トプン

GXp89dmf4RLhk-0

昨年の秋口、暇だったので札幌の某川上流にある小さなダムに釣りに行った時のこと。

住宅地からさほど離れていない場所にあるので、休日には親子連れも来るのんびりした所なんだけど、その日は平日だったためいたのは俺一人。

天気も良く、ニコニコしながら折り畳み椅子とか展開してたら、淵の方から魚の跳ねる音。

『今日は元気いいな~。釣れるかな~』とか思って準備を続けてたんだけど、何回か聞いてると、どうも音が変。

魚なら普通「バシャン」とか「チャポン」とか水面叩く音がするものだけど、聞こえてくるのは「トプン、トプン」と何かが規則的に浮き沈みしてるような音。

『なんだべか? ブイでも浮いてるのか?』と思って音の方に目をやると、

…頭!?(;´Д`)

なんか黒い髪がべったり貼りついた頭が、淵の中でゆっくり浮き沈みしてるんですよ。昼間っから。

こう、クラゲみたいに水面に長い髪が広がってて。

『これはとにかくまずい!』と思って、急いで荷物抱えて逃げようとしたら、背後から

「トプントプントプントプントプントプントプントプントプントプントプン」

思わず振り返って見てしまったのは、あの、泥温泉ってあるでしょ。火山灰かなんかで泥濘地になってるところに温泉が出て、泥の中を大きな泡が浮かんでは消えるってやつ。アレにそっくり。

水面に浮いては沈む、無数の頭、頭、頭、頭。

半分腰を抜かして国道まで逃げて、停めてた車のところまで来たんだけど、閉鎖空間に入るのが怖くて、車の周りを小一時間ほどぐるぐる回ってました。

別に因縁話とかない場所だったので、かなりショックでした。

真昼間だったのもかなりショックで、しばらく一人で行動するのが嫌になりました。

関連記事

右腕と右足

自分がまだ中学生だった数年前に、近所の古本屋で漫画の単行本を数冊買って帰ったんです。 その時はある漫画のシリーズを5〜8巻まで通しで買ったので、家に帰って旧いのから順番に読み始め…

襖をひっかく音

僕の親友の小学校時分の話。 今から二十年も前のある日。両親が共働きだった彼は、学校から帰ると一人、居間でテレビを見ていた。 しばらくすると玄関の引き戸が開く音がするので、母…

チャイムが鳴る

ある蒸し暑い夏の夕暮れ時、俺は自宅の2階で昼寝をしていた。 「ピンポ~ン、ピンポ~ン」 誰か来たようだ。俺以外家には誰もいないし、面倒くさいので無視して寝ていた。 「…

自殺志願

年月が経つにつれ自信がなくなっていく思い出です。 俺が19歳の頃の話です。高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをしてブラブラしてい…

廃屋

廃屋での恐怖体験

小4の時の話。 多分みんな経験があると思うけれど、小さい頃って廃屋があると聞いただけで冒険心が疼いて仕方ないと思うんだ。 俺自身もあの日は家からそう遠くない場所に、まだ探検…

隠された部屋

友人が引っ越しをした。 引っ越し先は築10年の一戸建てで、そこそこの広さもある良い家だった。 だが、家賃が異常なまでに安い。周囲の物件の半分程度しかないのだ。 俺たち…

後悔

今日ここで、私が9年前から苦しめられ続けている後悔と恐怖の記憶を、この話を見た人にほんの少しづつ、持って行ってもらえれば良いなと思い、ここにこうして書かせてもらいます。 実際に何…

変なタクシー

昨日、ひどく恐ろしい体験をしました。 便宜上昨日と言いましたが、実際は日付が変わって本日の午前1時過ぎのこと。 残業のため終電で帰ってきた私は、家の近くまで走っているバスが…

生き霊

母の会社の同僚の話。仮に村上さんとします。 村上さんはいつからか、肩こりのようなものに悩まされていた。それまでは、そういった事に悩むような事は全く無かったそうです。 若い時…

首長リーマン

終電の一つ前の電車に乗っていた時の事。 電車内には俺と、酒を飲んでいる汚いおっさんが一人。 電車の中で酒飲むなよと思ったけど、臭いも届かないし、まあ良いかという感じで携帯を…