バンザイ

公開日: 不思議な体験 | 心霊体験

frenchguianacanopy-405002-lw

何年か前、仕事の関係でマレー方面へ行った時の話だ。

その日、仕事も一段落したので近くにある大きな公園で一休みをしていた。

公園と言っても遊具は無く、ただ異常に広い原っぱが広がっているだけだ。

ベンチに座り、地元のガイドと談笑していた時にそれは起きた。

遠くの方で微かに、しかし確実にセスナ機が飛ぶようなエンジン音が聞こえてくる。

1機や2機といった数ではない。

やがて「それ」は姿を現した。

軽く50機はあるプロペラ機の大編隊が、向こうの森から姿を現した。

しかし日光の影響でシルエットしか分からず、飛行機がどのような種類の物かは分からない。

ただ唯一分かるのは、左右の翼にエンジンが一つずつ付いている双発機だということだ。

身動きどころか喋ることも出来ず、私は黙って「それ」を見つめていた。

やがて、それぞれの飛行機から人が飛び降り始めた。

合わせて数百人もいただろうか…。

そして、シュルシュルと落下傘が開いて着地した。

その瞬間である。

「バンザァァイ!」という歓声と共に、自分の方に全ての人影が向かってきた。

何がなんだか分からないまま、私はベンチの下に慌てて隠れた。

途端に、鼓膜が破れるかとばかりに聞こえていた歓声がぴたりと止んだ。

顔を上げてみたが、あの飛行機も、数百の人影も綺麗に消えていた。

ガイドは「よくある事だ」とぽつりと漏らした。

以前に、あそこで何があったかは私は何も知らない。

関連記事

ある番組のお蔵入りになったテープの話

20年程前の事なのですが、当時私は番組制作会社のADをしていました。 女性アイドルと霊能力者が、心霊スポットを検証する番組の収録の時の事ですが、そのアイドルが現場で突然白目になっ…

縁の下

あるタクシー運転手の奥さんが、まだ5才になったばかりの子を残して亡くなってしまった。 父親は仕事柄出掛けている時間が長く、そのあいだは隣の家に子どもを預けていた。 しかし、…

ホテルの部屋(フリー写真)

有名な幽霊ホテル

知り合いの女性から聞いた話。 道後温泉の奥手にあるO道後温泉。幽霊が出るホテルがあることで、とても有名な場所。 そこのK館の50X号室に、彼女ともう一人の女性が泊まることに…

きょうこさん

異界の名を呼ばれた日 ― きょうこさん

「これまで、いろんな霊体験をしてきたって言ってたけど、命の危険を感じるような、洒落にならないくらい怖い体験って、ある?」 ある日、ふとした会話の流れで、以前付き合っていた“霊感…

霧のかかる山(フリー写真)

酒の神様

去年の今頃の時期に結婚して、彼女の実家の近くのアパートに住んでいる。 市内にある俺の実家から離れた郡部で、町の真ん中に一本国道が通っており、その道を境に川側と山側に分かれている。…

夜の寝室(フリー素材)

霊感の強い先輩

私が中学2年生の時、同じ部活に『自称霊感が強い』先輩が居ました。 私は当時、あまりそういうオカルト的なものは信じていませんでした。 ですので、その先輩の体験した話なども半…

クローゼット(フリー画像)

ユダヤ人の隠し部屋

大学の夏休みに友達二人とドイツ郊外へ旅行に出掛けました。 小さな民宿に泊まり、その次の日は早朝からドライブする予定だったので皆んなで早めに床に就いたのですが、夜中に友人が魘されて…

磨りガラス(フリー素材)

ガラス戸の向こう

この事件が起きるまで、俺は心霊現象肯定派だった。でも今は肯定も否定もしない。 今から十二年前、俺は仕事の都合で部屋を引っ越すことになった。 その部屋は会社が用意したもので、…

街のショップ

開かない自動ドア

大学二年生の夏休みが近づいた頃、私に不思議なことが起こり始めた。 突如、コンビニやスーパーなどの自動ドアが私に反応しなくなったのだ。 以前は普通に使えていたコンビニの自動…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…