何で俺なんだよ

e0078564_3495086

最近体験した怖い出来事です。

文章が堅いのでいまいち怖くないかもしれませんが、洒落にならないくらい怖かったです。

今年の2月下旬、出張で都内のビジネスホテルに泊まった。

翌朝、同僚と一緒にホテル一階のレストランでモーニングを食べていると、ホテルの前にパトカーが停まり、警察官が駆け込んでくるのが見えた。

何だろうと思っている間にパトカーがどんどん増え、レスキューまで来たので「ちょっと見てくる」と言って、同僚を残してホテルの前の道路に出た。

外ではレストランの窓からは見えなかったが、救急車や覆面パトカーなどが列を作っていて、多くの通行人が立ち止まってホテルを見上げていた。

俺もつられて見てみると、ホテルの屋上に手をかけて、人間がぶらさがっているのが見えた。

外壁を足で蹴り、這上がろうとしているのかバタバタと動いている。

ちなみにホテルは十数階建てだった。

びっくりしてしばらく見ていたが、このままだと嫌なものを見るはめになると気付き、レストランに戻ることにした。

席に着いた俺に同僚が「何だった?」と聞いてきたので「屋上から人がぶらさがってる」とだけ答えた。

同僚は驚いた様子だったが、外に見に行こうとはせず、なんとなく会話もなくなって2人で飯を食べてた。

そのまま5分くらい経って、何の動きも無かったので助かったのかなと思った瞬間「バーン!」という大きな音が聞こえた。

思わず同僚と顔を見合わせる。

「落ちたね……」

同僚が呟くように言い、俺も頷きながらそのまま無言で食事を続けた。

しばらくして、警察官がレストランの窓の外に青いビニルシートを貼り付けだした。

しかし、窓が大きかったためシートでは全て隠すことはできず、隙間から外を見ることができた。

俺は窓の横の席だったが、なるべく気にしないようにしてコーヒーを飲んでいたが、間もなく消防隊員がタンカを持って窓の横を通るのが見えた。

見たくなかった筈なのに、自然と目が吸い付けられる。

タンカに乗せられ、白いシーツを被せられた人型の盛り上がりが目に入った。

顔まで被せられてるのは、死んでいるからだろうか?

時間にすれば一瞬だったが、シーツの白さがやけに瞼に残って気持ち悪かった。

2日後、出張を終えて会社に戻り、週末と重なったので月曜日に久しぶりに出社したところ、同僚が休んでいた。

体調が悪いとのことで、同期の女の子に「東京で悪い病気貰ってきたんじゃない? 君は大丈夫?」とからかわれたが、出張中は特に調子の悪そうな様子は無かったので、不思議に思った。

仕事が終わり、見舞いがてら様子を見に行こうと、同僚が住むマンションに立ち寄った。

エレベーターで7階に上がり、同僚の部屋を訪ねると、目の下にクマを作った、異様に疲れた表情の同僚が迎えてくれた。

「大丈夫か? 飯は食べてるか」

俺が訊くと、同僚は軽く笑った。

「ああ。外に出られないから、買い置きのインスタントばっか食べてる」

「そんな悪いのか? じゃあ何か買ってくるよ。何がいい?」

尋ねる俺に、同僚は泣き笑いみたいな表情を見せた。

明らかに精神的にやばくなってるようだった。

「出られないんだよ。エレベーターでも、階段でも、アイツがいるんだ」

「何?アイツって誰だよ?借金取りか何かか?」

「そんなんじゃないよ!!何で俺なんだよ、何で……」

同僚はそのまま泣き出してしまった。

埒が明かないと思った俺は、取りあえず飯でも食おうと外に誘ったが、同僚は外に出ることを激しく嫌がった。

冷蔵庫の中身はほとんど空で、買い置きも無い様子だったので、仕方なく俺は買い出しにいってくると告げて、玄関の外に出た。

同僚の様子を会社に連絡するか、それとも両親に知らせるか、などと考えながらエレベーターを待っていると、下から上がってきたエレベーターが目の前を通り過ぎていった。

エレベーターは扉がガラスになっていて、外からでも中を見ることが出来た。

通り過ぎていくエレベーターの中に、子供のような低い姿が一瞬見えた。

エレベーターは最上階に止まったまま、なかなか降りてこなかった。

5分くらいしても降りてくる気配のないエレベーターに嫌気がさして、階段で降りることにした。

7階だが、下りならそれほど苦でもない。

階段のドアを開けると、普段あまり使う人がいないためか、空気が淀み、埃が溜まっていた。

しばらく降りていくと、下から誰かが上がってくる音が聞こえた。

階段を使う人もいるんだな、と少し驚きながら降りていくと、下から上がってきたモノとすれ違った。

それは、子供ほどの身長だった。

顔は中年の女。どこにでもいそうな顔だが、位置が違う。

顔は本来あるべき場所より遥か下の、ミゾオチのあたりにあった。

強い力で頭を押し込んだような感じといえばいいのか?

