今、神様やってるのよ

wallpaper275_640_1136

うちの母方の実家が熊本県にあるんですけど、ずっと実家に住んでいる母のお姉さんが、先日遊びにきました。

ちょうど『ターミネーター2」がTVでやっていて皆で観ていたんです。

映画の中で核爆弾が落ちたシーンで、遊んでいた子供達が焼けちゃう場面がありましたよね。

あれ見ながら「瞬間で皮とかもズルっといっちゃうんだね、怖エ~」とか話していたら、おばさんがテレビ見ながらさりげなく、とんでもない話を始めました。

おばさんの長女がこの前子供を生みました。

すごく華奢な娘さんだったんで、すごい難産だったそうです。

2ヶ月前から入院して、もう母体も危ないので、予定よりも早く帝王切開で生んだそうです。

今でこそ母子ともに元気ですが、そのころおばさんは初孫と言うこともあって、心配で心配で夜も眠れなかったそうです。

ある日、病院から帰って家にいると、電話がかかって来ました。相手は幼馴染でした。

昔は家も近かったのですが、その人は引っ越していってしまったそうです。それでもとても仲がよかったので、ずっと連絡は取り合っていました。

ところがここ10年ほど、ぱったり連絡が取れなくなってしまったそうです。

娘さんのことで疲れていたおばさんは、思いがけない懐かしい人からの電話で、本当にうれしかったそうです。

早速、近況などを報告し合おうとすると、その人は想像もしなかったことを言い出しました。

『Kちゃん(おばさんの名前)、私ね、今神様やってるのよ。たくさんの人たちを救ってあげてるの。Kちゃんも困ったことがあったらいつでも電話して。助けられると思うわ』

昔のままの非常に明るく感じのよい声で、彼女はこんなことを言いました。あまりにも普通に言われたので、おばさんは「ああ、そう…」としか言えなかったそうです。

しかしその夜、自分の娘と生まれてくる赤ちゃんのことを考えると、おばさんも疲れていたのでしょう、そんなとんでもない電話さえ、

「ひょっとしたら、これもなにかの縁かもしれない。明日頼んでみよう」

と思ったそうです。

なにかすがるものができたせいか、おばさんはその夜、久しぶりに眠りに落ちました。

夢の中に、娘と、まだ子供の頃のままの幼馴染が出てきました。娘もなぜか妊娠しておらず、3人で仲良く遊んでいる夢でした。幼馴染もニコニコしていて、お花畑のような所で、すごく幸せな夢です。

鞠のようなもので遊んでいました。おばさんに鞠が飛んできました。おばさんは胸で受け止めました。

するとその鞠の中から皮がずるっと剥けて、ぬるぬるとした溶けかかった幼虫のようなものが出てくるではありませんか。思わずおばさんは悲鳴を上げました。

誰かに投げようにも、そこは母親。とっさに娘より幼馴染の方を見ました。投げようとしても、幼虫のようなものは絡み付いて離れません。

それを見て幼馴染は、ケラケラと狂ったように笑います。その目は全部黒目で、穴が開いてるようです。

幼虫の鳴き声と、幼馴染の幼い子供の笑い声が響くように重なります。

おばさんは飛び起きました。全身汗でびっしょりです。

「その時ね、私思ったのよ。あの幼虫はね、赤ちゃんだって。どうしてか分からない。人間の姿なんてもちろんしてなかったし、泣き声は獣のようだった。でもね、絶対赤ちゃんだと思ったの。すごく不吉に感じて、その後せっかく連絡してきてくれた幼馴染に、怖くて連絡できなかったの」

その後、何とか無事に子供は生まれ、そんな電話があったことも忘れていました。

そしてある日、何気なくつけたTVのワイドショーに、その幼馴染の名前と、夢とはかけ離れた年老いた女性の顔が映し出されたそうです。

少し前にありましたよね。

怪しげな新興宗教を信じて、死んでしまった我が子の皮をはいだら生き返ると言われ、その通りにしてしまった若い夫婦。

その夫婦が信じていた神様こそが、おばさんの幼馴染だったそうです。その幼馴染は何不自由ない家庭環境にいたはずなのに、おばさんの知らない10年の間に何があったのでしょう。

おばさんは怖いというよりも、みていて涙が止まらなかったそうです。

もし彼女に相談していたら…。

関連記事

廃屋(フリー写真)

人形の右手

私が幼稚園児の頃の話。 幼稚園の隣に木造二階建ての廃屋がありました。 当時の私はその建物(隣接大学の旧校舎らしい)が何なのか判らず、ただ先生の 「あそこで遊んではい…

家(フリー写真)

次女の願い

私は神社の家系に生まれ、霊能力者を生業としている者です。 三年前に訪れたお客様の話ですが、今でもどうしても考えてしまい胸が苦しくなるお話があります。 もう時効かと思います…

オフィス

引き出しの中

自分が実際に体験した訳ではないのだけど、最近あったぞっとした話。 今年の3月、会社で人事の入れ替えがあったんだけど、ベテランのSさんが地方に異動になり、私のフロアには新人のT子が…

夕方の路地

道を教えて下さい

「道を教えて下さい」 夕方の路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女だった。 足が異様に細く、バランスが取れないのかぷるぷると震えている。 同じように手も木の枝のように…

インコ

インコのムウちゃん

2年程前から飼っているオカメインコのムウちゃんについてのブログを始めた。 始めた当初は誰も記事を見に来てくれないし、コメントも残してくれないので結構寂しかった。 でも他の人…

ハコマワシ(長編)

半年くらい前、怖い体験をした。心霊現象ではないが、かなり気持ち悪い体験だ。長くなると思うから適当に読み流してくれても構わない。 中学生だった頃、俺のクラスに霊感少女がいた。家が神…

下心

これは7年ぐらい前の話です。 高校卒業後、就職して初めての一人暮らし。 実家から徒歩30分程度の所で、まったく土地勘がない場所じゃなかった。 一人暮らしを始めて3ヶ月…

村の風景(フリー素材)

朽縄(くちなー)様

田舎に住む祖父は、左手小指の第一関節の骨がありません。 つまむとグニャリと潰れて、どの角度にも自由に曲がります。 小さい頃はそれが不思議で、「キャー!じいちゃんすごい!なん…

異世界から来た友人

毎年夏に地元に帰って高校の頃の友人5人で集まるんだが、今年の夏にちょっとおかしな事があった。 どうにも意味が解らない話で、誰かに聞いて欲しくて。 みんな30代半ばになり、子…

森(フリー素材)

模倣

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 「巣くうものシリーズ」で纏めてもらっているので、前と同じく説明は省略します(※これまでの…