チャイムが鳴る

1191993014_3

ある蒸し暑い夏の夕暮れ時、俺は自宅の2階で昼寝をしていた。

「ピンポ~ン、ピンポ~ン」

誰か来たようだ。俺以外家には誰もいないし、面倒くさいので無視して寝ていた。

「ピンポ~ン、ピンポ~ン」「ピンポ~ン、ピンポ~ン」

それからしばらく一定のリズムをつけつつ、鳴り続けるチャイム。

なんだよ、しつこいなあ。一体誰が来たんだ?

2階の俺の部屋から玄関をそっと見ると、白っぽい服を着た40歳位のおばさんが、麦藁帽子を被った白い服を着た女の子を連れてチャイムを押しているようだ。

最近流行りの子連れ宗教勧誘か?

全く面倒くさいなあ、とりあえず出てやるかと思い、下に降りて玄関を開けると誰もいない。

なんだよ、もう行ったのか。せっかく出てやったのに。もう1回寝ようと再び2階の自分の部屋で横になった。すると、

「ピンポ~ン、ピンポ~ン」

また鳴った。窓から見るとまたあの親子だ。なんなんだ一体!

俺は半分キレぎみで下へ駆け降りた。

その間もず~と一定のリズムで鳴り続けるチャイム。

玄関のドアをバ―ンと開けて、怒鳴りつけようとしたが誰もいない。ドアを開ける直前まで確かに鳴っていたのに。

隠れる場所なんてどこにもないし、どんなに足が速くても一本道の突き当たりにある家から見えなくなるはずがない。

しばらくポカ~ンとその場で立っていると…、

「ピンポ~ン、ピンポ~ン」

目の前のインターホンに誰もいないのにチャイムが鳴り響いた…。

俺はダッシュで家に入り鍵を閉め、部屋のカーテンをして布団に入って震え続けた。

それからしばらくチャイムは鳴り続けた。

もう1回窓から玄関を見下ろすことはどうしても出来なかった。

次の日の朝、親に叩き起こされた。

「あんたに手紙。女の人からみたいよ」

にやにやしている。新聞を取りにいって見つけたらしい。

白い封筒に名前は書いていない。なんでこれで女だって分かるんだよ!

とりあえず開けて見ると綺麗な文字で、

「なにかがあなたの家へ入ろうとしています」

とだけ書いてあった。

関連記事

天国(フリー画像)

人生のやり直し

俺は一度死んだことがある。 これだけだと訳が解らないと思うので詳細を説明する。 ※ 小一の頃、夏休みが終わり二学期が始まった。運動会や遠足もあったし、毎日普通に生活していた。…

線路

北陸本線の夜

二日前、11月6日の終電間近に北陸本線のある無人駅で不思議な出来事がありました。 音楽を聴きながら列車を待っていた私は、列車接近のアナウンスもなく突然、ホームに列車が現れたこと…

時が止まる場所

昔ウチの近所に結構有名な墓地があって…。 当時俺は、よく友達と近所の大きな公園で、自転車を使った鬼ごっこをしてたんだ。 ある日、リーダー格の友人Aの意見で、公園内だけではつ…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

鏡の向こう

姉の最期の決断

これは、私の知人である女性から聞いた、決して笑い話にはできない実話です。一部の詳細は伏せてありますが、内容のほとんどは事実に基づいています。 ※ 話してくれたのは、現在2…

磨りガラス(フリー素材)

ガラス戸の向こう

この事件が起きるまで、俺は心霊現象肯定派だった。でも今は肯定も否定もしない。 今から十二年前、俺は仕事の都合で部屋を引っ越すことになった。 その部屋は会社が用意したもので、…

河原

時空の穴

この出来事は14年前に起こりました。私は多摩川の河原を散策していたところ、奇妙な穴を発見しました。その穴は草むらにあり、斜め下に向かって延びていました。何の気なしにその穴を進んでいく…

無限ループするトンネルと祭り

休日の夕方に友人連れ3人で、温泉宿に向かう山道を車で走っていた。 車の持主が運転、もう一人は後部座席、俺が地図を見ていた。 地図上では一本道で、トンネルを3つ通らないといけ…

河童淵(フリー写真)

河童

幼稚園の頃、祖父母の住む田舎に行った時、不思議な生物に会いました。 のんびりとした田舎町で、周りに住んでいる人全員が家族のように仲が良い場所なので、両親も心配せずに私を一人で遊び…

リョウメンスクナ

俺、建築関係の仕事やってんだけれども、先日、岩手県のとある古いお寺を解体することになったんだわ。今は利用者もないお寺ね。 それでお寺ぶっ壊してると、同僚が俺を呼ぶのね。「ちょっと…