川辺で会ったおじさん

渓流(フリー写真)

小学5年生の頃、隣のクラスに関西からの転校生S君が来た。

ある日の昼休み、体育館の片隅でS君がクラスの野球部数名から小突かれたりして虐められているのを発見した。

俺は当時、身体が学年で一番大きく空手もやっていたので、

「お前ら、何やってんだ!やめろ、ばかやろー」

と割って入った。

野球部の連中は、

「遊んでるだけだよ~。邪魔すんなよ~」

と言ったが、何だか無性にムカついたので蹴りを食らわせてやった。

すると野球部の連中はS君を置いて逃げて行った。

それからS君と少しだけ会話をして、その時は終わった。

※

数週間後、帰宅時にうちの近所でS君とばったり会った。

「こないだはありがとう。

俺、転校して来てからとにかく虐められんねんけど、こないだ助けてくれたおかげで、あれからはただ無視されるだけになってん。

俺としてはそっちの方がええから、ほんま助かった。

うちのマンションすぐそこやから、寄ってってや」

と言われ、マンションに上げてもらった。

上がるとお母さんが、

「あんた友達できたの、良かったわ~」

と言って喜び、俺に色々話し掛けてきた。

結局それが切っ掛けでお互いの家を行き来するようになり、よく遊ぶようになった。

それは6年生になっても変わらなかった。

釣りを教わったりチャリで遠出したりと楽しかった。

※

6年生の夏休みに入る少し前に、S君から

「また転校するんやけど」

と言われた。

お父さんが金融の仕事をしているので転勤が多いらしい。

がっくりしたけど、夏休みに最後、また釣りに行くことに決めた。

※

釣りの日の数日前、S君が晩飯時に突然、我が家に来た。

「実は、釣りの日に離れることになってしまって、だから挨拶に来たんよ。釣り行けなくてごめんな」

と…。

わざわざ、プレゼントまで持って来てくれた。

会うのはそれが最後になってしまった。

※

釣りはちゃんと準備していたから、当日は俺一人で遠出して行った。

でも一人で釣りをしていても何だかつまらなくて、『今頃、新幹線乗ってるのか』などと考えていた。

腹が減ったので持参のおにぎりを食べている時に、ふと気付くと横におじさんがしゃがんでいる。

目が合うと、

「ほんまありがとな」

と言われた。ボソッと。

俺は当然『誰だこの人?』と思い躊躇した。

次の瞬間、強い日差しがバーッと正面から来たので、俺は手で顔を覆った。

ふと目線を戻すとおじさんは居なかった。

辺りを見渡してもおじさんは居なかった。誰も居なかった。

走ってその辺を見たんだけど、俺しか居なかった。

※

家に帰ってそのことを父に話すと、

「一人で釣りになんか行くからだ。変なヤツが多いんだよ最近」

と言われ、一人で釣りに行くのは禁止になってしまった。

それまではS君としか釣りには行っていなかったので、それ以降、釣りは一切やらなくなってしまった。

ただ、僅か数秒だがとても不思議な時間だったように感じたので、そのおっさんの顔はちゃんと覚えていた。

※

それから20年後。去年のこと。

某サイトで、会員制の同窓会サイトがあることを初めて知った。

登録して見ていたら、S君が

「一年程しか居なかったけど、僕のことを覚えている方はいらっしゃいますか」

といった内容の投稿を掲載していた。驚いた。

それで俺からコンタクトを取ってみると、すんなり返信が来た。

お互いにとても喜び、偶にメールで遣り取りをするようになった。

S君は自分で会社を立ち上げ、頑張っているそうで何より。

※

ある日、うちの地元でお祭りがあり、写真を撮った。

それをS君にメール添付で送ってあげた(俺は母と同行したもので、祭りをバックに二人を撮った写真)。

※

数日後、S君から返信が来た。写真添付あり。

妻子と、大分禿げ上がったS君。相変わらず眼鏡。

文章には、

「柴ちゃん(俺)はまだ若いね。羨ましい。

俺は遺伝が早くも来ました。若禿げです。驚きでしょ?

苦労も多いので、これからどんどん進行するでしょう」

とある。

俺はその返信を笑いながら見ていたんだけど、

『あ!あの時のおっさんに似ている』

と思った。あのおっさんも眼鏡だった。

それで何とも言えない気持ちなり、S君に当時のことをメールした。

※

どんな返事が来るかと待っていたら、ちゃんと来た。

「最後、釣りに行けなかったのは覚えてます。

あれからうちの父が出世して転勤が無くなったので、あれが最後の転校だったから、ちゃんと覚えてる。

離れる時に新幹線の中で泣きっぱなしでした。

柴ちゃんが見たおっさんは、何だろうね。

会社を立ち上げる時に著名な人に相談したんです。

霊視も出来る人だそうで、起業支援者に誘われて行ってみたら、

『あなたのことを、あなたにそっくりなひいおじいさんが日々守ってくれています。生まれた時からです。だから墓参りなどはちゃんとしてあげてください』

みたいなことを言われたんだけど、そのひいおじいさんかな?

柴ちゃんは俺のことを守ってくれたから、感謝したのかもね。

ちなみに俺が小さい頃、もう記憶に無いけど風呂場でそれらしき人を見たことがあるらしく、うちで話題になったって聞いた」

※

そんなこんなで、俺が川で会ったのは多分そのひいおじいさんなのかなと思う。

霊体は水がある付近でよく出るというのを聞くけど、そういうことなのでしょうか。

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