隠れたドア

公開日: 不思議な体験

ドア(フリー写真)

中学生の時、腕を骨折して通院している時期があった。

ある日、病院内でジュースを買おうと、通路の行き止まりにある自販機まで行くと、二つあった自販機の横の壁にドアがあることに気付いた。

今までその場所には結構行っていたが、死角になっていたのか目に付かなかったのか、そんなものを見つけたのは初めてだった。

ただ、その時はあまり気にしていなかった。

更にもう少し日が経った頃、またジュースが飲みたくなってその自販機の前に行くと、例のドアが少しだけ開いていた。

一瞬『えっ?』と思ったが、好奇心に負け、向こう側を少し覗いて見ようとドアを開けた。

ドアの向こうにはかなり長い廊下が一本続いていて、人は通っていなかった。

突き当りに曲がり角も見えたが、どういう訳か廊下の電気が全て薄暗く、かなり見辛かった。

暫く見ていたが特に何も起こらず、『何だつまらない』とドアを閉めようとした時、突き当たりの曲がり角から人影が曲がって来るのが見えた。

人影はこちらに向かって歩いて来ているようだった。

よく目を凝らして見ると、まだ距離が遠くて表情は判らなかったが、その人影は片腕だけが異常なほど長く地面に引き摺っていて、しかも何故か首を左右に振りながら歩いていた。

その不気味さに気付いてゾクッとした瞬間、ゆっくりと歩いていたそいつが、変な大股歩きになり早足でこちらに向かって来た。

パニックになって慌ててドアを閉め、ジュースも買わずに待合室まで走った。

その後、その自販機には近付く事も避けていたので、結局あれの正体は判らないままだった。

生きていた人間だったとしても、そうでなかったとしても、もうあんな怖いものは二度と見たくない。

関連記事

田舎の風景(フリー写真)

ヒノジイ

私は小学校に通う前、田舎の祖父母の家に住んでいました。 同い年の子供どころか、祖父母以外に人を滅多に見なかったので、暇で仕方がありませんでした。 ※ ある日、敷地内…

古書店(フリー写真)

消えた友人

先輩と二人で仕事場に泊まり込んでいた日、休憩中にその先輩が聞かせてくれた話。 先輩曰く「友人に会えなくなった」らしい。 最初は単に仕事が忙しいからなのではないかと思ったのだ…

雑炊

妻の愛

ようやく笑い飛ばせるようになったんで、俺の死んだ嫁さんの話でも書こうか。 嫁は交通事故で死んだ。 ドラマみたいな話なんだが、風邪で寝込んでいた俺が夜になって「みかんの缶詰食…

図書室(フリー写真)

本に挟まったメモ

高校3年生の時の話。 図書館で本を借りたら、本の中に 『こんにちわ』 と書かれたメモが入っていた。 次の週にまた別の本を借りたら、 『こんにちわ。このまえ…

団地(フリー写真)

エレベーターの11階

18年前に体験した話です。 中学生の頃に朝刊を配る新聞配達のバイトをしていたのだけど、その時に配達を任されていた場所が、大きな団地1棟とその周りだけだった。 その大きな団…

新聞受けから…

これは俺が2年前の6月14日に体験した本当の話です。俺が前住んでたアパートでの出来事。 その日、俺はバイトで疲れて熟睡していた。 「ガタガタッ」という異様な音で俺が目を覚ま…

顔半分の笑顔

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。 リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。 すると突…

龍神様の掛け軸

実家にある掛け軸の話。 いつ誰が買ってきたのかも定かでない、床の間に飾ってある龍神様の描かれた小ぶりの掛け軸。 聞けば祖母が嫁いできた頃には既にあったと言うから、既に70年…

非常階段

数年前、職場で体験した出来事です。 その頃、僕の職場はトラブルつづきで、大変に荒れた雰囲気でした。 普通では考えられない発注ミスや、工場での人身事故が相次ぎ、クレーム処理に…

体育館

球状の異物

9年前、私が20歳で初めて選挙に行った日のことです。投票所は私の母校である小学校の体育館で、卒業式以来の訪問でした。体育館に入ると、記憶と違って狭く感じ、「こんなに狭かったかな?」と…