最強の姉

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

product-hugerect-14404-1052-1328719047-fc7ebe6d2bcef4fba540c284d43fccd7

一年前から一人暮らしを始めて以来、不眠症が酷くなった。

数ヶ月前に姉が遊びに来て、「へー…ここ住んでるんだ。そうかそうかなるほどね」と変な言葉を残して帰って行った。

霊とか一度も口にした事がない姉だけど、この人はとにかく勘が鋭い。

じゃんけんで姉に勝った事がないし、誰か来るとか親戚が亡くなるとかよく当たる。

怖いなと思ったのは、電車に乗っている最中に電話がかかってきて『電車降りて。今すぐ話をしたいの』と言われ降りたところ、どうでも良い話に数十分付き合わされ内心腹を立てていたら、目的地でかなり大きな事故が起きていた。

聞いても「別に」で他に何も話さない人だけど、勘の鋭さは半端ない。

その姉が「なるほどね」と言ったから少し引っかかっていた。

数日後、姉から人形が送られてきた。

「何これ?」と電話をしてみたら、『とりあえず枕元に置いて寝てみて』とだけしか言わない。

姉と違って人形趣味がないから、何だかなあと思いながら枕元に置いて寝たら、その日から物凄くよく眠れるように。

姉に「何かすごく良く眠れるんだけど、何あれ?」と聞いたけど、『そうか、良かったね。それはあげるよ』と言うだけでやはり何も言わない。

それ以来、枕元にその人形がいるんだけど、毎日見ているうちに何だか情が湧いてきて、服なんかを買って着せ替えている。

他の人形を見ても特に可愛いと思えないから、本当に人形者になったとは言えないんだけど、その人形は可愛くて仕方ない。

姉は相変わらずあまり何も言わないけど、やはり何かあった気がして怖い。

後日談 – 1 –

連休中に姉が遊びに来たのだけど、お土産に人形用のピンクの靴を持ってきてくれた。

実は、少し前にピンクの洋服を初めて自分で縫ってみて、可愛いけど靴だけ合わない。

どこかに売っていないかなと思っていたから驚いた。

あと、隣の部屋に6人家族がいて凄く煩かったんだけど、姉は来るなり「もうすぐ引っ越すよ」と言っていた。

すると連休最終日の夜、いきなりいなくなっていた。どうも夜逃げらしい。

相変わらず謎の多い人だと思う。

後日談 – 2 –

あれから他の人形に興味が湧く事はないけど、姉からもらった人形はとても可愛がっている。

今回お正月と言う事で、見よう見まねで一生懸命着物を作って着せてみた。

可愛かったから着物を着せた人形を持って帰省したら、「はいこれ」とちりめんの人形用草履をくれた。

草履まで間に合わなかったから、靴のままだったんだ。

着物を作った事は一切言ってないのに、何で分かるんだろう…。

後日談 – 3 –

姉に突然「鞄の中にあるぬいぐるみ出して」と言われ、思い当たる節がないので何だろうと思っていたら、友人からゲーセンで貰ったぬいぐるみストラップだった。

「これはこっちで処分するから」と言われて、有無を言わせず持って行かれた。

こういう時は何か理由があると解っているし、聞いても答えないのでそのまま預けて帰ったけど、昨日彼氏の二股が判明。

相手はそのストラップをくれた友人だった。

気が付かなかった自分の馬鹿さ加減に腹が立って、物凄く落ち込んでいるけど、姉があのストラップに何を見たかの方が気になって仕方ない。

関連記事

狐(フリー画像)

狐の加護を受ける家系

自分の家には、呪いと言うよりは加護みたいなものがあるらしい。 その内容は、何故か取引相手や仕事仲間が事故に遭わなくなったり、病気が治ったり出世したり、良縁に恵まれたりするというも…

満月(フリー画像)

天狗

35年前くらいの事かな。俺がまだ7歳の時の話。 俺は兄貴と2階の同じ部屋に寝ていて、親は一階で寝ていた。 その頃は夜21時頃には就寝していたんだけど、その日は何だか凄く静か…

フラクタル模様(フリー素材)

予知夢

俺にはデジャヴのような体験がよくある。デジャヴではなく予知夢なんだけどね。 でも中途半端な能力で使えない。いつ起こる出来事か判らないし、過去の夢の時もある。ただの夢とも混ざってし…

神秘的な山(フリー写真)

サカブ

秋田のマタギたちの間に伝わる話に『サカブ』というのがある。 サカブとは要するに『叫ぶ』の方言であるが、マタギたちが言う『サカブ』とは、山の神の呼び声を指すという。 山の神…

炎(フリー素材)

鳴く人形

俺の実家は小さな寺をやっている。 子供の頃から、親父が憑き物祓いや人形供養をしているのを何度も見て来た。 その中でも一番怖かったのが赤ちゃんの人形。ミルクなどを飲ませるよう…

学校の校庭(フリー素材)

逆上がりさん

小学生の頃、学校の七不思議が幾つもありました。 それはとっくに七不思議を超えていて、私が知る限り50個はあったのです。 その中に『逆上がりさん』という七不思議があって、当時…

女性のシルエット(フリーイラスト)

妻の生き霊

日曜日の朝、昼まで寝ていた俺はボーっとしながらリビングへ向かった。 トントンと包丁の音がする。台所では妻が昼飯を作っているようだった。 テレビを点けて携帯を見ると、一昨日内…

牛(フリー写真)

ミチ

私の母の実家は一度、家が全焼してしまう大火事に遭いました。 当時住んでいたのは、寝たきりのおばあちゃんと、母の姉妹6人だけ。 皆が寝付いて暫く経った頃、お風呂を沸かすために…

旅館(フリー写真)

いにしえの宴会

旅行先で急に予定が変更になり、日本海沿いのとある歴史の旧い町に一泊することになった。 日が暮れてから旅館を予約したのだけど、シーズンオフのためか、すんなり部屋が取れた。 …

河原(フリー写真)

同じ夢

これは四つ下の弟の話。 当時弟は小学4年生、俺は中学2年生、兄貴は高校一年生だった。 兄貴は寮に入っていたから、家に帰って来ることは殆どなかった。 俺は陸上部に入っ…