動物たちの宴会

公開日: 心霊ちょっと良い話

高野山(フリー写真)

私は仕事の関係で、アジア圏を中心に出張や短期駐在に行くことがあります。

こういう生活を続けるとかえって日本の風物が懐かしくなるもので、今の趣味が休日利用の温泉や神社仏閣巡りが中心になってます。

それで去年の夏、高野山に行って来ました。

そこの奥の院という所は、色々なお墓があることで有名な霊域です。

そこに行ったらどうしても足が横道に逸れ、私には関係のない墓に立ち止まってしまいます。

ああ、引っ張られているなと思いましたが、これも何かの縁と般若心経を唱えました。

そしたら次もまた引っ張られて心経、また引っ張られて心経と繰り返していました。

幾つくらい廻ったのか分かりませんが、奥の院という所は、入り口から弘法大師の眠る御廟まで一時間強もあれば帰って来られる所です。

しかし私はそんなことをしていたため3時間半ほどかかりました。

実はここに来るまで左肩がやたら重かったのですが、一つ一つそうした墓や碑を過ぎる度に軽くなってきたことも憶えています。

そして其の夜、旅先の旅館で夢を見ました。

その夢は馬や牛、イヌ、鳥、珍しいところではもぐらやカワウソみたいな沢山の動物たちと一緒に、円座になって酒を飲み歓談しているものでした。

人間は私だけでしたが、覚えているのはつまみは枝豆と豆腐くらいしかなかったことかな?

さすが動物宴会だ、肉が無い、と変に感心しながら楽しんでいました。

霧のようなものが出て来たので、

「そろそろお開きだ」

とお馬さんが言い出し、みな片付けをし始めました。

そして皆こちらを向き、

「ありがとう」

と挨拶。

「え、俺、何もしてないよ」

と言いながら視線を彼らに向けると、皆人間の姿になっていました。

軍服を着た人、レトロな背広を着た人、ドカチンスタイルの人、モンペを着た女性が十数名、手を振りながら霧の中に消えて行きました。

そこで目が覚めました。

あまりに強烈な夢だったので、モーニングを食べながら色々考えていましたら、昨日の高野山の一件を思い出しました。

そう言えば昨日いっぱい拝んだ墓は『海外物故者』『航空兵』『近衛兵』『陸軍○○』『海軍○○』と書いてあったな。

きっと海外に居た時に私の身体について、ここまで一緒に来たんだな。

それでわざわざ夢に出て、御礼を言いに来てくれたんだ。

気が付くと、ここに来る前には重たかった左肩も、今はすっかり軽くなっている…。

怖くという感覚はありませんでした。

それよりも、私を驚かさないように愉快な動物の姿で来てくれた事の方が、嬉しくて悲しかったです。

今度出て来る時はそのままの姿で良いよ、怖がらないから。

関連記事

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。 でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。 その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。 性格はよ…

田舎の風景

神隠しのお姉さん

小学二年生の頃の話です。僕は、小さな頃に母を亡くし、父に育てられた父子家庭で育ちました。 そのせいか、性格は内向的になり、小学校ではひどいいじめに遭っていました。一年生の頃から…

夜の海(フリー素材)

ばあちゃんのまじない

部活の合宿で、他の学校の奴も相部屋で寝ていた時の事。 ある奴が急に魘され、布団の上でのた打ち回り始めた。起こそうとしても全然起きない。そのまま魘され続ける。 起きている奴等…

お花畑(フリー写真)

まだ来るな

僕には四つ下の弟が居て、彼はバイクで通勤していました。 ある日、彼が出勤途中に事故に遭い、救急車で病院に担ぎ込まれました。 僕にも連絡があり、急いで駆け付けましたが、彼は意…

空(フリー写真)

夢枕に立つ祖母

俺にとってばあちゃんは『優しさ』の権化のような人だった。 いつもにこにこしていて、言葉を荒げることもなく、本当に穏やかな人で、家族みんなばあちゃんのことが大好きだった。 ば…

山間の田んぼ(フリー写真)

小さな祠と石

うちの兄は10年ほど前に亡くなりました。 亡くなる前々日、いつもは帰ってすぐ部屋に入ってしまう兄が、珍しく私にPCの使い方を教えてくれました。 その事を思い出すと、今でも涙…

薔薇の花(フリー素材)

祖母の加護

小さい頃から、寂しかったり悲しかったり困ったりすると、何だか良い香りに包まれるような気がしていた。 場所や季節が違っても、大勢の中に居る時も一人きりで居る時もいつも同じ香りだから…

バーベキュー(フリー写真)

未来の夢

小児白血病だったK君の話です。 K君は三度目の再発でした。急速に増えて行く白血病細胞の数。 ドクターはK君のご両親に、 「化学療法のみの延命治療なら持って後3ヶ月、残…

古いアパート

ワケアリ物件の守護霊

半年前の出来事です。 現在住んでいるアパートは「出る」という噂のある物件で、私は恐怖を感じない0感体質のため、破格の家賃に惹かれて入居しました。 台所の壁には、逆さまに吊…

カップル(フリー素材)

恋人との思い出

怖いと言うより、私にとっては切ない話になります…。 私が高校生の時、友達のKとゲーセンでレースゲームの対戦をして遊んでいました(4人対戦の筐体)。 その時、隣に二人の女の子…