腕はやや上向きに開いており、歩くたびにユラユラ揺れていた。

俺はあまりのことに息を呑んだ。叫ぶこともできなかった。

足が固まり、悪夢でも見ているかのような思いだった。

女は硬直した俺の横を、ヒョコヒョコと階段を登っていき、やがて音も聞こえなくなった。

俺は金縛りが解けたように大声で叫ぶと、無我夢中で階段を降り、マンションから逃げ出した。

コンビニまで走り、明るい場所で同僚に電話した。

俺は慌てまくっていたが、同僚は以外に冷静だった。

「あれ、飛び降りた女だよ。あの時タンカなんか見るんじゃなかった。

運ばれていくアイツと目が合ったんだ。

潰れて、めり込んだ顔で目だけがやたら大きく見えて…あんなに警察や消防がいたのに、何で俺なんだよ」

そう言って同僚は大きくため息をついた。

しばらくして同僚は会社を辞め、田舎に帰った。実家は平屋なので安心すると言っていた。

不思議なのは、同僚はタンカに乗せられた女を見たと言っていたが、タンカには確かにシーツが被せられ、人は見えなかった筈なのだが。

俺はあの日以来、なるべく階段は使わないようにしている。

またアイツとすれ違ったらと思うと、怖くて使えないからだ。

関連記事

抽象的(フリー素材)

ムシャクル様

前職が前職だったので、不思議な話を聞く機会はそれなりにあった。老若男女問わず、「こんなことがあったんだが、何もしなくて大丈夫か」「あれは一体何だったのか」などを寺に尋ねに来る人…

蛍(フリー写真)

赤ちゃんの声

何年前だったかは今はもう覚えていません。でも当時は凄く暑くて、扇風機を点けっ放しで寝ていたので、夏であることは確かだったと思います。熱帯夜というやつですね。暑いと本当に…

爺ちゃんとの秘密

俺は物心ついた時から霊感が強かったらしく、話せるようになってからは、いつも他の人には見えない者と遊んだりしていた。正直生きている者とこの世の者ではないものとの区別が全くつかなか…

携帯電話

迷惑電話

ある日、知らない番号から電話が掛かってきて、おばさんの声で「鈴木さん?」と聞かれた。でも自分は田中(仮名)なので、「いいえ違います」と答えたら「じゃあ誰?」と言われた。…

麻雀(フリー写真)

曰く付きの大学寮

今から8年前の5月のお話。当時は大学の寮に住んでいたのだけど、その寮は凄かった。古戦場の近くで、その関係のお寺が近所にあり、更に寮の隣の竹林には首塚があった。俺…

土地にまつわる因縁話

知り合いの霊能力がある人の話。普通、霊能者と言えば厳かな感じの人が多いというイメージがあるんだが、知り合いの人はそこら辺にいそうな、筋トレ好きな体育会系のおっさんなのよね。 …

家宝の銅鏡

僕の家には家宝と呼ばれるお宝が三つある。一つは家系図。約400年前まで遡る家系図は巻物数十巻に及び、勿体振った桐の箱に収められている。もう一つは刀。かなり昔にご先祖様が…

くる!

ウチの叔母さんはちょっと頭おかしい人でね。まあ、一言で言うと「時々昔死んだ彼氏が私を呼ぶのよ」って台詞を親族で飯食ってる時とかに平気で言う人でね。2年くらい前から「離婚…

白い人影

高校生の時に某飲食チェーンでバイトしてたんだけど、その時の社員さんに聞いた話。その社員さん(Aさん)は、中学生の時に親戚の叔父さんが経営する倉庫で、夏休みを利用してバイトするこ…

ホテル(フリー素材)

鶯谷のホテル

これは実際に体験した不思議な話です。皆さん、鶯谷をご存知でしょうか?山手線沿線でありながら最も人気の無いエリア。江戸時代にあった遊郭が今も尚息づくソープランド街「吉原」…