おんぶしてあげるよ

公開日: 心霊ちょっと良い話

おじいさん(フリー写真)

去年、祖父が亡くなりました。

僕は祖父にはよく可愛がってもらっていましたが、何の恩返しもできないまま逝ってしまいました。

不思議な体験というのは、その祖父の葬儀の時に起こりました。

背中にちょうど人一人がおぶさっているような、そんな感触があるのです。

その背中の重みは葬儀の最中続き、お坊さんのお経の最後の『引導』が終わった後に無くなりました。

その時は『何だったんだろう?』くらいにしか思いませんでした。

それから葬儀が終わり、皆で祖父のことを話している時に、あることを思い出しました。

それは、僕がまだ小さかった頃のことです。

祖父の家に遊びに行った時、僕はよく祖父におんぶしてもらっていました。

そんなある日、ポツリと祖父が言うのです。

「重くなったなあ。これじゃあもう、おじいさんおんぶできなくなっちゃうなあ。今度はおんぶしてもらわないとなあ」

僕はそれを聞いて、

「じゃあ、大きくなったらおんぶしてあげるよ」

と答えました。

結局、その約束は祖父が生きているうちは果たされることがありませんでした。

今ではその葬儀での出来事は、その約束のことだったんだなと思っています。

ちょっとした恩返しができたと思いました。

ありがとう、お祖父さん。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

蝋燭(フリー写真)

お地蔵さん

私の地元では年に2回「お地蔵さん」という行事と言うか、お寺のお参りイベントみたいものがあるんです。 あるお寺に行き、あの世で幸せにしていて欲しい亡くなった方の名前を読み上げて、…

サーバールーム(フリー写真)

サーバーからのメッセージ

心霊ではないかもしれないけど、一つ不思議な体験があります。 俺は某会社でシステム関連の仕事をやっているのだけど、先日、8年間稼働していたサーバーマシンが壊れてしまった。 こ…

地下鉄(フリー写真)

目に見えない存在の加護

その日はいつも通りに電車に乗って会社へ向かった。 そしていつものようにドアに寄り掛かりながら外の景色を眺めていた。 地下鉄に乗り換える駅(日比谷線の八丁堀駅)が近付いて来て…

古民家(フリー写真)

祖父母の人生

私のおじいちゃんとおばあちゃんの話。 この間、おばあちゃんの家に泊まった時にしてくれた話です。 ※ おばあちゃんは生まれつき目が悪かったんだけど、戦時中は9人居る兄弟の為に働…

恋人(フリー写真)

本当の霊視

とある心霊系のオフ会に参加した時の話です。 私は霊感がある(手品も上手い)Tさんの車に乗せてもらい、スポットを幾つか回りました。 不思議なのはその人の会話です。 話題…

台所(フリー写真)

おばあちゃんの料理

十年以上寝たきりで、最後の方は痴呆になってしまっていたおばあちゃん。 帰省してお見舞いに行った時、私の名前も分からなくなった祖母の傍にいるのが辛くて、 「もういいよ」 …

河原(フリー写真)

猫のみーちゃん

私がまだ小学生の頃、可愛がっていた猫が亡くなりました。真っ白で、毛並みが綺麗な可愛い猫でした。 誰よりも私に懐いていて、何処に行くにも私の足元に絡み付きながら付いて回り、寝る時も…

人形釣った

俺は東京で働いていて家庭を持ってたんだが、2年前からちょっとキツイ病気になって、入退院を繰り返した挙句会社をクビにされた。 これが主な原因なんだが、その他にもあれこれあって女房と…

火事(フリー写真)

男の手

俺に父は居ない。 俺と双子の妹が生まれるずっと前に癌に罹り、俺たち兄妹が生まれて暫くしてから亡くなったらしい。 ※ 俺たち兄妹が小学生になったある日。 学校から帰っての…

住宅(フリー写真)

苦労かけるな

夜に2階の自室で、一人で本を読んでいた時のこと。 実家は建てた場所が悪かったのか、ラップ現象が絶えなかった。 自分は単に家鳴りだと思っていたのだが、その日はポスターから音が…