護衛機

公開日: 心霊ちょっと良い話

戦闘機(フリー写真)

爺ちゃんから聞いた話。

俺の爺ちゃんは戦争中、爆撃機で司令官を運ぶパイロットだった。

もちろん護衛に戦闘機を引き連れてだけど。

戦争で戦友が次々死んで行く中で、爺ちゃんの一番親しい友達も死んでしまった。

戦局が悪化して護衛の戦闘機が乏しくなった中、護衛が一機という悲惨な状態に。

そんなある日、突然米軍の戦闘機二機に襲われた事があった。

その時、死んだ筈の友達の声で「オイ!!」と聞こえ、咄嗟に旋回してギリギリ銃撃をかわしたらしい。

米軍の一機は護衛機が追い払ったが、もう一機はどこから来たのか分からない友軍機が火を吹きながら追い掛け、米軍機は勝手にジャングルへ墜落した。

その後、友軍機は爺ちゃんと護衛機と並行して飛んでいたのだが…。

機体のナンバーが死んだ友達のものだった。

全てを察して爺ちゃんが敬礼をすると、友軍機は火を吹きながら上昇し、雲の中へ消えたそうだ。

爺ちゃんは今でもその友達の墓参りに行っている。

余談

爺ちゃんは勿論まだ健在。85歳だけど元気過ぎて困る。

戦後長らくバスの運転手をしていて、現在も頼まれればボランティアでバスの運転手をしている。

爺ちゃんは現在も死んでしまった友達の家とは交流がある。

その友達の家は広大な山を持つ家だそうだけど、戦時中資源調達の為にはげ山になり、男衆が殆ど死んでしまった。

だからその家のために、友の恩に報いるために、復員後、暇を見つけては植林をしていた。森になるまで30年も!

馬鹿な孫(俺)はそんなことなど知らず、その山で走り屋ごっこして遊んでいました。

あの立派な木々が、爺ちゃんが植えたものだったと知って感動した。

出来れば爺ちゃんの精神の一部でも受け継ぎ、立派な人間になりたいと心から思う。

関連記事

古いキーボード

あの世からの最後のメール

この話は7年前の出来事です。 当時、インターネットはまだ普及しておらず、私はパソコン通信を利用していました。 クローズドの掲示板のような場所で仲良くなった人たちと、オフラ…

白無垢の花嫁

白無垢の花嫁さん

俺がまだ小学低学年の頃に体験した話。 俺の家は当時、夏になると田舎に帰っていたんだよね。 そんな時に必ず泊まる小さな民宿があるんだ。 各部屋の入り口はドアではなく襖…

油絵の具(フリー写真)

母の想い

子供の頃、家は流行らない商店で貧乏だった。 母がパートに出て何とか生活できているような程度の生活だ。 学校の集金の度に母親が溜め息を吐いていたのをよく憶えている。 別…

賽の河原(フリー写真)

賽の河原

自分は子供の頃は凄く病弱で、しょっちゅう寝込んでいた。 幼稚園の頃に風邪を酷くこじらせた。 寝ている時に夢を見たのだけど、どこかの河原にぽつんと一人で立っている。 …

庭に咲く花(フリー写真)

光る玉

私の母は私を産む前に二度流産しており、三度目(私)の時も、何度か駄目になりかけていたそうです。 妊娠4ヶ月頃の時も、やはり体調を崩して流産しかけたらしいのですが、その時、庭で二人…

夜のオフィス(フリー素材)

中小ソフトウェアハウス

中小ソフトウェアハウスに勤めていた友人Kの話です。 あるプロジェクトの納期がきつくデスマーチとなり、Kとその先輩は連日徹夜で作業していたそうです。 ところが、以前のプロジ…

女性の後ろ姿(フリー写真)

ドライブの夢

3年前に昔の彼女が死んだ。信号無視の車に轢かれ、打ち所が悪かったのだ。 当時は既に別れていたから、友人から聞き葬式には出席できた。 復縁して別れた彼女だったのだが、一回目…

金木犀(フリー写真)

金木犀の苗木

両親を事故で亡くした俺には、9歳離れた姉貴が居た。 子供の頃、肥満気味で両親が居なくて虐められていた俺を、いつも助けてくれた。 優しくて、強くて、俺の自慢の姉貴だった。 …

吹雪(フリー写真)

大型トラックの男性

親父から聞いた話です。 昔、親父が雪深い山の現場でバイトしていた時の事。 妻子を置いて季節労働に来ている男性が居て、皆から頼られるリーダーとして現場を仕切っていました。 …

病院(フリー背景素材)

みほちゃん

看護学生の頃、友達と遊びに行った先で交通事故を目撃しました。 勉強中の身ではあったのですが、救急隊員が駆け付けるまでの間、友人の手も借りながら車に撥ねられた女の子の応急処置をしま…