白無垢の花嫁

公開日: 不思議な体験 | 心霊体験

民宿の部屋

私が小学校低学年の頃、夏休みには家族で田舎を訪れることが恒例でした。

そこには、私たちが毎回宿泊する古びた民宿がありました。

各部屋の入り口は襖で、玄関はすりガラスの引き戸で、まさに昔ながらの建築でした。

経営者は親しみやすいお爺さんとお婆さんで、私たちは訪れるたびに親しげに彼らと世間話を交わしていました。

ある日、私は民宿の中を探検することにしました。

二階の部屋を一つずつ見て回った後、最後に1階の奥にある部屋を開けることにしました。

襖を開けると、部屋の中には白無垢を纏った美しい花嫁がいました。

驚いた私は、訳もわからず謝罪の言葉をつぶやきました。

花嫁は微笑みながら私に近づき、

「遠くへ行くとお母さんが心配するよ。早く戻りなさい」

と優しく声をかけてくれました。

彼女の笑顔はとても鮮やかで、その美しさが私の記憶に深く刻まれました。

急いで家族のもとへ戻り、

「美しい花嫁さんがいた!」と話したところ、民宿の経営者は驚いた様子で、

「この宿には、あなたたち家族以外の宿泊客はいないのですが…」と返してきました。

後に知ることになったのは、私が訪れたその部屋は、長い間使用されておらず、封じられていたことでした。

特にその後、特別な出来事はありませんでしたが、私は時折、あの日の花嫁さんを思い出します。

彼女はすでに成仏しているのでしょうか、それとも何かの理由であの部屋に留まっているのでしょうか。

その答えは判りませんが、私にとっては忘れられない思い出となりました。

関連記事

渓流(フリー写真)

殺生

秋田・岩手の県境の山里に住む元マタギの老人の話が、怖くはないが印象的だったので投稿します。 その老人は昔イワナ釣りの名人で、猟に出ない日は毎日釣りをするほど釣りが好きだったそう…

町並み

存在しない昭和の町並み

これは高校1年の夏休み、田舎の高校に通っていた時の話です。 部活動が終わったのは20時。その後、部室で友人たちと怖い話をして盛り上がり、気がつけば23時を回っていました。私たち…

さまようおっさん

オレは結構、日常的に金縛りに遭うんだよね。あと、変なもん、いわゆる幽霊って奴の姿もたまに見る。『あ、出るな』って時の感覚も、敏感に感じちゃうわけ。 ある日の朝、オレはいつものよう…

枕(フリー写真)

ひとりおしゃべり

「ひとりおしゃべり」というものをご存知でしょうか。 降霊術の一つだそうで、椅子を二つ用意して片方に座り、もう一つの空いた椅子に向かっておしゃべりを続けると霊が出るというものです…

山道(フリー写真)

姥捨て山の老人

これは、私の兄が小学生の頃に体験した話です。 当時は私がまだ生まれる前のことでした。 春のある日、兄と祖父が近くの山で山菜採りに行きました。 彼らが目指していたのは…

抽象模様(フリー画像)

ヤドリギ

あまり怖くなかったらすまん。ちょっと気になることが立て続けにあったんで聞いて欲しいんだ。 自分は子供の頃からオカルトの類が大好きでな、図書館などで読んでいたのは、いつも日本の民話…

さっきの子

今年の夏休み、大学の友達と3人で四国へ旅行に行った時の話。 ナビも付いていないオンボロ車で、山中で迷ってしまい、どうにか国道に出る道を探し回っていた。 辺りも薄暗くなってき…

新聞受けから…

これは俺が2年前の6月14日に体験した本当の話です。俺が前住んでたアパートでの出来事。 その日、俺はバイトで疲れて熟睡していた。 「ガタガタッ」という異様な音で俺が目を覚ま…

列車の模型

時空を超えた旅路

5年前、私は大学1年生のとき、突如重い精神病に襲われました。始めは単なるやる気のなさと思われたものが、次第に人混みや大学構内での幻聴へと発展し、聞こえるはずのない耳障りな悪口が私の日…

体育館

時代を越えて

俺が小学生だった頃、早朝一番乗りで体育館でシュートの練習をしていたら、いつも体育館のステージの袖に見知らぬハゲのおっさんがいることに気が付いた。 近眼でよく見えないし、その時は先…