中小ソフトウェアハウス

夜のオフィス(フリー素材)

中小ソフトウェアハウスに勤めていた友人Kの話です。

あるプロジェクトの納期がきつくデスマーチとなり、Kとその先輩は連日徹夜で作業していたそうです。

ところが、以前のプロジェクトも見積りミスで徹夜続きだった先輩が納期間近に倒れて早退し、結局そのまま亡くなってしまいました。

残されたKも悲惨で、人手が割けずに単独プロジェクトを続行することになりました。

ある日、徹夜で作業をしているとキーボードを叩く音や、先輩の癖を思わせる足音が聞こえて来ました。

納期前夜、一人で最終チェック中に不具合を発見し、慌てて修正作業を始めたものの、どう考えても間に合いません。

そんな日もやはりカツコツ歩き回る音がするので、いい加減に頭に来たKが

「邪魔するんなら出て行ってくださいよ!」

と叫びました。

しかし一時的に足音は止んだものの、暫くしたらまたキーボードを叩く音が聞こえます。

もう完全無視で作業を続け、朝日が昇っても最後の不具合が取り除けませんでした。

仕方がないので如何に謝り抜くかを考えながら、動作チェックをかけていた時のことです。

最後に残っていた不具合が何故か綺麗に消えていました。

おかげで納期に何とか間に合い、Kは『きっと無意識に直したんだな。俺って凄いじゃん』くらいに思っていました。

ところが、後でその部分のソースコードを見ると、コメントを付ける癖が先輩のものとしか思えませんでした。

程なくちょっとした噂になり、尻に火が点いた新人が何人かその開発室で徹夜を試みたそうです。

しかし結局何も起こらず、間に合わない案件が今も多数だと聞いています。

先輩は思い残しを処理して成仏したのなら良いけれども、新人には甘くない方だったから、自分の尻は自分で拭かせているのかもしれない、とKは言います。

関連記事

更衣室のドアノブ

私は初等教育学科で勉強していて、この科は文字通り小学校教諭を目指す人たちが専攻しています。 授業の中には『学校給食』やら『体育』やらといったものもあって、私は体育が苦手でした。 …

雷(フリー写真)

記憶の中の子供達

私は子供の頃、雷に打たれた事があります。 左腕と両足に火傷を負いましたが、幸いにも大火傷ではありませんでした。 現在は左腕と左足の指先に、微かに火傷の跡が残っているまでに回…

山道(フリー写真)

やまけらし様

俺の家は物凄い田舎で、学校へ行くにも往復12キロの道程を自転車で通わなければならない。 バスも出ているけど、そんなに裕福な家でもないので、定期を買うお金が勿体無かった。 学…

田舎の風景

神隠しのお姉さん

小学二年生の頃の話です。僕は、小さな頃に母を亡くし、父に育てられた父子家庭で育ちました。 そのせいか、性格は内向的になり、小学校ではひどいいじめに遭っていました。一年生の頃から…

かくれんぼ

かくれんぼの夢

これは四つ下の弟の話。当時、弟は小4、俺は中2、兄貴は高1だった。 兄貴は寮に入っていたから、家に帰って来ることは殆ど無かった。 俺は陸上部に入っていて、毎朝ランニングをし…

時が止まる場所

昔ウチの近所に結構有名な墓地があって…。 当時俺は、よく友達と近所の大きな公園で、自転車を使った鬼ごっこをしてたんだ。 ある日、リーダー格の友人Aの意見で、公園内だけではつ…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。 でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。 その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。 性格はよ…

地厄(じんやく)

今から25年前の小学3年生だった頃の話。 C村っていう所に住んでたんだけど、Tちゃんっていう同い年の女の子が引っ越してきたんだ。 凄く明るくて元気一杯な女の子だったんで、こ…

田舎道(フリー写真)

ぼうなき様

ぼうなき様って知ってる? 想像以上にマイナーな行事だったので、地元から出て話題にした時は誰も知らなかった。 有名なS神社で行われる七五三の続きのような行事で、十歳前後の女の…