空白の友人

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

マスク(フリーイラスト)

偶に記憶の空白が訪れる。

正確に言うと、「気付いたらいつの間にか数時間が経過していた。そして、ついさっきまで自分が何をしていたのかが判らない」というものなんだけど。

まあ、この程度のことはよくある話だし、仕事中や車の運転中になったことはないので、大して気に留めていなかった。

今までは…。

2ヶ月くらい前の休日。暇だしゲーセンでも行くべーと家を出たところまでは覚えていたんだが、気が付くと駅近くのスタバでコーヒーを飲んでいた。

家を出たのが11時頃、我に返った時刻が14時半ぐらいだった。

ちょうど仕事関係でごたごたが続いていた時期でもあったし、「疲れてんなー、俺」ぐらいにしか思わなかった。

翌日会社へ出勤。

同僚の女の子から「昨日の昼頃、駅前のスタバにいたでしょ?」と言われた。

俺「あー、いたかも」

同僚「一緒にいたお友達、結構いい男じゃん。今度紹介してね~」

俺「は?」

同僚「冗談、冗談。でもちょっと本気(笑)。長身・ロンゲでユニセックスって、ちょっと私的にツボだから」

誰それ? 長身? ロンゲ? そんな友人に心当たりはありません。

俺「声かけてくれれば良かったのに」

同僚「いやー、思い出話で盛り上がってるところだったから、邪魔しちゃ悪いかと」

詳しく聞くと、どうやら俺とそいつは近所の川でザリガニ釣りをした時のことやら、駄菓子屋でくじを当てるためにした無駄な努力などについて盛り上がっていたらしい。

同僚が嘘を吐いているとは特に理由がないので思わないが、俺には全くそいつに心当たりはない。

その場は何とかお茶を濁して終わりにしたものの、どうも釈然としない。

そして、今年のGW。連休らしい連休もなかったので、実家に帰らず街をぶらぶらしていたら、また3時間ほど記憶が飛んだ。

今度は行きつけのゲームショップに入ったところから、駅前の噴水で一服していたところまでの記憶がない。

数日後、大学時代からの腐れ縁の友人からの電話。

友人「そーいえばさー。お前この間の5日に○○駅前にいただろ?」

俺「いたけど?」

友人「いやー、そん時のお前のツレな、すらっとした長身でロングヘアだったから、俺思わず『Y(俺のこと)のヤツ、モデルの彼女でもできたんかー!』とびっくりしちまったけど、よく見たら男だったから安心しちゃったよ(笑)」

俺「……(汗)」

風貌などを聞くと、どうやら先の人物と同一のようだ。

でも、俺には全く心当たりがないんです。

小学校時代のアルバムを引っ張り出してきて、仲の良かった子などを思い出してみたけど、該当者が思い当たらない。

お前は誰なんだよう。

関連記事

白猫(フリー写真)

先導する猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

雪景色(フリー素材)

もどり雪

一月の終わり、山守りのハルさんは、山の見廻りを終えて山を下っていた。 左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。 ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だ…

公園

公園の友達

お盆の季節になると、私はある思い出をよく振り返る。 私が小学2年生のころ、タケシという友達と日々一緒に遊んでいた。 我々のお気に入りの場所は川の近くの公園で、日が暮れるま…

女性のシルエット(フリーイラスト)

妻の生き霊

日曜日の朝、昼まで寝ていた俺はボーっとしながらリビングへ向かった。 トントンと包丁の音がする。台所では妻が昼飯を作っているようだった。 テレビを点けて携帯を見ると、一昨日内…

教室(フリー素材)

消えた同級生

小学2年生の時の話。 俺はその日、学校帰りに同じクラスのS君と遊んでいた。 そのS君とは特別仲が良い訳ではなかったけど、何回かは彼の家にも遊びに行ったし、俺の家に招いたこと…

竹林(フリー写真)

告別式の帰りに

可憐な女子高生だった頃の話です。 中学時代に親しかった友達が亡くなり、当時の担任の先生と一緒に告別式に出た帰りのことでした。 私は友達が亡くなったことがショックで、泣いた…

アカエ様

俺が小学校低学年の頃の話。と言っても、もう30年以上前になるけどな。 東北のA県にある海沿いの町で育った俺らにとって、当然海岸近くは絶好の遊び場だった。 海辺の生き物を探し…

林(フリー写真)

お姉ちゃんと鬼ごっこ

神隠しみたいなものに遭ったことがある。小学一年生の夏休みのことだ。 実家はいわゆる過疎地にあり、地域には同い年の子が数人しか居なかった。 その日は遊べる友達が居なかったので…

夕日(フリー写真)

歳を取らない巫女様

昔住んでいた村に、十代の巫女さんが居た。 若者の何人かはその人のお世話をしなければならず、俺もその一人だった。 その巫女さんは死者の魂が見えたり、来世が見えたりするらしかっ…

絵皿

喋る絵皿

小さい頃、祖父が友人宅から鷹の絵の描かれた大きな絵皿を貰ってきた。 それは今でも和室に飾ってあって、特に怪奇現象を起こしたりはしていない。 祖父の友人は骨董商だった。 …