見えない壁

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

wallpaper240_640_1136

数年前の話。

当時中学生だった俺は雑誌の懸賞ハガキを出すために駅近くの郵便局に行く最中だった。

俺の住んでる地域は神奈川のほぼ辺境。最寄り駅からまっすぐ出ているような大通りでもあんまり人気や車がこない。

そのときは確か当時出たばっかの iPodを購入したばっかりで、それをいじって歩いてた。

ろくに前なんか見てなかったんだけど、郵便局まであと数十メートルってとこの路上で、いきなり頭から何かにゴツンッ!と突っ込んで思いっきり尻餅をついてしまった。

てっきり人にぶつかってしまったんだと思った。

慌てて「すみません!」って謝りながら立ち上がろうとしたんだけど、周りを見ても誰もいない。

障害物があるわけでもなく、いつも通りの景色が見えるばかりだった。

困惑しながら、誰も見てなかったかなぁと再び歩こうとしたら、最初の一歩を出した瞬間、ゴツッと石にぶつかるような音で空を蹴り飛ばした。

「はぁ?」って思わず声に出してしまったと思う。目の前には何もないはずなのに、これ以上進めない。

RPGとかアクションゲームでよくあるじゃん、町の中を歩いてて、イベントとかで行けない場所があると見えない壁に阻害されるの。

その壁っぽいのは完全に透明で光に反射とかもしてなくて、手で触ってみたら大理石みたいな感触だった。

で、前記の通り田舎だから、そんときも壁の向こう側に人が何人か歩いてる感じで、こっちが手をふったりしても向こうの人は全然気付いてないみたいだし、仕方ないから別の道を探すかーってぐらいの軽い感じで来た道を引き返したんだよ。

そんで、壁に背を向けて歩き始めて1分もしないうちに、前の方から赤いスポーツカーが結構な勢いで走ってくるのが見えた。

割とスピード違反な感じで、そのときは急いでるのかなぁとしか思ってなかったんだけど、その車が俺とすれ違ったときに、あの見えない壁とぶつかったらどうなるんだろうって一瞬で青ざめた。

あんなスピードじゃもう間に合わないだろうって直感で脳が回転して、握ってた iPodを急いでポケットにしまって駆け出した2〜3秒後に

「ガッシャアアアアアアアンッッ!!」

ってもの凄い轟音と、壁の向こう側からその轟音に負けず劣らずでかい悲鳴が聞こえた。

思わず一瞬だけ振り向いてしまったけど、赤い車が道路の前で停止していたのがチラッ見えただけで、殆ど何も覚えてない。

すぐ前方を向いて無我夢中で家に逃げ帰った。

翌日、地元の新聞に小さく「駅前の道路で事故、1人死亡」とだけ載っていて背筋が寒くなった。

それ以上のことは何も書いてなくて、両親や学校の友人に教師も事故について喋ってる人はいなくて、 それっきり見えない壁も現れなくなった。

関連記事

キャンプ場(フリー素材)

黒い石

大学時代のサークル活動で不思議な体験をした。 主な登場人物は俺、友人A、先輩、留学生3人(韓国、中国、オーストラリア)、友人Aの友達のアメリカ人、他は日本人のサークルメンバー。 …

海から来たるもの

普段付き合いのいい同僚が、何故か海へ行くのだけは頑として断る。 訳を聞いたのだが余り話したくない様子なので、飲ませて無理やり聞き出した。 ここからは彼の語り。ただし、酔って…

夜の工場

深夜の国道と消えた時間

昔、私は某電機機器メーカーの工場で派遣社員として働いていたことがありました。 三交代制の勤務で、その週は準夜勤、つまり17時から深夜0時30分までのシフトに入っていました。 …

お地蔵様(フリー写真)

英語地蔵

墓石に混ざって、お地蔵様のような、奇妙な仏様か道祖神のような石が奉られている墓地がある。 それは墓石の一種らしく、それも奉られてたり墓石扱いされていたりするのだが、かなり異様。…

京都のお寺(フリー写真)

ミルクキャラメル

小学1年生の頃、よく自分の家のお墓があるお寺で一人遊んでいた。 池の鯉を見たり、お寺に飼われていた猫のミケと遊ぶのが楽しかった。 じいちゃんのお墓参りをして、周りに生えて…

優しい抽象模様(フリー素材)

ともだち

最近、何故か思い出した。子供の頃の妙な「ともだち」。 当時の自分は両親共働きで鍵っ子だった。とは言っても託児所のような所で遊んで帰るので、家に一人で居るのは一時間程度。 そ…

アパートのドア(フリー写真)

異界の部屋

当時はアパートに住んでいて、その頃に体験した不思議な話。 母ちゃんに頼まれ、回覧板を他の部屋に渡しに行った。 さっさとドアのポストに回覧板を入れ、自分の部屋に帰って行った…

蛍(フリー写真)

お面

大学生時代のバイト先だったバーのお客さんの話です。 Kさんはその店に割とよく来るお客さんで、当時20代後半の会社員。僕と同じ茨城出身の人でした。 ちょうど今頃の季節で『蛍…

鳥居(フリー素材)

カキタ様

俺が田舎に転校していた頃の話。 俺の家庭は当時ごたごたしていてさ。それが理由で学校とか行きづらくなっちゃって。 友達は「気にすんなよ、一緒に遊ぼうぜ」と言ってくれるんだけど…

旅館(フリー素材)

お気遣い

私は趣味で写真を撮っています。 主に風景ばかりで、休みが取れた時は各地を回っているのですが、その時に宿泊した民宿での体験です。 ※ その日、九州の方に行っていたのですが、天候…