妻の生き霊

女性のシルエット(フリーイラスト)

日曜日の朝、昼まで寝ていた俺はボーっとしながらリビングへ向かった。

トントンと包丁の音がする。台所では妻が昼飯を作っているようだった。

テレビを点けて携帯を見ると、一昨日内緒で行ったコンパで番号を交換した女性から着信履歴があった。

寝巻きのポケットに携帯を入れ、台所を横切ってトイレへと急いだ。

トイレで小声で女性と他愛もない会話をしていたらキャッチが入った。妻からだった。

俺はこっそり電話しているのがばれてしまったのかと思い、慌てて電話に出ると

「もしもし? 今起きたの? 娘が部活で怪我したみたいで、今迎えに行ってるからお昼は冷蔵庫のものをチンして食べて」

と言われた。

電話の向こうから、車の中のラジオの音も聞こえた。

電話を切らずにトイレから出て台所をそっと覗いて見ると、台所の妻は携帯など持っておらず、包丁で何も乗っていないまな板をただ切っていた。

手に握った携帯からは「もしもーし?」と妻の声がしている。

台所の妻と目が合ってしまった。

ゾッとした俺はパニックになって家を飛び出し、「早く帰って来い」ともう一度妻に電話をし、二人が帰って来るまで外で待っていた。

帰って来た妻と娘に状況を説明し、みんなで家に入ったが誰も居ない。

台所には誰かが作った料理が家族分用意されていた。

妻と娘には寝ぼけていたんだろうと言われたが、そんな訳はない。

それでは料理の説明がつかないし、俺は料理なんて出来ない。

今以て不思議だ。

関連記事

居間のブラウン管テレビ(フリー写真)

神様の訪問

小さい時は親が共働きで、一人で留守番をする事がよくあった。特に小学校の夏休みなど、日中は大体一人で家に居た。小学4年生の夏休みの事だ。トイレに行って居間へ戻った…

入れ替わった友人

怖くないけど、不思議な小ネタ。若しくは俺が病気なだけ。俺は今仕事の都合で台湾に住んでる。宿代もかからず日本からも近いから、たまに友達が台湾に遊びに来る。そういう時の話。…

自動ドアが認識しない人間

大学二年の夏休みに入る少し前からだったかな…。コンビニやらスーパーやらの入り口、とにかく全ての自動ドアが俺に反応しなくなった事があった。それまでは普通に入ることの出来て…

ベニヤを突き破って手首が……あれ!? 抜けなくなった…???

たぶん怖くないけど自分的には嫌だった話。帰り道に、赤錆びて穴だらけのベニヤ張りの物置みたいな建物がある。周りに新築マンションが増えてるからかなり浮いた感じ。で、ゆうべ遅…

迷い道

昔、某電機機器メーカーの工場で派遣社員として働いていた時の話。三交代で働いていて、後一ヶ月で契約が切れる予定で、その週は準夜勤(17:00~0:30)でした。当時は運転…

宇宙は数字でできている(長編)

不思議な体験をした。簡単に説明すれば、幽体離脱をして宇宙を覗いたら、螺旋状に永遠に伸びる、うねうねとした膨大なカラフルな数字から成る道を高速スピードで飛んでいた。あまり…

無限ループするトンネルと祭り

休日の夕方に友人連れ3人で、温泉宿に向かう山道を車で走っていた。車の持主が運転、もう一人は後部座席、俺が地図を見ていた。地図上では一本道で、トンネルを3つ通らないといけ…

モデルカー(フリー写真)

形見分け

俺はとある物のコレクターなのだが、コレクター友達であるAがある時突然、余命宣告を受けるような大病に罹ってしまった。もう手の施しようがないレベルで、元気に動いているのが不思議な状…

ダル

小学校の頃、家族で山に行った時の話。俺はふとしたことで山道から外れ、迷子になってしまった。山道に出ようとしたけれど、行けども行けども同じような風景が続く。そのう…

鳥居(フリー素材)

カキタ様

俺が田舎に転校していた頃の話。俺の家庭は当時ごたごたしていてさ。それが理由で学校とか行きづらくなっちゃって。友達は「気にすんなよ、一緒に遊ぼうぜ」と言ってくれるんだけど…