嫁姑

公開日: 心霊ちょっと良い話

おばあさんの手(フリー写真)

10年程前、祖母が死去。死因は肺炎。寝たきりの老人の方には多いらしい。

祖母は亡くなる三年程前から痴呆が始まり、徘徊したり家中で排泄したり大声を出したり、それは大変だった。

その頃、私は仕事で転勤中のため自宅には居らず、両親と兄が一緒になって世話をしていた。

特に母親は、虐められた事を忘れたかのように一生懸命介護していた。

祖母は徘徊している時に怪我をし、そのまま寝たきりになってしまった。

母親は祖母の横に眠り、まるで我が子のように一緒に居た。

元気な頃、祖母は近所中に母親の悪口を言い回っていたのだけど、痴呆が始まってからは、何故か母親の悪口を言う人に対して怒鳴っていた。

理由は判らないが、

「あの子は私の娘、いやそれ以上だ」

と言っていたらしい。

そんな生活が続き、家族中が疲れ果てた頃。

私はまた転勤になり、今度は自宅から通える場所へ移った。

それを知ってか知らずか、祖母は泣いて喜び、私を離さなかった。

祖母は、私に小遣いをくれると言っていた。

しかし祖母の本当の娘達、その子供達にお金や金品は取られたらしい。

母親も、

「実の娘だから強く言えなかった」

と言っていた。

祖母は、お金やその類の物が全て失くなっている事に気が付いていなかった。

祖母のお金が無くなると、実の娘達は全く連絡をよこさなくなった。

そして祖母は亡くなった…。

我家は結構大きな敷地で家も大きい。

相続の問題が出て来た途端に実の娘達の登場…。

嫌な空気が流れた時、母親がキッパリと言った。

「この家は、祖母がきちんと渡すべき人に渡すようにしているはずだ」

と言った。

我々の知らない間に祖母が名義変更してくれていたらしく、名義は随分前に父親になっていた。

不思議なのは、母親がこの発言をした事を覚えていない事。

実の娘達に逆らった事が無い母親が初めて逆らい、皆驚いたと同時に、その時の顔が祖母に見えたと話していた。

葬式が終わり片付けをしている時、ふと祖母が私を呼んでいるような気がした。

はて、何だろう…と声のする場所へ行くと、両親それぞれの名義の預金通帳があった。

祖母は生前、

「自分の葬式代くらいは自分で用意するように」

と口うるさく言っていた事を思い出した。

そのお金で仏壇やら何やら購入し、全て祖母に使う形になった。

残りは法事の時に使うようにと、そのまま残した。

それから不思議な事に、その娘達には何やら色々と大変な問題が起きている。離婚やら病気やら借金やら…。

内一人は旦那様が亡くなり、自宅も失くなってしまった。

現在は何処に居るのかも知らない…。

私達家族は、その逆に幸せな日々を過ごしている。

良い話かどうかは疑問なところだが、最近母親が妙にしっかりして来ている。

祖母が憑いているのか、付いているのか…。

嫁姑でも、実の親子以上の関係になれるのだと思った。

関連記事

空(フリー写真)

爺さんの教え

学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。 悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。 「人前で泣くな」 が爺さんの教えだったから。 ※ 数日後、母か…

田舎の夏

夏の約束

夏が近づくと、ふと思い出すことがある。 中学生だったある夏の日、私は不思議な体験をした。 当時、世間の同世代が夏休みを謳歌する中、私はサッカー部の一員として遠征続きの毎日…

タヌキの神様

俺の姉貴は運が良い人間だ。 宝くじを買えば、ほぼ当たる。当たると言っても、3億円なんて夢のような当たり方ではないのが残念なところだ。 大抵 3,000円が当たる。何回当たっ…

綺麗な少女

夏が近くなると思い出すことがある。 中学生の時、ある夏の日のことだ。俺は不思議な体験をした。 夏休みを迎えて、同世代の多くは友達と遊んだり宿題をやったりしていただろう。 …

体温計(フリー写真)

太いお姉ちゃん

去年の話なのだが、5歳の娘が急に高熱を出し、慌てて近くの病院へ連れて行った。 そして風邪と診断され、処方された薬を3日間飲ませていたが、症状は一向に良くならず。 『ひょっと…

椅子(フリー写真)

おかんの夢

おかんが癌で亡くなって6年になる。 癌を見つけた時にはもう余命一年の宣告。 親父と相談の上、おかんには告知しなかった。一年間、騙し続けた。 私はその時、二番目の子供を…

ひよこ(フリー写真)

変り種の相棒

12年前、近所の社の祭でヒヨコを釣ったんだわ。体が歪んでいて、少し変わった形をしていた。 それでも懸命に俺の後を付いて来る姿がいじらしくて、散々甘やかし、可愛がって育てた。 …

おじいさん(フリー写真)

おんぶしてあげるよ

去年、祖父が亡くなりました。 僕は祖父にはよく可愛がってもらっていましたが、何の恩返しもできないまま逝ってしまいました。 不思議な体験というのは、その祖父の葬儀の時に起こり…

着物を着た女性(フリー写真)

止まった腕時計

友達のお父さんが自分にしてくれた話。 彼には物心ついた頃から母親が居なかった。 母親は死んでしまったと、彼の父親に聞かされていた。 そして彼が7才の時、父親が新しい母…

愛猫の最後の挨拶

うちの両親が体験した話。 もう20年も前の夏のことです。 私達兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていた夜、当時とても可愛がっていた猫がいつまで経っても帰ってこな…