12年前、近所の社の祭でヒヨコを釣ったんだわ。体が歪んでいて、少し変わった形をしていた。
それでも懸命に俺の後を付いて来る姿がいじらしくて、散々甘やかし、可愛がって育てた。
俺が学校から帰って来るとすぐ膝の上に乗ってきてさ、うとうとし始めるんだよな。
でもな。寿命ってあるんだよな。どんなヤツにもさ。冷たくなって行くアイツを抱えて、すっげぇ泣いたよ。
でも月日が流れると忘れるんだよな。忙しさなんかに負けて。
※
その頃は仕事で散々悩んでいて、精神的に切羽詰まっていた。限界が来ていたんだと思う。
ある日、熱を出して寝込んでいたら、胸の上に軽い重みを感じてさ。それと同時に何かがぺったりと喉にへばり付くんだよ。
その瞬間、思い出せた。アイツの重みと鶏冠の感触。甘えるようにいつもそうやって俺の上に乗ってきていたヤツの重みだ。
涙が止まらなかった。そんなに心配をかけていたのかと思うと。
※
俺は思い切って転職した。今、別の会社で頑張っている。
多分、あれは幻覚だと思う。結構熱が高かったから。
それでも俺はもう忘れない。変り種の相棒の事だけは。
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