最後の宿題

公開日: 心霊ちょっと良い話

教室と黒板(フリー写真)

俺の友達は、昔風に言えばヤンキーだった。

高校もろくに行かず、友達と遊び回っていたそうだ。

先生達は皆サジを投げていたそうだが、友達の担任の教師だけはそうではなかった。

かなりの豪傑だったらしく、何事にも熱心に取り組む先生だったらしい。

幾度となく留年の危機に瀕した友達を叱咤激励してくれたそうだ。

友達はその分、反抗もしたみたいだけど。

先生のおかげか、そいつの頑張りかは分からないが、友達は高校を卒業してとある土木会社に就職した。

そして去年の10月頃に不思議な夢を見たらしい。

高校の教室、辺りはぼんやりとしていて、何人かの生徒の姿が見える。

教壇にはニカッと笑った先生の姿があった。

その先生は突然、黒板に『自習』という字を書くと、

「明日から休みになるが、宿題がある!」

と叫んだ。

友達が「えーっ!」と声を上げると先生は笑って、

「俺からの最後の宿題だ。幸せになれ」

と言ったという。

目が覚めた後も何となく変な感覚があった、と友達は言っていた。

そしてその日のお昼頃、そいつは突然先生の死を知らされたそうだ。

俺は原因は知らないが、急死だったらしい。

この間、飲みの席で「俺の先生の命日だったんだ」と、その話を聞かせてくれた。

いつもは強気で口調の荒いそいつが声を殺して泣いているのを見て、先生の最後の宿題を、こいつはちゃんと続けているんだなと思った。

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