あの時、手を貸していたら…

c0025115_225325

あれは、私が中学生の時の事でした。塾を終え家路についていた私は、星を見ながらのんびりと自転車を漕いでいました。

時間は22時過ぎだったでしょう。家も近くなってきた頃、前の方に自転車を漕ぐ後ろ姿が見えました。

細い道でしたので、追い抜くことも出来ずに後ろを走っていると、突然前を走る自転車が倒れたのです。

近寄ってみると、髪の長い女性が倒れていました。蹲って呻いているので声をかけたのですが、返事がありません。

暗い道でしたので、怖くなった私は家に帰ってしまいました。

後日、警察が家に訪ねてきました。話を聞くと、どうやら近所で殺人未遂事件があったようで、その聞き込みの為に訪ねて来たようでした。

犯人の特徴を聞いてみると、髪が長い女性と言う事でした。

この時、先日あった自転車の女性のことを話すと、刑事さんは顔色を変え「詳しく教えてくれ」と迫ってきました。

先日のことを詳しく伝えると、刑事さんは事件の概要を教えてくれました。

聞いてみると、先日私が遭遇した状況と酷似した内容だったのです。

あの時、手を貸していたら一体どうなっていただろうと思うと、とてもゾッとしました。

関連記事

夜の窓(フリー写真)

声魂

私自身が体験した怖い話です。 今からちょうど十年前、私がまだ大学生だった頃のことです。 当時、私には一つ年下の彼女が居ました。 彼女は霊感の強い子で、それまでにも様々…

胸騒ぎ

小学校のころ、塾の先生に聞いた話です。 その先生は現役の大学生で、その大学の友人に妙な体質の人がいたそうです。 仮にその友人Aさんとしますが、彼はごくたまにものすごく胸騒ぎ…

田舎の夕焼け(フリー素材)

辰眼童(シマナオ)さま

もう8年前になるかな…。 当時はまだ高校生で、夏休みの時期でした。 6年ぶりに遠くに住んでる祖父母に会うと父が言いました。 俺は夏休みもそろそろ終わりで、遊ぶ金も使い…

餓鬼魂

もう30年程前になるか、自分が小学生の頃の話。 当時の千葉県は鉄道や主要街道から少し奥に入ると、普通に林が広がっていた。 市内にはそう広くない林が点在し、しかも民家から距離…

神社の生活

これは5年程前から始まる話です。 当時、私は浮浪者でした。東京の中央公園で縄張り争いに敗れて、危うく殺されかけ追放された後、各地を転々とし、最後に近畿地方のとある山中の神社の廃墟…

赤い川

赤い川

俺が高野山に住んでいた時、こんな噂話を聞いた。 「昔、坊主専用の廓が、山のどこかにあった」 「その廓は終戦後取り潰されて廃墟になったが、今でも形を保っている」 「そこ…

トンじい

私の出身地は、古くから部落差別の残る地域でした。 当時、私は小学生でした。部落差別があると言っても、それは大人の世界での話で、幼い私には差別など解りませんでした。 子供同士…

隠された部屋

友人が引っ越しをした。 引っ越し先は築10年の一戸建てで、そこそこの広さもある良い家だった。 だが、家賃が異常なまでに安い。周囲の物件の半分程度しかないのだ。 俺たち…

禁忌の人喰い儀式

俺の親父の田舎は、60年代初頭まで人喰いの風習があったという土地だ。 とは言っても、生贄だとか飢饉で仕方なくとかそういうものではなく、ある種の供養だったらしい。 鳥葬ならぬ…

呪の連鎖

切り倒された木 ― 呪いの記憶と連鎖

呪いなんて、本当にあると思うだろうか。 俺はもともと、心霊現象やオカルトといったものには一切関心がなかった。 だから、「呪い」なんて言葉にも無縁だと思っていた。仮にそんな…